不正競争防止法の概要
不正競争防止法とは
不正競争防止法とは,事業者間において正当な営業活動を遵守させることにより,適正な競争を確保するための法律です。
不正競争防止法は,公正な競争を阻害する一定の行為を禁止することによって,適正な競争を確保し,公正な市場を確保しようとしています。
不正競争行為の概要
不正競争防止法によって禁止される行為をざっと挙げると,以下のとおりです。
- 周知表示に対する混同惹起行為(2条1項1号)
広く知られた商品表示によく似た表示,類似表示を使用した商品を作り,売るなどして,市場において混同を生じさせる行為です
- 著名表示冒用行為(2号)
他人の著名な商品表示を,自己の商品表示として使用する行為です。この場合,1号の場合と異なり,混同が生じなくとも違法となります。
- 商品形態模倣行為(3号)
他人の商品の形態を模倣した商品を作ったり,売ったりする行為です。
- 営業秘密不正取得・利用行為等(4ないし9号)
業の秘密を盗んだり,悪用したり,盗ませたりする行為です。なお,詳しくは後に述べるとおり,「秘密」といえるためには一定の要件があります。
- 技術的制限手段に対する不正競争行為(10号,11号)
デジタルコンテンツのコピー管理技術,アクセス管理技術を無効にすることを目的とする機器やプログラムを提供する行為です(技術的制限手段の試験又は研究のために用いられる場合を除きます)。
- 不正にドメインを使用する行為(12号)
不正の利益を得る目的または他人に損害を加える目的で,他人の特定商品等表示と同一または類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有し,又はそのドメイン名を使用する行為をいいます。
- 品質内容等 誤認惹起行為(13号)
商品の原産地,品質,製造方法等について,誤認させるような表示をしたりする行為です。
- 信用毀損行為(14号)
競争関係に者の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は,流布する行為です。
- 代理表示等冒用行為(15号)
代理権や販売権が消滅したにもかかわらず,総代理店,特約店等と言った表示を承諾なく継続して使用する行為などです。
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不正競争行為に対する是正方法の概要
不正競争防止法は,不正競争行為に対して,以下のような是正方法を定めています。
- 差止請求権(3条1項)
不正競争行為によって営業上の利益を侵害される(おそれのある)者が,侵害の停止又は予防を請求することができます。
- 廃棄除去請求権(3条2項)
侵害行為を構成した物,侵害行為によって生じた物の廃棄,侵害行為に供した設備の除却を請求することができます。
- 信用回復措置(7条)
営業上の信用を害された者は,侵害した者に対して,信用の回復に必要な措置を取らせることができます。謝罪広告とか,取引先に対して謝罪文を発送させるなどの方法が考えられます。
- 損害賠償請求(4条)
特に,法5条は,損害額の推定の規定を定め,損害額の立証の困難性を緩和しています。例えば,その侵害者が侵害行為により利益を受けた額を損害額を推定するなどの規定を置いています。
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不正競争行為の適用除外
以下のような場合は,不正競争行為に該当しないとされています。
- 普通名称・慣用表示の使用
商品(あるいは営業)につき,その商品(営業)の普通名称,又は,同一あるいは類似の商品(営業)について慣用されている商品等表示を普通に用いられる方法で使用し,又は,そのような表示を使用した商品を譲渡したりする場合には,1号,2号,13号,15号の不正競争行為にはなりません。
- 自己氏名の使用
また,自己の氏名を不正の目的でなく使用するような場合も,1号,2号,15号の不正競争行為にはなりません。
- 先使用
他人の商品等表示が需要者の間に広く認識される前からその商品等表示と同一・類似の商品等表示を使用する行為等については、1号の不正競争行為とはなりません。なお,かかる先使用の主張に対しては,権利の侵害を受けたと主張する者は,先使用者に対し,混同防止表示を付加するように請求することができます。
また,他人の商品等表示が著名になる前からその商品等表示と同一・類似の商品等表示を使用する行為等については、2号の不正競争行為とはなりません。
- 形態模倣商品の善意取得者
他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者(その譲り受けた時にその商品が他人の商品の形態を模倣した商品であることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)がその商品を譲渡等を行う行為は,3号の不正競争行為とはなりません。
- 営業秘密に関する例外
