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4.4 商標の類否~商標権侵害の考え方

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商標権の侵害の判断要素~商標の類否

 ある標章の使用が、商標権侵害といえるための一つの要素は、当該標章と、登録商標が類似の関係にあるといえる必要があります。本稿では、どのような場合に類似といえるのか、類否の判断の考え方について解説します。

 まず、商標の類否の判断のごくアウトラインを述べます。

結論

ある標章と登録商標との間に、誤認混同が生じるおそれがあるか否かで判断する。肯定されれば類似と判断される。

検討要素

1 以下の3要素を比較する。

  • 外観(見た目)
  • 称呼(読んだ場合の音)
  • 観念(商標から想起される考え)

2 考慮の際には、「取引の実情」を考慮する。

3 誤認混同のおそれは、当該商品やサービスの需要者が、取引時に通常払う注意の程度を基準として判断する。

 以下、各判断の要素や留意点について検討します。

外観・称呼・観念の比較

 先に述べたとおり、ある標章と登録商標の類否判断に当たっては、外観・称呼・観念それぞれにつき、類否を検討します。ただし、これら各要素の類否は考慮要素であって、最終的には、これらの要素も踏まえ、誤認混同が生じるおそれがあるか否かで判断されることとなります。

商標の要部の判断・結合商標についての類否判断

要部とは

 まず、商標(標章)どおしを外観・称呼・観念で比較する場合、最初に「要部」を抽出して、これらを対比するという作業を行うことがあります。

 つまり、ある標章を構成する語のうち、出所識別機能を有する部分とそうではない部分があります。例えば、飲食店の商標として「レストランABC」とあれば、通常「レストラン」の部分は出所識別機能を有さないため、出所識別機能を有する「ABC」の部分が要部になります。

結合商標についての類否判断

 他方、複数の構成部分を組み合わせた結合商標(標章)についてはどのように判断されるでしょうか。この点については、その標章の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断するということは、基本的にはしません。むしろ、結合商標全体と、他者の商標を比較することになります。

 ただし、結合商標のある部分が取引者、需要者に対し、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるという場合や、他の部分から出所識別標識としての称呼や観念が生じないと認められる場合は別です。

 判決例における実例をあげると、登録商標「プレミアム/PREMIUM」と、「Premium by LAST SCENE」とが組み合わされた標章との類否が問題となった例があります(大阪地裁平成21年7月16日判決)。

 ここで裁判所は、取引の実情を考慮し「プレミアム\PREMIUM」が、「高品質の、高級な、高価な」を意味する言葉であるとの認識が一般的に普及するようになり、既に、商品や役務の出所を示すものとして強い印象を与える言葉ではなくなっていたこと、被告標章については、「LAST SCENE」の部分も「Premium」の部分に劣らず需要者の目を引くこと、ファッション業界においては、ブランド名として「by」の後ろに既存ブランド名を掲げた名称が使用されることがあり、このような場合顧客誘因力を有する既存ブランド名が、出所識別機能を有していること、等から、被告標章(「Premium by LAST SCENE」)のうち「Premium」の部分だけを抽出し、この部分だけを本件商標と比較して類否を判断することはできない、と判断しました。

外観の類否

外観の類否の基本的な考え方

 では、外観・称呼・観念のうち、まずは外観の類否の考え方について解説します。

 外観の類似とは、対比する2つの商標(標章)を表す、文字・図形・記号等の外観を視覚を通じて観察した場合、商品・役務の識別標識として紛らわしいといえる場合をいいます。

隔離的観察

 なお、外観の類否の検討にあたっては、「離隔的観察」が必要となります。つまり、2つの商標(標章)を同時に横に並べて比較するわけではなく、時間や場所を離して比較します。言い換えれば、場所と時間を異にして両商標を消費者が見た場合に混同を生ずるか否かという観察方法です。

 以下、裁判例から、外観が類似とされた例、否定された例をご紹介したいと思います。

類似とされた例

「Libbys」と「Lilys」

「北の花」と「六の花」

「食堂風一夜薬」の文字を要部とする商標と「うどんや一夜薬」の文字を要部とする商標

「Single」と「SINGER」

東京高裁S44.9.4

「キミス」と「キスミー/Kiss Me」

東京高裁S57.5.27

「テネスコ/TENESCO」と「TENNECO」

「SINCLER」と「SINGER」

「大森林」と「大林森」

非類似とされた例

「S.K.F.」と「I.K.F.」

「SOLAR」と「POLAR」

東京高裁H010328

東京高判平6.10.25

呼称の類否

称呼の類否の基本的な考え方

 続いて、外観・称呼・観念のうち、称呼の類否の考え方について解説します。

 称呼の類似とは、対比する2つの商標(標章)の呼び名(聞いた感じ)が、商品・役務の識別標識として紛らわしいといえる場合をいいます。

称呼の認定の方法

 もっとも、ある商標から必ずしも一義的に一つの称呼が生じるとは限りません。ひらがなやカタカナ、また一般に馴染みのある漢字や外来語ならこの点は大きな問題とはなりません。しかし、記号や図形、馴染みのない外国語や珍しい漢字、全くの造語などでは称呼の認定が問題となります。

