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ここでは,当事務所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーなどから,比較的最近の判例の紹介と,ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。主な分野として,知的財産(特許,商標,著作権,不正競争防止法等),会社法,労働法,企業取引,金融法等を取り上げます。


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「原価セール」事件と営業秘密の保護
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H18. 2.27 知財高裁判決

あるドラッグストアAが,平成13年1月から5月にかけて「原価セール」を行いました。

具体的には,チラシに仕入価格を書き,さらに定価を書いた上で,仕入価格で(一部は仕入価格を下回る価格で),医薬品,健康ドリンクなどを売りました。

これに対して,医薬品メーカBは,ドラッグストアAとの取引基本契約等が解除又は解約しました。A社は,B社による解除の効果を争って,A社がこの取引基本契約上の当事者の地位にあることの確認を求めるとともに,同契約に基づいて,A社がB社に対し平成14年2月19日から同年3月2日にかけて発注した商品の引渡しを求めた訴訟です。

A社の行った「原価セール」が不正競争防止法又は独占禁止法・景品表示法に違反するか等が主たる争点となりましたが,平成16年2月13日になされた原判決は,いずれもこれを否定し,B社の行った取引基本契約の解除ないし解約はその効力を生じないとして,A社の請求をいずれも認める判決を出しました。

Aが行った「原価セール」ですが,果たして許されるのでしょうか。この問題は,独禁法等の問題も絡んでいますが,今回は不正競争防止法の問題に絞って検討します。

不正競争防止法に関する医薬品メーカB社の主張は,A社の原価セール行為が,不正競争防止法2条1項7号(営業秘密を漏らす行為)に違反する不正競争行為である,ということでした。

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 裁判所の判断
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知財高裁は以下のように判断しました。

営業秘密に関する不正競争防止法2条1項7号該当するためには
(1) その情報が営業秘密に当たること,
(2) 営業秘密の保有者からその営業秘密を示されたこと,
(3) 不正の競業その他の不正の利益を得る目的又はその保有者に損害を加える目的があること

を要する,と要件を示しました。

そして,B社商品の仕入価格(控訴人にとっての卸価格)は,A社とB社との合意によって定まるものであって,前記要件のうち(2)の「示された」に該当しない,と判断しました。また,(3)の要件も充足する証拠もないとしました。

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 解説
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【不正競争防止法】

 この法律は、事業者間の公正な競争等を確保するため、一定の類型の不正競争の防止について定め、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています。

この法律で禁じられている不正競争の類型の一部を挙げると,

1)他人の著名な商品等表示(氏名、商号、商標、その他の表示)と同一又は類似の表示を使用することによって、混同を生じさせる行為
2)他人の商品(最初の販売から3年までのもの)の形態を模倣した商品の,譲渡,輸出,輸入等をする行為

3)窃取,詐欺,強迫その他不正の手段により営業秘密を取得等する行為

4)商品や役務の広告,取引書類などに,原産地,品質用途,数量等の誤認をさせる表示をするなどの行為

5)競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知,流布する行為

などです。

今回問題となったのは,不正競争防止法2条1項7号で禁止の対象となっている「営業秘密を保有する事業者(以下「保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において,不正の競業その他の不正の利益を得る目的で,又はその保有者に損害を加える目的で,その営業秘密を使用し,又は開示する行為」でした。

今回,裁判所は,「仕入価格(卸価格)は,当事者間の交渉によって決まるものであるから,「営業秘密を示された」ものには当らないと判断しましたが,その判断自体はやむを得ないものでしょう。また,B社は,卸価格は,「商慣習により当然に秘密にすべき情報である」とも主張しましたが,裁判所はその主張も認めませんでした。確かに,卸価格の秘密の保護を,既存の法体系の中で求めることには困難があるものと思われます。

もっとも,ビジネス上,仕入価格を公表されると困る場合は当然に想定されます。ですから,そのような場合は,取引約定書,契約書等の中で,仕入価格を明らかにしないという明確な合意を結ぶことが賢明でしょう。

仕入価格に限らず,契約を結ぶ場合,出来る限りの考えうる事態を想定しておく必要があります。たとえ,合意がなされていなくとも他の法律で保護されるように思える場合も,契約書で,合意事項を明確にしておくことは,重要なことです。

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