5 他者の著作物の利用

<ここから著作権法関連ページを検索できます>

著作権法の解説「目次」に戻る

他者の著作物の利用方法の概要

 他人の著作物を利用するにはどうしたらよいでしょうか。この場合、以下の手順に沿って利用の可否・方法を検討することが一般的です。
 

  • 対象について、著作物の種類及び保護期間から、著作権上保護されるか否かを調べます。著作権上保護されない著作物であれば、原則として自由に利用できます。
  • 対象が著作権上保護される著作物であるとして、予定されたその著作物の利用方法から、許諾を必要としない場合かどうか検討します。
  • 許諾を必要とする場合は、許諾を得る手続・交渉を行います。

 ただし、保護期間が切れた著作物を利用する場合には注意が必要です。著作権の保護期間が経過した古いクラシック音楽であっても、編曲されたものの場合には編曲者の著作権を調査する必要があります。

 また、単に楽曲にとどまらず演奏などを利用する場合は、実演者の隣接著作権や、レコード製作者の権利(原盤権)について確認する必要もあります。

著作物の自由利用(許諾なしに使用できる場合)

 他人の著作物について著作権者の許諾なく自由に利用できる場合とはどんな場合でしょうか。以下、主なものについて簡単に解説します。

私的使用のための複製

 これは、個人的に又は家庭内等これに準ずる限られた範囲内(少数の友人間)において使用する場合をいいます。

 ただし、公衆の使用に供されるダビング機器(例えば、ビデオ店に置いてあるダビング機器など)を用いて複製すること、コピーコントロール機能を解除して行う複製は無断ではできません。

図書館等における複製

 政令で定められた図書館(公共図書館、大学図書館等)における複製については、調査研究の用に供するために、著作物の一部分を複製することができます。

引用

 報道、批評、研究その他の目的で、自己の著作物の中に他人の著作物の一部を取り込んで利用することができます。主に以下の要件を満たす必要があるほか、出所の明示が必要です。

  • 紹介、参照、評論等引用の目的に必然性があること
  • 引用が正当な範囲内であること(原則としてその著作物の一部)
  • 引用する側と引用される側とを明瞭に区別でき両者に主従関係があること
  • 引用される側の著作者人格権を侵害しないこと

 なお、引用の要件その他引用に関する詳細は、「5.1 引用~他者の著作物の自由利用」をご覧ください。

教育的目的による制限

 一定の公共的目的の場合には、著作物を自由に利用できます。これには以下のような場合があります。

教科用図書等への掲載(33条)

 この場合、著作者への通知と著作権者への補償金の支払が必要です。副読本はこれにあたりません。

学校教育番組の放送等(34条)

 この場合、著作者への通知と著作権者への補償金の支払が必要です。

教育機関における複製(35条)

 学校その他の教育機関において教育を担任する者は、授業に使用することを目的として必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができます。ただし、営利目的の学校(予備校、学習塾)は含まれません。

試験問題としての複製(36条)

 入学試験その他他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、試験又は検定の問題として複製することができます。営利目的の場合、著作権者への補償金の支払が必要です。

営利を目的としない上演等

 営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合に限り、公表された著作物を上演、演奏、口述、上映することができます。ただし、実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われないことが必要です。

時事問題に関する論説の転載等

 新聞、雑誌に掲載された政治上、経済上、社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く)は、ほかの新聞、雑誌に掲載したり、放送したりできます。ただし、これらの利用を禁止する旨の表示がある場合は、この限りではありません。署名入りの記事は、転載禁止の表示とみなされています。

報道、政治、裁判に関する制限

 これらについては、以下のような規定があります。

政治上の演説、裁判手続における陳述等の利用

 公開して行われた政治上の演説や陳述、裁判での公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、利用することができます。

時事の事件の報道のための利用

 当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができます。

裁判手続、立法又は行政の目的における複製

 裁判の手続のため必要と認められる場合、立法又は行政上の目的のための内部資料として必要な場合には、著作物を複製することができます。

美術の著作物等に関する制限

  美術の著作物については、以下のような規定があります。

美術の著作物等の原作品の所有者による展示

 美術又は写真の著作物の原作品の所有者(又はその同意を得た者)は、その作品を公に展示できます。ただし、公園や、一般公衆に開放されている屋外の場所又は構造物の外壁等に恒常的に設置する場合には著作者の許諾が必要です。

公開の美術の著作物等の利用

 美術の著作物(その原作品が、公園等の屋外の場所に恒常的に設置されているものに限る)又は建築の著作物は、自由に利用することができます。ただし、彫刻を増製する場合、建築の著作物を建築により複製する場合(複製物を譲渡する場合)、もっぱら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製する場合等は除きます。

美術の著作物等の展示に伴う複製

 展覧会の開催者は、展示出品物を解説又は紹介する目的で、案内書、解説書に複製して掲載することができます。

プログラムの著作権の複製物の所有者による複製等

 プログラムの所有者は、プログラムの著作物を、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、プログラムの複製(例えばバックアップのために複製すること)、翻案(ハードウェアへの最適化のため翻案すること等)を行うことができます。