 この点判例は、商標の称呼は商標の構成自体より取引上自然に生ずるもので、一概に断定し得ず、具体的に決めなければならないが、通常その構成自体より最も呼びやすいものが選ばれるのが自然であるとしています(大判昭5年4月25日判決)。それで、一律の基準があるわけではなく、需要者層や取引の実情から個々に認定するしかありません。

 例えば、過去の裁判例・審決例で、称呼がどのように認定されたか、例をご紹介します。

商標 称呼 備考
「小舞子」 コマイコ 「古ぶ志」との類否が問題となり、非類似と判断されました。
カブス カブス 審決の段階では「ユーピーエス」という称呼が生じると判断されましたが、審決取消訴訟では「カブス」とう称呼のみが生じると判断されました。
「寛」 カン、又はヒロシ 「くつろぎ」という商標と「寛」という商標の称呼の類否が問題となったケースで、非類似と判断されました。
フジ 「富士」という先行商標との類否が問題となり、類似とされました
Demer ディマー又はディーマ- 「De Maire」の出願に対する引用商標として称呼の認定が問題となったものです。非類似と判断されました。
称呼の類否判断の事例~類似肯定例

 以下、過去の裁判例・審決例から、称呼の類似が肯定された例をご紹介します。

  • 「SIMPO」と「SHINPO」
  • 「菊正宗」と「金盃菊正宗」
  • 「Cartier Paris」と「CARTIER」
  • 「関ノ孫六」と「六孫/孫六煎餅」
  • 「パールスカイライン」と「SKY-LINE」
  • 「ジャンボハワイ」と「ジャンボー/JUMBO」
  • 「シエーン」と「紫苑」
  • 「開拓百年」と「開拓百年/風雪の里」(二行で構成)
  • と「うずまき」
  • 「エースチョコ」と「チョコエース」
称呼の類否判断の事例~類似否定例

 以下、過去の裁判例・審決例から、称呼の類似が否定された例をご紹介します。

  • 「アヴィアス」と「マビアス」
  • 「MIKRON」と「マイクロン」
  • 「LANCEL」と「ラッセル/RUSSEL」
  • 「ギフト」と「日経ギフト」
  • 「元禄」と「廻る元禄寿司」
  • 「エピロンエー」と「EPINON/エピノン」
  • 「クールガイ/COOLGUY」と「GUY」
  • 「COMPUWRITER/コンピューライター」と「COMPUTYPER」
  • 「FONTANA」と「本棚」
  • 「JELJE/ジェルジェ」と「ジェジェ」
  • 「アルトロン」と「サルトロン」

観念の類否

観念の類否の基本的な考え方

 ある商標どうしが「観念」において類似するとは、2つの商標から生じる意味内容が同一であるか類似するために、商品・役務の識別標識として誤認混同が生じる場合をいいます。

 この「観念」は商標の全体から生ずることもあれば、一部から生ずることもあります。いずれにせよ、商標の要部(識別力を有する部分)から生じます。

 また、「観念」は、当該商標に接した需要者が直ちに一定の意義を読み取るようなものである必要があります。ですから、当該商標に含まれる単語を辞書を引いてはじめて一定の意味が読み取れるような場合には、その意味は当該商標から生じる「観念」とはいえません。

 また、格別の意味のない文字の結合や図形、全くの造語については、商標の類否判断の観点からの「観念」は生じないのが通常です。それで、そのようなケースでは、商標(標章)の類否判断にあたっては、観念の類否は検討しません。

観念の類否の判断事例~肯定例

 以下、観念の類否について判断した事例を見て行きたいと思います。肯定例としては以下のようなものがあります。

  • 「ふぐの子」と「子ふぐ」
  • 「マイクロダイエット」と「マイクロシルエット」
  • 「ケンコー」と「ヘルス」
  • 「東京っ子」と「江戸子」
  • 「夢二」と「竹久夢二」
観念の類否の判断事例~否定例

 また、否定例としては以下のようなものがあります。

  • 「HOLE IN THE WALLと図の組合せ」と「壁の穴」
  • 「ドコモeサイト」と「eSight」
  • 「LADYBIRD」と「てんとう虫の絵柄」
  • 「IMPERIAL」と「帝王印」
  • 「銀河」と「天の川」

取引の実情の考慮

基本的な考え方

 商標の類否の判断に当たっては、上で述べた外観・称呼・観念の対比において、またこれに加えて、取引の実情を考慮します。つまり、外観・称呼・観念の類否判断にあたっては取引の実情が考慮されますし、また外観・称呼・観念のいずれも類似の程度が高くなくとも、取引の実情を考慮すると出所識別機能において混同のおそれが認められる場合もあるわけです。

