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 H18.01.15 有期雇用契約     

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ここでは,比較的最近の判例の紹介を通じ,ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。主な分野として,知的財産(特許,商標,著作権,不正競争防止法等),会社法,労働法,企業取引,金融法等を取り上げます。


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1 今回の判例  有期雇用契約
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H17.10.28 名古屋地方裁判所 平成16年(行ウ)第32号 地位確認請求事件

A大学とB(外国人教師)との間では,平成6年4月1日から,期間を1年とす る雇用契約が締結され,9回更新されてきました。

しかし,A大学が,平成15年12月24日付で,Bに対し,平成16年度(平 成17年3月31日)をもって原告との間の雇用契約を終了させる旨通知しまし た。

これに対し,Bが,「平成17年4月1日以降も労働契約上の権利を有する地位 にあることを確認する」ことを求める訴訟を起こしました。

この訴訟にはいろいろ難しい問題点がありますが,争点の一つとなったのは,
(1)BがA大学と締結した雇用契約は更新が繰り返されることにより,期間の 定めのないものとなったか
(2)BがA大学との間で締結した期間の定めのある雇用契約をA大学が打ち切 ることは許されないかという点でした。

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2 判決の概要
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【結論】 請求棄却

【争点(1)について】
以下の事実から,A大学とBとの間の雇用契約は,期間の定めのない雇用契約に 転化したものと認めることはできない。

(ア)BがA大学総長と締結した雇用契約書には,雇用期間を1年とすることが
   明示されていた
(イ)契約を更新する際に,都度新たに雇用期間を1年とする契約書が作成され
   た
(ウ)契約更新の都度,Bと他の教授が具体的勤務条件を協議し,教授会の決定
   の上,契約更新の際に職務内容,給与額が変更となった
(エ)Bは,契約書を自宅に持ち帰って注意深く読んでからサインをしたことが
   あった

【争点(2)について】
以下の事情から,Bとしては,BとA大学との間で締結される雇用契約について ある程度の継続を期待する合理的理由があった。

したがって,A大学がBの雇用契約の更新を拒絶する場合,解雇に関する法理が 類推され,その更新拒絶には合理的な理由が必要であるが,有期契約である以上, その更新拒絶の基準は,期間の定めのない従業員を解雇する基準よりは緩やかな ものである。

(ア)雇用契約が,9回の更新により10年間継続してきた
(イ)Bが従事していた職務は,臨時的な職務ではなく,恒常的に存在する職務
   であった
(ウ)外国人教師の中には,雇用契約が5年間を超えて更新されないものと明示
   されていた者がいたが,Bの場合には,相互の合意により1年ごとに契約
   を更新できるとされ,更新継続期間の限定はされていなかった
(エ)外国人教師の中には,20年以上にわたって雇用契約の更新継続がされた
   者がいた
(オ)関係者も,雇用契約が更新されるものと認識していた

そして,裁判所は,結論的には,更新を拒絶できる合理的な理由があるとしまし た。

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3 解説
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【有期雇用契約とは】
有期雇用契約とは,雇用期間の定めのある契約です。

有期雇用契約は期間の満了とともに終了するのが原則です。

しかし,実際は,有期契約であっても,人員調整を容易にするための便宜上使わ れていることも多く,更新の手続きがルーズかつ機械的に行われたり,更新手続 きさえされずに,長期間雇用されるケースが常態化しています。

このように期間の定めが一応あっても,更新することへの期待ができる事情があ るときは,安易な更新拒絶(雇い止め)が許されず,期間の定めがない契約にお ける解雇と同様,合理的な理由が必要となります。また,場合によっては,実質 的には期間の定めのない契約と見なされる場合もあります。


【有期雇用契約と無期雇用契約への転化】

どんな場合に,形式上は有期雇用契約であっても,事実上期間の定めのない雇用 になっていると判断されるでしょうか。また,更新への期待権が生じていると認 められるでしょうか。

判断基準としては、次の要素が考えられます。

(A)業務の種類,内容,雇用形態(臨時性・季節性・常用性,正社員との同一
   性)
(B)従事する業務の種類・内容・勤務形態
(C)実際の更新の有無,回数,雇用年数
(D)更新回数,期間の上限の有無
(E)実際の契約更新手続の有無
(F)更新手続が形式的か,実質的か
(G)当事者の主観的態様(雇用継続の期待を持たせる言動・認識の有無と内容)
(H)同様の地位にある他の労働者の更新状況


【実質的に無期契約となっている場合の取扱】

実質的に無期契約となったと認められる場合,又は更新への期待権が生じるような 場合,単に形式的な期間満了の理由だけでは,更新拒絶は許されなくなります。な お,後者の場合は,合理的な理由の認定は緩やかとなるようです。

例えば,労働者に客観的に見て解雇を理由づけるだけの不始末があったり,成績の 著しい不良などが認められる場合が必要です。また,経営不振が理由の場合,整理 解雇に適用される四要件が必要となります。

(ア)人員削減の切実な事由があり
(イ)配転や一時帰休など他の方法がなく,解雇を回避するための努力を尽くした
   こと
(ウ)解雇対象者の選び方が公正・妥当である
(エ)労働組合,労働者に対して説明や協議を尽くしたこと

したがって,有期雇用契約であっても,更新が繰り返されればされるほど,また, 更新手続が形式的であればあるほど,事実上終了できない契約となり得ることを認 識しなければなりません。つまり,単なる有期雇用契約という形式を取ったからと いうだけの理由では,業務状況に応じて,会社の都合で自由に契約を終了できるわ けではありません。

例えば,有期雇用契約が無期雇用契約とみなされず,本来の無期雇用契約として扱 われるためには,上記(A)〜(H)等の判断要素を検討し,有期雇用契約に適し た職種を選択すること,契約期間を明示した契約書を期間満了ごとに作成し調印す ること,更新の都度業務内容や契約条件について話し合うなど実質的な更新手続が 求められると思われます。それでも,更新が繰り返されるならば,労働者の更新へ の期待が法的に保護されることとなり,更新拒絶には合理的な理由が必要となるこ とは認識する必要があります。



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