著作物の譲受又は使用許諾(許諾によって使用できる場合)

 上に記載したような、許諾を得ずに著作物を利用できる場合に当てはまらなければ、第三者の著作物を利用する場合、利用者において正当な権限を得なければなりません。

 権限なく利用する場合、著作権侵害となります。以下、権限を得る方法について解説します。

著作権の譲渡を受ける

 まず、著作権者から著作権の譲渡を受ける方法があります。有償か無償かその他の条件は、合意で決めることになります。

 この点、いわゆる「原稿の買取り」は著作権の譲渡といえるでしょうか。これは、そのときの契約によりケース・バイ・ケースです。

 しかし、「買取り」の契約に際し、著作権を譲渡する旨が当事者間で明確にされていない限り、必ずしも著作権の全部を譲渡したとは考えにくいと思われます。もっとも、買取りに際して支払われた金額が余りに高額であるなど、著作権が譲渡されたという合意が推定される場合もあります。

 いずれにせよ、著作権を譲渡する旨を明示しておくことが重要です。

著作権の使用許諾を受ける

 著作権の使用許諾を受けるには、原則として、著作権者等から個別に許諾を受ける必要があります。そのためには、著作権者等に連絡し、許諾の意思の有無、許諾の条件について話し合い合意に至る必要があります。

 他方、一部の著作物については、著作権管理団体が集中的に著作権を管理し、使用許諾の窓口となっている場合があります。この場合、当該著作権管理団体が文化庁に届け出ている著作物使用料規程があります。

日本音楽著作権協会(JASRAC)  http://www.jasrac.or.jp/
日本脚本家連盟  http://www.writersguild.or.jp/wgj/index.html
日本美術家連盟  http://www.jaa-iaa.or.jp/
日本レコード協会  http://www.riaj.or.jp/
実演家著作隣接権センター  http://www.cpra.jp/
日本写真著作権協会  http://www.jpca.gr.jp/
私的録音補償金管理協会  http://www.sarah.or.jp/
私的録画補償金管理協会  http://www.sarvh.or.jp/

著作物の利用に関する個別問題

 著作物の利用に関する個別問題について若干解説します。

貸CD店でCDを貸し出す場合

 市販されているレコード(CD)を貸与する場合は、作詞・作曲家などの著作者、歌手、演奏家などの実演家、及びレコード製作者の各当事者について、貸与権が働き、これら権利者の許諾なく貸し出すことはできません。

 ただし、実演家及びレコード製作者については、レコードの発売後1年を過ぎると貸与権がなくなり、貸レコード業者から報酬を受ける権利が働くことになります。

翻訳物を使う場合

  翻訳物といった二次的著作物の利用については、翻訳者の権利のほか、原作者の権利が働きます。それで、翻訳物を出版するなど翻訳物を使用する場合は、翻訳者と原作者の許諾も必要になります。

共同著作物の場合

 共同著作物の著作権は、その著作者全員が共有します。ただし、その行使は、原則として著作者全員の合意に基づき行わねばなりません。

 なお、映画の著作権は、著作者である監督等が共有するのではなく、法律の定めによって映画製作者(映画会社)に帰属します。

 映画の著作権に関しては、こちらのページをご覧ください。

 


著作権法の解説「目次」に戻る



法律相談等のご案内


弊所へのご相談・弊所の事務所情報等については以下をご覧ください。



メールマガジンご案内

弊所では、メールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」を発行し、比較的最近の判例を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供しております。

学術的で難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。 主な分野として、知的財産(特許、商標、著作権、不正競争防止法等)、会社法、労働法、企業取引、金融法等を取り上げます。メルマガの購読は無料です。ぜひ、以下のフォームからご登録ください。

登録メールアドレス   
<クイズ> 
 これは、コンピュータプログラムがこの入力フォームから機械的に送信することを防ぐための項目です。ご協力をお願いいたします。
 

バックナンバーはこちらからご覧になれます。 https://www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/

ご注意事項

本ページの内容は、執筆時点で有効な法令に基づいており、執筆後の法改正その他の事情の変化に対応していないことがありますので、くれぐれもご注意ください。

 事務所案内
 弁護士紹介


メールマガジンご案内


メールマガジン登録
「ビジネスに直結する
判例・法律・知的財産情報」


登録メールアドレス  
<クイズ> 

上のクイズは、ロボットによる自動登録を避けるためです。


Copyright(c) 2013 弁護士法人クラフトマン IT・技術・特許・商標に強い法律事務所(東京・横浜)  All Rights Reserved.

  オンライン法律相談

  面談相談申込

  顧問弁護士契約のご案内


  弁護士費用オンライン自動見積


   e-mail info@ishioroshi.com

  電話 050-5490-7836

メールマガジンご案内
ビジネスに直結する
判例・法律・知的財産情報


購読無料。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。

バックナンバーはこちらから