2017-04-25 並行輸入における商標権侵害

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

学術的・難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。メルマガの購読(購読料無料)は、以下のフォームから行えます。

登録メールアドレス    

なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

以下の検索ボックスを利用して、トピックページ(メルマガバックナンバー)から検索できます。

1 今回の事例 並行輸入における商標権侵害

 東京地裁平成28年11月24日判決

 A社が、他社の登録商標「TWG/TEA」が表示されたティーバッグを輸入し、透明のビニール袋に入れて販売していました。

 これに対し、当該商標権者であるTWG社は、当該販売が商標権を侵害すると主張し、販売の差止と廃棄、謝罪広告、損害賠償を請求しました。

 なお、TWG社は不正競争防止法違反も主張していますが、本稿では商標権侵害の点を取り上げます。

2 裁判所の判断

 裁判所は以下のとおり判断し、TWG社の請求を認めませんでした。

● A社が販売した商品(密封された包装袋内に紅茶の茶葉が入った綿製のティーバッグが納められたもの)は、TWG社から第三者を経てA社が輸入し、外観及び内容が変えられることなく、TWG社が製造したままの状態で流通し、販売された。

● TWG社が日本で販売する商品は、A社の商品と同一の外観を有する包装袋(紅茶の茶葉が入った綿製のティーバッグが納められている)が透明のビニールで包装された化粧箱に詰められている。

● A社の販売する商品に付した標章は商標権者であるTWG社が付したものであり、TWG社の商標と同一の出所を表示する

● A社は、密封された包装袋内に茶葉が納められた商品を段ボール箱から取り出して20個ずつ透明な袋に入れたにとどまり、商品それ自体には改変を加えていないから、包装方法によって紅茶の品質が直ちに影響するとは考え難い。証拠上も茶葉としての品質を異にしていることはうかがわれない。

3 解説

(1)並行輸入と商標権侵害の成否

 本件は、いわゆる並行輸入に対して商標権者が商標権侵害を主張したケースです。並行輸入とは、日本国内に商標権がある商標を付した商品を、商標権者の同意を得ないで輸入することをいい、一見すると商標権を侵害するように見えます。
 
 しかし、ちまたに多くの並行輸入品が見られるように、現在は多くの並行輸入が商標権の侵害とはされていません。これは、判例上、並行輸入が一定の条件を満たせば商標権の侵害とはならないことが示されてきたからです。

 具体的には、以下のすべてを満たす場合、並行輸入は商標権侵害とはならないとされています。

(a)真正商品であること

 当然のことですが、並行輸入商品が偽物ではなく、輸入元の外国における商標権者やライセンシーにより商標が適法に付された「真正品」であることが必要です。

(b)出所の同一性

 日本の商標権者と輸出元国における商標権者が同一人であるか、又は法律的若しくは経済的に見て一体といえる関係にあって実質的に同一人であると認められることが必要です。

 例えば、輸出元国での商標権者はメーカーであり、日本での商標権者はその販売子会社というケースはこれに該当します。

(c)商標の品質保証機能が害されていないこと

 並行輸入商品と、日本の商標権者の販売する商品との間に、日本の登録商標の保証する品質において実質的に差異がないことが必要です。

 商標権のもう一つの機能として、「このブランドの紅茶ならこれこれの品質だろう」という、特定のブランドの持つ品質を保証する機能があります。この点、並行輸入によって販売される商品が日本で販売されているものと品質が異なると、商標のこの機能が害されてしまい、商標権を実質的に害することになるからです。

(2)実務上の留意点〜品質保証機能の観点から

 並行輸入の要件のうち、留意すべきものの一つは、「品質保証機能」が害されていないかについてきちんと確認する必要があるという点です。

 例えば、今回のケースでは裁判所は品質保証機能は害されていないと判断しましたが、小分けや再包装の方法によっては異物混入の可能性などが残り、商標権の侵害にあたると判断される場合もあります。また、元の商品に変更を加えたり付属品を装着するなどの加工をする場合も侵害の可能性が生じます。

 また、例えば、海外の商標権者からライセンスを受けたライセンシーが、ライセンス条件には特定の国での製造が禁止されているのに、それに反してその国で製造された商品が並行輸入されたという場合も、品質保証機能が害されるとして商標権侵害が認められる可能性があります。

 それで、自社で並行輸入をしようという場合には、その商品が真正商品であることだけではなく、品質保証の機能を害さないようなところがないか、商標法の観点から十分に確認することは重要となると思われます。

 他方、正規代理店の立場では、並行輸入品が上のような観点から商標権を侵害する要因がないのかをきちんとチェック・監視することも重要になると思われます。

追記

 本ページにおいて、TWGとトワイニング紅茶に関連があるかのような記載をしておりましたが、片岡物産株式会社様より事実と異なる旨ご指摘を受け、訂正・削除しました。

4 弊所ウェブサイト紹介~商標法 ポイント解説

弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した商標については、

http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/

にあるとおり、効果的な商標の選び方から出願、ライセンス、紛争
解決の方法まで、特許法に関する解説が掲載されています。必要に
応じてぜひご活用ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイト
において解説に加えることを希望される項目がありましたら、メー
ルでご一報くだされば幸いです。

 

前のページ 共有特許の実施と共有者間の合意



メルマガ購読申込はこちらから

弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」は、以下のフォームから行えます。

登録メールアドレス    

 なお、入力されたメールアドレスについては厳格に管理し、メルマガ配信以外の目的では使用しません。安心して購読申込ください。



法律相談等のご案内


弊所へのご相談・弊所の事務所情報等については以下をご覧ください。



Copyright(c) 2017 弁護士法人クラフトマン IT・技術・特許・商標に強い法律事務所(東京丸の内・横浜)  All Rights Reserved.