身元保証に関する諸問題

身元保証人の意味の責任

身元保証人の意味

 就職の際に、会社が、身元保証人による身元保証書を従業員に提出させることは実務上珍しくありませんが、その意味を誤解している人も少なくありません。

 「身元保証人」という言葉だけからは、「本人の素性が間違いないことを保証する人」といったイメージを持たれるかもしれません。しかし、実務上広く用いられている身元保証書は、従業員の行為によって会社が被った損害を賠償することを約束することを含んでいます。

 なお、実務上は、身元保証書を徴求する際、身元保証人には実印と印鑑証明の提出を求めることも検討の価値があると思われます。というのは、身元保証書への押印は、比較的軽い気持ちでなされることもあり、いざ紛争時、身元保証人が身元保証の事実自体を争ってくることがありえるからです。

身元保証を規制する法律~身元保証法

 会社から身元保証書を求められれば従業員としては応じざるを得ないのが通常ですし、身元保証人になるよう頼まれた側も、当該従業員との個人的関係から断れず、又は安易な気持ちから身元保証人となることが少なくありません。そしてその結果、身元保証人が重大な責任を負わされるということになります。そのため、身元保証人を保護することを主な目的として「身元保証に関する法律」(身元保証法)があります。

 そこで、身元保証を求める会社としても、身元保証法の内容を踏まえた適正な内容の身元保証書とする必要がありますし、身元保証法を踏まえた運用も必要となります。そこで以下、身元保証法の内容を概観します。

身元保証法の内容

身元保証の期間

 身元保証法では、期間を定めない身元保証契約は、原則として3年間のみ効力を有すると規定されています(身元保証法1条本文)。また、期間を定める場合にも5年間を超える期間を定めることはできないとされています(身元保証法2条1項)。

 身元保証契約を更新をすることは認められていますが、更新についても5年間を超えることはできないとされています(身元保証法2条2項)。

身元保証期間の自動更新

 自動更新の特約についてはこれを無効とした裁判例もありますので留意が必要です(札幌高裁昭和52年8月24日判決 拓友クラブ事件)。

 すなわち、同事件では、更新とは「身元保証契約の期間満了の際になされるその更新のみをいう」もので、更新予約といったものは含まれないと判示しています。

 また、東京地裁昭和45年2月3日判決は、初めに5年間の保証期間を定め、その期間満了の際別段申し出がない限りさらに5年間同一条件で更新するとの定めは、「身元保証人に契約の更新を拒絶すべきか否かを判断する機会を実際に得させた場合においてのみ」有効であると判断しました。

 それで、保証期間満了時、少なくとも身元保証人に連絡して再度明示的な更新の同意を得るといった方法が望ましいと思われます。

会社の通知義務と身元保証人による解除

 身元保証法3条は、労働者が業務上不適任もしくは不誠実であるために身元保証人に責任が生じる可能性があることを会社が知った場合、勤務内容が大きく変更するなど責任が加重されるおそれがあることを知った場合には、遅滞なく身元保証人に通知しなければならないと規定しています。

 また身元保証法4条は、身元保証人が3条の通知を受けた場合には、身元保証人は、身元保証契約を解除できると規定しています。

 ただし、身元保証人がこの解除権を行使しない場合には、職務内容が大きく変化しても、身元保証が当然に失効することはありません(最高裁昭和44年2月21日判決 泉州銀行事件、最高裁判昭和51年11月26判決 ユオ時計事件)。

身元保証人の責任の制限

 身元保証人が責任を負わなければいけない場合、身元保証法5条は、身元保証人の責任の軽減を図っています。

 つまり、同条では、労働者の監督についての会社の過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った経緯、労働者の任務の変化等、一切の事情を総合的に考慮して賠償金額を定める旨が規定されています。それで、身元保証人への請求においては、身元保証人の責任は実際の損害より軽減される場合が少なくないといえます。

 例えば、前記のとおり、身元保証法3条に基づく通知義務を会社が怠っている間に、労働者が不正行為をして身元保証人の責任が生じたという場合、こお通知義務の懈怠は、身元保証人の損害賠償の責任と金額を定める上で斟酌すべき事情となります(前記ユオ時計事件)。



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