 この点、「大森林」の登録商標(石けん類、歯磨き等を指定商品とする)と、「木林森」の標章(シャンプーに使用)を類似と判断した最高裁判決は、以下のように述べています。

 綿密に観察する限りでは、外観、観念、称呼において個別的には類似しない商標であっても、具体的な取引状況如何によっては類似する場合があり・・総合的な類似性の有無も、具体的取引状況によって異なってくる場合もある。
本件については、両者は、いずれも構成する文字からして増毛効果を連想させる樹木を想起させるものであることからすると、全体的に観察し対比してみて、両者は少なくとも外観、観念において紛らわしい関係にある。

取引の実情の考慮に関する実例

 「取引の実情」には、当該標章をめぐる商品の取引方法、需要者層、その他の一般的取引事情に加え、商標の周知性、他の商標の存在状況、商標の使用状況・態様等一切の実情が含まれます。以下、具体的な事例から、取引の実情の例について見てみたいと思います。

「日経ギフト」事件

 被告が使用する標章において、著名性が考慮された事例があります。

 例えば、登録商標「GIFT」「ギフト」と被告雑誌の題号「日経ギフト」「NIKKEIGIFT」の類似性が争われた事案があります(東京高裁平成3年11月12日判決)。

 ここでは、「日経」の語が日本経済新聞社・日本経済新聞の略称として広く知られていることや、「日経●●」のように他の語と結合した題号の雑誌が多数刊行されているといった取引の実情を考慮し、被告の標章である「ニッケイギフト」は一連に称呼されるから、商品の出所について混同のおそれが生じないことを理由に、登録商標と被告の標章の類似性を否定しました。

「CAMEL」事件

 また、タバコの商標である「CAMEL」や「CAMELとラクダの図形」を「トレーナー」に付す行為が、登録商標「ラクダ印メリヤス」を侵害するかが問われた事例があります(最高裁平成7年9月19日判決)。これについても、「CAMEL」の世界的な著名性を考慮し、類似性が否定されました。

「小僧寿し」事件

 また、原告の登録商標「小僧」と、「小僧寿し」の類似性を否定した事例もあります(最高裁平成9年3月11日判決)。この判決は、「小僧寿し」という標章は、被告もその一員である著名な小僧寿しチェーンの略称として広く知られているという事情を料酌して、全体が不可分一体となって「こぞうずし」の称呼を生じるという理由から、原告商標「小僧」との類似性を否定しました。

「ELLEGARDEN」事件

 ロックバンド名「ELLEGARDEN」のTシャツ、ステッカー等への使用が、著名商標である「ELLE」の商標権侵害等が否かが争われた事案です(知財高裁平成20年3月19日判決)。

 裁判所は、すべての取引の実情を考慮し、「ELLEGARDEN」を「ELLE」と「GARDEN」とする分離観察を否定し、「ELLE」と「ELLEGARDEN」については類似しないと判断しました。

「オシャレ魔女ラブandベリー」事件

  「LOVE」という文字と「BERRY」という文字が横一列に記載された登録商標(指定商品に洋服、靴類を含む)と、業務用ゲーム機等に使用した「オシャレ魔女ラブandベリー」という標章をTシャツやサンダルに使用したことについて、類否が問題となりました(東京地裁平成18年12月22日判決)。

 裁判所は、取引の実情等を総合的に判断し、被告の標章に接した需要者が、被告のゲーム機又はそのキャラクターである「オシャレ魔女の“ラブ”と“ベリー 」を容易に想起し、その出所を被告と認識するという理由で、類似性を否定しました。

「湯~とぴあ」事件

  原告は、「ラドン健康パレス」と「湯~とぴあ」の二段構成の商標の商標権者であり、被告は、「湯~トピアかんなみ」という標章で入浴施設を運営する地方公共団体でした(知財高裁平成年11月5日判決)。

 なお、以下が原告商標(左)と被告標章(右)の具体的な画像です。

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 裁判所は、以下のような取引の実情等を総合的に判断し、原告商標は上段と下段全体として一体的に観察して、 被告標章との類否を判断すべきであるとし、商標の類否を否定しました。

  • 「ゆうとぴあ」との語は、「湯」の漢字を含むか否かを問わず、全国的に、入浴施設というサービスに広く使用されている。
  • 原告商標のうち、下段の「湯~とぴあ」の部分は識別力が弱く、需要者がサービスの「印」として強く支配的な印象を受けないため、この部分だけを抽出した被告標章との比較はできない。
  • 上段の「ラドン健康パレス」も、「ラドンを用いた健康によい温泉施設」という一般名称的な意味であり識別力が弱い。
  • そうすると、原告商標は、上段と下段が結合してはじめて「ラドンを用いた健康によい温泉施設であって、理想的で快適な入浴施設」であることが明確になるから、「ラドン健康パレス」と「湯~とぴあ」は不可分一体として理解される。

 

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