2016-08-02 再販価格の拘束と独禁法

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

学術的・難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。メルマガの購読(購読料無料)は、以下のフォームから行えます。

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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

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前書き

 本稿を執筆しております弁護士の石下(いしおろし)です。いつもご愛読ありがとうございます。

 弁護士や裁判官のように訴訟実務を扱う人以外の方の多くは、訴訟で重要なのは「勝つ」か「負ける」かであると思われるかもしれませんが、実はそうではありません。

 最も重要なのは、起きてしまった紛争について、落ち着くべきところに落ち着かせる解決を図ることにあります。その手段として「勝訴」が重要な場合もありますが、勝訴はすべてではありませんし、「勝ち」ばかりにこだわることが逆にマイナスとなることもあります。

 前書きが長くなるとよくないので、この点は次の機会にまた述べようと思います。

 なお、本稿の末尾には、弊所取扱案件として英文契約実務(知的財産契約編)についてご紹介しています。ご関心があればこちらもご覧ください。

 では、本文にまいります。

1 今回の事例 再販価格の拘束と独禁法

 
 今回は裁判例ではなく、公正取引委員会の排除措置命令を取り上げます。

 公正取引委員会平成28年6月15日排除措置命令

 A社は、著名な米国のキャンプ用品メーカーの製品を日本で販売する会社であり、少なくない一般消費者が、同メーカーの商品を指名して購入していました。

 A社は、キャンプ用品について、毎年8月ころに、翌シーズンに小売業者が実店舗又はインターネットでの販売を行うに当たっての販売ルールを次のとおり定めていました。

 ア 販売価格は、製品ごとに、参考価格からおおむね10パーセ
  ント引き以内でA社が定める下限の価格以上の価格とすること。

 イ 割引販売は、他社の商品を含めた全ての商品を対象として実
  施する場合又は実店舗における在庫処分を目的として、A社が
  指定する日以降、チラシ広告を行わずに、一部の商品を除いて
  実施する場合に限り行うこと。

 A社は、小売業者にこうした販売ルールに従って販売させるという方針のもと、同ルールに従って販売するよう要請したり、取引先小売業者から販売ルールに従って販売する旨の同意を得るなどするとともに、販売ルールを逸脱した販売を行う小売業者に対し、販売ルールに従った販売の要請を続けるなどして販売ルールに従って販売させていました。

 A社は、平成27年に立入検査を受けるまでの間少なくとも約5年、上のような行為を行っていました。

2 公正取引委員会の判断

 公正取引委員会は以下のように判断し、排除措置命令を発しました。

 なお排除措置命令の内容は、取締役会での一定内容の決議、取引先や一般消費者、従業員への周知、行動指針の策定、研修と監査の実施、公取委への報告というものです。

● A社は、そのキャンプ用品の販売に関し、取引先小売業者にキャンプ用品を販売ルールに従って販売するようにさせ、取引先卸売業者をして小売業者にコールマンのキャンプ用品を販売ルールに従って販売するようにさせていた。

● これは、正当な理由がないのに、取引先小売業者に対し、当該小売業者の販売価格の自由な決定を拘束する条件を付けてキャンプ用品を供給していたものであって、独占禁止法2条9項4号イ及びロに該当し、独占禁止法19条の規定に違反する。

● 前記の違反行為は既になくなっているが、違反行為が長期間にわたって行われていたこと、違反行為の取りやめが公取委の立入検査を契機としたものであること等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要がある(独禁法20条2項、7条2項1号)。

3 解説

(1)再販価格の拘束と独占禁止法

 メーカーなどが小売業者等に自社商品の販売価格を指示し、これを守らせることを再販売価格維持行為(再販価格の拘束)といいます。

 事業者には比較的よく知られていることかと思いますが、再販売価格維持行為は、競争手段の重要な要素である価格を拘束するため、独禁法2条9項4号で「不公正な取引方法」として定められ、原則として禁止されています。

 メーカーとしては、小売店の間で過度な安売り競争をされると、ブランドイメージが傷つけられるおそれもあることから、価格を維持したいと考える気持ちは理解できますが、本件のように、再販価格について取引先を拘束することは基本的には許されないものと考 える必要があります。

(2)実務上問題となりうるケース~代理店を通じた取引

 実務上再販売価格維持行為が問題となりうるケースとして、代理店を通じた取引のケースを若干考えてみたいと思います。

 代理店を通じた取引であっても、通常の商取引、つまりメーカーが代理店に対して売買契約によって商品を販売し、代理店が自社で在庫リスクを負って小売店やエンドユーザーに商品を販売するというケースでは、メーカーが代理店に対して販売価格を拘束することは原則としてできません。

 他方、メーカーの直接の取引先である代理店が単なる「取次ぎ」として機能しており、実質的に見て、メーカーが代理店の取引先に直接に販売していると認められる場合、メーカーが代理店に対して価格を指示しても、通常、違法とはならないとされています(公正取引委員会 流通・取引慣行ガイドライン 第2部第1-2)。

 例えば、「委託販売」の場合があります。つまり、メーカーが代理店に販売を委託しており、代理店(受託者)は、受託商品について在庫リスクや代金回収リスクを負わない、というケースです。このような場合であれば、メーカーが代理店の取引先に直接に販売していると認められ、代理店への価格の指示は通常は違法とならないと考えられています。

 また、別の例としては、メーカーと、代理店の取引先(小売業者やエンドユーザー)との間で、直接の価格交渉がなされ納入価格が決定されるような取引の場合です。そして、当該代理店が在庫リスクを負わず、物流や代金回収などの履行に対する手数料分を受けとることとなっているといった状況で、実質的にみてメーカーが小売業者やエンドユーザーに直接販売をしていると認められる場合にも、代理店への価格の指示は通常は違法とならないとされています。

 もっとも、上のような取引形態が取れるケースは多くはないのかもしれませんが、商品の種類やエンドユーザが事業者である場合など、検討できるケースはあるかもしれません。

4 弊所取扱案件紹介~英文契約実務(知的財産ライセンス編)

 近年では多くの企業が海外取引に積極的に取り組んでいます。海外取引・国際取引では英文契約はまさに自社を守る必須のツールといえますが、弊所では、英文契約業務に積極的に取り扱い、多くの企業の国際化を支援しています。

 これまで弊所が作成・レビューとして取り扱ってきた英文契約は多種多様ですが、今回は特に知的財ライセンス関係のものをピックアップすると、以下のようなものがあります。

 弊所では海外取引・国際契約をご検討の方のご相談を歓迎します。詳細は以下のURLをご覧ください。

http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/keiyaku/eibun_keiyaku/

 ・ 特許実施許諾契約書(Patent License Agreement)
  
 ・ 著作権利用許諾契約書(Copyright License Agreement)

 ・ 商標使用許諾契約書(Trademark License Agreement)

 ・ ノウハウ実施許諾契約書(Know-How License Agreement)

 ・ 原盤権使用契約書(Master Recording License agreement)

 ・ 必須特許共同ライセンス契約書(Joint License for
               Essential Patents Agreement)

 ・ 特許プール契約書(Patent Pool Agreement)

 ・ 特許プールメンバー間フレームワーク契約書
             (Patent Pool Framework Agreement)

 ・ 特許プール用標準ライセンス契約書
                (Standard License Agreement)

 ・ キャラクター使用許諾契約書
          (Character and Artwork License Agreement)

 ・ 出版契約書(Publishing Agreement)

 ・ 共同開発契約書(Joint Development Agreement)

 ・ 技術支援契約書(Technical Assistance Agreement)



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