取引によって営業秘密を取得した者(その取得した時にその営業秘密について不正開示行為であること又はその営業秘密について不正取得行為若しくは不正開示行為が介在したことを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)がその取引によって取得した権原の範囲内においてその営業秘密を使用し,又は開示する行為は,4号〜9号の営業秘密に関する不正競争行為とはなりません。
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各不正競争行為の解説(主なもの)
ここでは,個々の不正競争行為について,主なものにつき解説します。
混同惹起行為規制(2条1項1号)
不正競争防止法2条1項1号は,他人の商品等表示として需要者の間で広く認識されているものと同一・類似の商品等表示を使用し,他人の商品または営業と混同を生じさせる行為を禁止しています。
商品等表示として保護されるための要件 具体的には,以下の要件が必要です。
- 商品表示性
当該表示が,「商品等表示」つまり,ある商品を示す印として機能している必要があります。
- 周知性
この商品等表示が,需要者の間で広く認識されている必要があります。
- 類似性
商品等表示が,同一又は類似している必要があります。
- 混同のおそれ
需要者が両者の商品の間で混同を起こすおそれがあることが必要です。ここでいう「混同」は,その者自体が主体となっていると誤認される場合(狭義の混同)だけでなく,関係のある者が行っていると考えさせる(広義の混同)ことで足りるする裁判例もあります。
「商品等表示」とは何か 不正競争防止法は,「人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。」と定義しています。すなわち,商品または営業を表示するものであれば保護の対象となるわけです。
商品等表示として認められるものの例 不正競争防止法上例示された,「氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装」は比較的分かりやすいでしょう。そのほかにも,商品等表示として保護の対象となるものがあります。例えば,立体的な看板があります。有名な例としては,「動くカニの形をした看板」があります。
また,商品自体の形態が商品等表示として保護の対象となることがあります。しかし,商品の形態が商品等表示といいうるためには,その特徴的な形態を一見しただけで,「あの会社の商品だ」と分かる程度に知られていることが必要です。
裁判例上商品等表示として認められたものとしては以下のようなものがあります。
- ルービックキューブ事件 (大阪地判 昭和48年3月9日)
- チョロキュー玩具事件 (浦和地判 昭和60年4月22日)
- ローズ型チョコレート事件 (東京高判 平成3年9月12日)
- iMac事件(東京地判 平成11年9月20日)
また,例外的ですが,営業のやり方そのものに表示としての機能を認めたものもあります(例:「通信販売カタログによる営業の方法」大阪高判昭和58年3月3日判決)。
「周知性」とは何か 次に,商品等表示として保護の対象になるためには,その商品等表示が「需要者の間に広く認識されている」(=「周知性」)必要があります。
この「需要者」は,商品の主な取引の相手方をいいます。例えば,ある美容液が,主に美容院関係者といった業者向けであれば,「需要者」は,美容院関係者ということになります。他方,一般消費者向けであれば,一般消費者の間で広く認識されている必要があります。つまり,後に述べる「著名」とは異なり,その商品のマーケットにおいて知られており,かつそれは,一定の地域(同一・類似表示の使用者の営業地域)において知られていれば足りるとされています。
「類似性」はどのように判断されるか 同一・類似性については,どのように判断されるでしょうか。一般論としていうと,取引の実情の下において,需要者が両者の外観,呼称,又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かで判断されます。
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著名表示冒用行為(2号)
不正競争防止法2条1項2号は, 自己の商品等表示として,他人の著名な商品等表示と同一あるいは類似の商品を使用し,またはそのような表示が使用された商品を譲渡引渡等することを禁止しています。この場合は,先の混同惹起行為と異なり,混同の要件は不要となります。
「著名」とは何か ここでいう「著名」とはどんな状態をいうのでしょうか。これは先の「周知」(需要者の間に広く認識されていること)よりも一段と広く知られているもので,全国的に,誰でも知っているようなものをいいます。
混同の要件が不要である理由 著名な表示は,その著名性のゆえに,独自の名声や顧客吸引力などの価値を有しています。このような著名表示については,仮に混同が生じないような使用方法であっても,これを無断で使用することによって,この著名表示の価値が希釈化(ダイリューション)されて価値が減少してしまうおそれがあります(例:著名な食品の表示をトイレ用品に使用されるなど)。また,著名な表示を無断で使用する行為は,著名な表示が有する顧客吸引力などの価値にただ乗り(フリー・ライド)する,アンフェアな行為でもあります。以上の理由から,混同の要件は不要であるとされています。
