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 H18.02.05 パラメーター特許と実施例     

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ここでは,比較的最近の判例の紹介を通じ,ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。主な分野として,知的財産(特許,商標,著作権,不正競争防止法等),会社法,労働法,企業取引,金融法等を取り上げます。


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1 今回の判例  パラメータ特許と実施例
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平成17年11月11日 知財高裁特別部判決

今回問題となった特許は,液晶テレビなどの画面に使われる「偏光フィルム」の製造法についての特許です。出願した会社(A社)は,どのような性質を持つ素材を使うと性能の高いフィルムができるかの法則を新たに見つけたとして,いわゆる「パラメータ特許」を出願しました。

詳細は省略しますが,特許請求の範囲では,偏光フィルムの原反フィルムとして,熱水中での完溶温度(X)と平衡膨潤度(Y)との関係が,Y>−0.667X+6.73 及びX≧65で示される範囲のPVAフィルムを用いることが記載されていました。

このように,構成要件の少なくとも一つが、数式で示された数値範囲で特定されている特許は「パラメータ特許」といわれています。

この特許はいったんは登録となりましたが,他社の異議申立てによる特許庁の審判で2004年11月に取り消しとなりました。

特許庁は,明細書には4点(実施例2点、比較例2点)のデータしかなく,実施例が十分ではなないことから,二つの数式の規定範囲を満たすものすべてが偏光性能及び耐久性能が優れるいう根拠が不明であるから,請求項に記載された「特許を受けようとする発明」が「発明の詳細な説明に記載されたもの」とは認められないとしました。

これに対し,A社は,知財高裁においては,審判時に提出した10点(実施例8点,比較例2点)データを追加し,これによれば二つの数式の規定範囲を根拠づけられるのに,これを考慮しなかった特許庁の判断は不当であると主張しました。

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2 判決の概要
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【結論】 請求棄却

特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには,明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならない。

本件明細書の発明の詳細な説明における四つの具体例だけでは,当該数式が示す範囲内であれば,所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に,具体例を開示して記載しているとはいえ(ない)。

追加したデータは,本件明細書の発明の詳細な説明に具体的に開示されていないから,これを発明の詳細な説明の記載内容を記載外で補足するものとして参酌することは許されない。

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3 解説
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【特許請求の範囲と詳細な説明】

特許制度とは,産業の発達という目的から,発明を公開させることと引換に,当該発明に特許を付与して,一定期間その発明を独占するすることを保障する制度です。
そしてその発明の内容を明らかにする特許明細書は,「特許請求の範囲」と,「詳細な説明」からなっています。
そして,特許を受けるためには,詳細な説明に,その分野の技術者(当業者)がその発明を理解して実施できる程度に詳細に記載しなければならないことになっています。

それは,発明の詳細な説明に記載していない発明が特許請求の範囲に記載すると,公開されていない発明について独占的,排他的な権利が発生することになり,特許制度の趣旨に反することになるからです。


【パラーメータ特許の問題点】

平成6年の特許法改正により,パラメータにより特定された発明が増加してきました。しかし,このパラメータにより特定された発明に対しては,以下のような問題点がありました。

1)本来特許されるべきでない公知の物を含む特許請求の範囲が特許される

2)具体的開示に比して保護範囲が広すぎる

3)侵害の予測性が低い

今回のケースでも,このパラーメータを満たす立証資料が不足していることを理由として,つまり,発明の詳細な説明に記載していない発明が特許請求の範囲に記載されていないという理由で,特許として認めらないという判断が出ました。

また,特許庁は審査基準を改訂し,審査基準を厳しくしました。例えば,審査基準は以下のように述べています。

「請求項が特殊パラメータによる物の特定を含む場合においては,通常,当該特殊パラメータで表される具体的な物を想定できないことが多い。この場合,当該特殊パラメータによる物の特定以外には,明細書又は図面に記載された発明を適切に特定することができないことが理解でき,かつ,出願時の技術水準との関係が理解できる場合(例えば,同一又は類似の効果を有する公知の物との比較が示されている, 類似の構造を有する公知の物や類似の製法により製造される公知の物との比較が示されている等)を除き,発明の範囲は不明確である。」

【パラーメータ発明を特許出願する際の注意点】
そして,特許庁は,パラメータ発明において発明の範囲を明確にするために以下のようなことを求めています。

「請求項に特殊パラメータが記載されている場合は,その技術的意味が理解できる程度に,明細書中に当該パラメータの誘導過程や数値範囲を定めた理由(実験結果など)を記載することが必要と考える。例えば,特定の課題に対して顕著な効果を有する物質を『発見』し,その物質を分析した結果として,特定のパラメータと作用効果との間に相関関係があることを見い出して出願に及んだ場合等,出願時点で は望ましいパラメータの範囲が明確であるが, 各パラメータと効果との因果関係が理論的に解明されていないときであっても,豊富な実験例により,『特定のパラメータと作用効果との間に相関関係があることを見い出したこと』を示すことは可能と考える。」

したがって,特許庁の審査基準に適した十分な注意が必要です。

明細書においては,
(1)パラメータの意義を明確にすること
(2)出願する発明が,従来技術に対してどんな位置づけであるのかを明確にする
(3)パラメータを裏付けるだけの充分な数の実施例と比較例を詳細な説明に記載する
(4)そのパラメータにより特定される物の製造方法を記載する

などが重要な点となります。




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