システム開発契約における再委託規定

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 本ページでは、システム開発契約における主要な条項の一つである「再委託」についてご説明します。

 なお、システム開発契約の主要条項の一覧はこちらをご覧ください。

「再委託」に関する規定例

 
 以下は「再委託」に関する比較的シンプルな条項の例です。

<例1 再委託を承認制とするもの>

第*条(再委託)
1 乙が委託業務の全部又は一部につき第三者に再委託しようとする場合、甲の事前の書面による承認を得るものとする。
2 乙が前項に定める承認を得て再委託をなす場合においても、再委託先に対して本契約に定める義務と同等以上の義務を負わせるとともに、再委託先の行為について一切の責任を負うものとする。
3 甲は、第1項に定める承認をいつでも撤回することができる。

<例2 再委託を原則自由とするもの>

第*条(再委託)
 乙は、必要に応じて、委託業務の全部又は一部につき、乙の責任において第三者に再委託することができる。ただし、乙は、再委託先に対し、第*条に定める乙の秘密保持義務を含めた乙の義務と同等以上の義務を負わせるものとする。

契約規定のポイント

ポイント1~再委託の可否

 システム開発業務においては、業務の一部を再委託や再下請することは珍しくなく、ときにはこうした再委託・再下請先関係が何層にもわたることもあります。

 そこで、システム開発委託契約においては、再委託の可否について契約で定められる場合が多いといえます。なお、契約において再委託に関する規定がない場合にどのように考えるかについては、「再下請・再委託」のページをご覧ください。

再委託の事前承認制の規定

 さて、再委託の可否に関する規定で比較的多いのは、上のサンプルのうち「例1」にあるような、再委託を事前承認にかからせるという規定です。

 すなわち、ユーザ(発注者)側としては、ベンダ(受注者)が自由に再委託できる状況だと、責任の所在が不明確になったり、秘密情報や個人情報の情報漏えいのリスクが高まるといった懸念があることから、事前承認制を好むことが多いといえます。

再委託を自由とする規定

 他方、上のサンプルのうち「例2」にあるような、再委託を自由とする規定もないことはありません。

 この場合には、ベンダ(受注者)としては適宜かつ臨機応変に再委託ができるようになるというメリットがあります。ただしこの場合も、当然ですが、ベンダ(受注者)は、再委託先に対しては、開発委託契約上の義務を負わせ、適切な監督や管理をする必要があります。

再委託に関する他の規定

 以上の典型的なパターンのほか、以下のような定め方をすることもあります。ユーザ(発注者)側とベンダ(受注者)側の利益のバランスを考えた妥協案・オプションとして考えてもよいかもしれません。

  • 再委託を事前承認制ではなく、事前通知制とする。
  • 再委託を事前承認制とするが、契約時点ですでに再委託を具体的に考えている再委託先については、契約において再委託可能である旨を明示する。

ポイント2~再委託先の管理・再委託先の行為に対する責任

 システム開発業務を再委託する以上、再委託先の管理について、多くの場合、ベンダ(受注者)の義務や責任が定められます。その内容としては、以下のものが例として考えられます。

  • 再委託先に対し、ベンダ(受注者)が負う義務と同等以上の義務を負わせるようにする義務
  • 再委託先の行為について、ベンダ(受注者)が全面的に責任を負うようにする
  • 再々委託をしない義務/li>
  • 再委託先について審査をし、反社会的勢力の有無、財務状況、業務遂行能力、情報セキュリティ体制についてチェックする義務
  • 再委託先の情報セキュリティ体制や再委託先との情報受渡しの記録をユーザ(発注者)に開示する義務

ポイント3~再委託に関する発注者(ユーザ)の権利

 システム開発業務の再委託に関し、ユーザ(発注者)の権利を定めておくというケースも見られます。例えば以下のようなものが考えられます。

  • 再委託の承認を撤回・取り消すことのできる権利
  • 再委託先への立入調査・業務モニタリングを実施する権利

 


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