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商品形態模倣行為(3号)
法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡したり,貸し渡したりすることを禁止しています。
ただし,模倣の対象となった他人の商品が最初に販売された日から3年を経過した場合は,禁止の対象となりません。
禁止の対象となる形態模倣行為の内容 まず,同条項が禁止しているのは,意図的な模倣であり,たまたま形態が似てしまった場合は対象外です。また,この規定はいわゆる「デッドコピー」を規制するものであり,形態が似ている(類似)場合までは金するものではありません。
また,注意すべき点として,形態が同じであっても,技術的機能的形態(つまり,ある特定の機能を実現するために技術的に同じ形態になる場合)に対しては,禁止することができません。
意匠権の取得が望ましい 以上のとおり,不正競争防止法に基づく形態模倣禁止の規定で,デッドコピーであれば,規制は可能です。しかし,できます。しかし,期間が3年と短いこと,類似の形態の使用には規制が及ばないことから,重要なデザインについては意匠権を取得しておくことが望ましいといえます。
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営業秘密不正取得・利用行為等(4ないし9号)
この規定は,営業秘密を不正な方法で取得したり,第三者に開示したり,利用したりする行為を禁止しています。
営業秘密とは ここでいう営業秘密といえるためには,以下の要件が必要となります。
- 秘密として管理されていること(秘密管理性)
- 事業活動に有用な情報であること(有用性)
- 公然と知られていないこと(非公知性)
秘密管理性が認められるためには この要件で示されるように,単に第三者に知られていない秘密情報であるというだけでは「営業秘密」には当たらず,秘密として管理されている,という要件が必要です。このためには,以下のような要件が必要とされます。
- 当該情報にアクセスした者において,当該情報が営業秘密であることを認識できるようにしていること(客観的認識可能性)
つまり,その情報に対して,秘密であることを表示する必要があります(「部外秘」「極秘」等の表示)。
- 事業活動に有用な情報であること(有用性)
- 当該情報にアクセスできる者が限定されていること(アクセス制限)
それで,例えばサーバー上のデータであれば,パスワード,認証機能等により,特定の人だけがアクセスできるようにしている必要がありますし,紙媒体などの物理的媒体であれば,保管場所に施錠する,非秘密情報と区別して保管する,などの措置が必要です。
営業秘密に関する不正行為の類型 営業秘密に関する不正行為の類型は以下のとおりです。
- 技術上の秘密の保有者から窃取,詐欺,強迫,その他の不正な手段により営業秘密を取得する行為,及びその取得者本人が使用,開示する行為(4号)
- 不正取得行為があった事情を知りながら,又は知らないことに重過失がある場合で,営業秘密を取得する行為,及びその取得者本人が使用又は開示する行為(5号)
- 営業秘密を取得した時点では不正取得されたことを知らなかったが、後に,不正取得されたものであることを知った(又は重大な過失により知らなかった)にもかかわらず,その営業秘密を使用,開示する行為(6号)
- 保有者から提示された営業秘密を、不正競業その他の不正の利益を得る目的で,又はその保有者に損害を加える目的で,営業秘密を使用,開示する行為(7号)
- 7号に規定された不正開示による取得であること,又は不正開示行為が介在していることを知りながら又は重過失によって知らないで,営業秘密を取得する行為,及びその取得者本人が使用,開示する行為(8号)
- 営業秘密を取得した時点では7号に規定された不正開示行為があった(又は介在したこと)ことを知らなかったが,後に,不正開示によって得られたものあることを知ったにもかかわらず(または重大な過失によって知らないで),その営業秘密を使用,開示する行為(9号)
以上をまとめると,不正競争防止法が禁止する営業秘密についての不正行為は,以下のように分類できます。これらの規定から,営業秘密の保護を十分に図ろうとする不正競争防止法の意図を見てとることができます。
- 不正取得型
営業秘密を不正な方法で取得すること,又は不正取得されたものであることを知ってこれを取得使用すること
- 不正開示型
与えられた営業秘密を不正な目的で使用,開示し,又は不正開示行為が介在した営業秘密をそれと知りつつ取得,使用すること
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