英文契約の一般条項~分離可能性(Severability)

 英文契約書に頻繁に登場する一般条項(General Provisions)として、”無効規定の分離可能性(Severability)”があります。以下この規定について解説します。

分離可能性規定の例(サンプル)

 典型例としては以下のようなものがあります。

If any provision of this Agreement is found invalid or unenforceable by a court of competent jurisdiction, the validity of the remaining provisions shall not be affected in any way. The parties hereto shall negotiate in good faith to replace the invalid or unenforceable provision by a provision closest possible to the original intent of the invalid or unenforceable provision.

 本契約のいずれかの規定が管轄を有する裁判所によって無効又は執行不可能と判断された場合、本契約その余の規定の有効性は影響を受けない。その際、本契約の当事者は、当該無効又は執行不能な規定の意図に可能な限り最も近い規定をもって、当該無効規定を置き換えるよう、誠意をもって協議するものとする。

規定の解説

国際契約では、ある契約規定が様々な国の法律で解釈される場合がありえます。そうすると、自国の法律では有効と判断される可能性が高いと思っていた契約内容の一部が、別の国の強行法規が適用され、効力を失うという場合がありえます。

 また、契約締結当時は有効であった契約条項が、後に法令が改正されたり、裁判所の判断や行政解釈が変更され無効となってしまう場合もあります。

こうしたケースで、契約の一部の条項が無効になったとき、他の規定や契約全体の有効性にどのような影響を与えるか。契約全体が無効となるのかが懸念されるところであり、そのため、サンプルのような「無効規定の分離可能性」(severability)という規定が頻繁に置かれます。

 また、上のサンプルのように、無効となった規定についても、当事者が契約の意図を実現するために契約を修正するための努力義務が置かれることもあります。

 もっとも、こうした分離可能性の規定を置いたとしても、これが実際に判断を下す裁判所によってどう判断されるかは確実ではないという点は留意する必要があります。

 なお、仲裁法13条6項[条文表示]は、ある契約の中に仲裁条項がある場合で、他の条項が無効などの判断を受けても、仲裁条項はただちに無効とはならない、という趣旨の規定があります。これは、法律の規定に、分離可能性規定の趣旨を含めたものといえます。

用語の解説

unenforceable

「強行不能」「執行不能」という意味です。”unenforceable” “unenforceability”とは、無効とはいえないものの、当該規定が、裁判所の判決を得て執行することができない、という意味です。いざというときに裁判所の判決で執行できない契約規定は、意味が薄いのです。

court of competent jurisdiction

 「管轄裁判所」「管轄を持つ裁判所」を意味します。



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