製造物責任法(PL法)解説

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製造物責任(PL)の概要

製造物責任とは

 ある製造物に欠陥があり,そのために消費者が損害を被る,という場合があります。例えば,冷蔵庫を使用していたところこれが発火して,大怪我をする,ということがあるかもしれません。
 この場合に,メーカーが,直接,その消費者に対し無過失責任を負い,損害賠償責任を負う,これが製造物責任です。

PL法が制定された理由

 PL法が制定される前も,メーカーに損害賠償請求をすることはできました。
 従来は,民法709条等に定められた不法行為責任により損害賠償請求を行うことが通常でした。しかし,不法行為責任は,メーカーの過失があることが前提であり,かつ,消費者の側がメーカーの過失を立証しなければならないので,この点,消費者の側に大きなハードルとなっていました。
 PL法が制定された理由は,メーカーに原則として無過失責任を負わせ,消費者は,「製造物に欠陥があること」と「欠陥と被害との因果関係」を証明すればよいことになり,以上のようなハードルが解消され,消費者の保護をより容易にするためです。


対象となる製造物

製造物とは

 製造物責任の対象となる「製造物」とは何でしょうか。
 PL法2条1項では,「製造物」とは,「製造又は加工された動産」とされています。
 一般的には,「製造物」とは,何らかの人為的な操作や処理がなされ,引き渡された動産を対象とします。「製造」とは,部品又は原材料に手を加えて新たな物品を作り出すことであり,「加工」とは,物品に手を加えてその本質を保持しつつこれに新しい属性又は価値を付加することをいうものとされています。
 したがって,工業製品はまず「製造物」に当たるといって差支えないでしょう。未加工農産物については,製造物責任の対象とはなりませんが,例えば魚を加工して干物にすれば,その干物は「製造物」となります。
 また,不動産,電気,ソフトウェア,サービス(役務)等は,「動産」ではないので「製造物」には当たらないと解されるのが一般的です。


不動産はPL法の対象となるか

1)不動産は原則として対象外
 PL法は,動産を対象としたものですので,不動産は原則として対象となりません。
 それで,宅地造成や建物工事に欠陥がある場合,民法上の契約責任,瑕疵担保責任,土地工作物責任に基づいて損害賠償請求をすることになります。

2)不動産と動産の区別
 しかし,何が不動産なのか動産なのか,区別が困難なものもあります。
 一般には土地の定着物,石垣など土地に付着して土地からの独立性を失ったものは,動産とはいえないと考えられます。
 他方,不動産から容易に取外しができ,独立して取引の対象となるもの,足場,仮設物は定着物でないので動産として取り扱われます。
 また,窓ガラス,アルミサッシ,などの建具,冷暖房器,空調器等,建物の一部となった動産についても,引き渡された時には動産であるという考えから,PL法の対象となる可能性があります。


ソフトウェアはPL法の対象となるか

1)ソフトウェア単体の場合
 ソフトウェアだけの場合は,「動産」とはいえず,製造物責任の対象とならないというのが一般的です。
2)ソフトウェアが機械に組み込まれている場合
 他方,ソフトウェアが機械に組み込まれた場合には,動産として製造物責任の対象になるとされています。
 それで,埋め込みマイクロチップは製造物責任の対象となりうると解されています。また,ソフトウェアが組み込まれたマイクロチップが搭載された電気製品,機器などは,そのソフトウェアを格納している機器等が製造物であると考えられます。
3)プレインストールされたソフトウェアは?
 これについては,複数の説があり,明確ではありません。
 プレインストールによって製造物の一部となったと解する説,ハードウェアとソフトウェアのメーカーが同一であれば製造物責任法の対象になると考える説などがあります。
4)CD−ROMなどの媒体に記録されたソフトウェア
 プログラムが固定されているCD−ROM 等の媒体(メディア)自体の欠陥が,製造物責任の対象となる可能性はあります。しかし,そのソフトウェアの欠陥は製造物責任法の対象とはならないと考えられています。

「欠陥」とは何か

「欠陥」の意味

 PL法は,製造物に「欠陥」がある場合に製造者等に責任を負わせる法律です。
 PL法にいう「欠陥」とは,「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」(PL法2条2項)とされています。
 他方,製品の性能が低い,仕様どおり作動しない等があっても,それが安全性にかかわらない単なる品質とか機能上の問題であれば,PL法の「欠陥」とはなりません。


「欠陥」の種類

 欠陥を分類すると,次の3つの種類に分けられると考えられています。

1)設計上の欠陥
 製造物の設計段階の欠陥。この場合,その設計に基づき製造される製造物全体が安全性に欠けることとなります。

2)製造上の欠陥
 製造物の製造過程において,設計・仕様どおりに製造されず,安全面を欠くことになる場合です。例えば,食品の加工中に菌が混入した,組立に誤りがあった等です。

3)指示・警告上の欠陥
その製造物の性質自体から危険性が内在する製造物について,製造者が消費者に,事故を防止・回避するための適切な情報を与えなかった場合です。


欠陥の判断要素

 「通常有すべき安全性を欠いている」かどうか,どのように判断されるでしょうか。PL法によれば「当該製造物の特性,その通常予見される使用形態,その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情」を考慮するとされています。

1)当該製造物の特性
 例えば,ナイフで指を切った人が,そのナイフが鋭利であるから危険であって欠陥があると主張することは,通常はできません。それは,ナイフという製造物の特性上,鋭利な刃物でなければ意味がないからです。

2)通常予見される使用形態
 例えば,ナイフの例では,それをケンカの武器として使用することは,可能性として予見はできるものの,通常の合理的に予見される使用形態とはいえません。ですから,そのような使用によって怪我が生じても,安全性に欠けるとはいい難いといえます。
 他方,取扱説明書で用途を限定してあり,その用途外の使用方法がなされた場合であっても,合理的に予見しうる通常人の使用形態の範囲にあれば,PL法の対象となりえます。

3)その製造業者が当該製造物を引き渡した時期
 例えば,製造物の引き渡し時点の科学技術の水準では欠陥があるかどうか判りようがなかった場合等には,製造者側が責任を免れることがあります。


免責事由

 また,以上のような欠陥がある場合でも,PL法4条にる「免責事由」に該当するときは,製造者は責任を負いません。
 「免責事由」には,PL法4条1項の「開発危険の抗弁」,同条2項の「部品製造業者の抗弁」があります。なお,「免責事由」の立証責任は製造者側にあります。

1)開発危険の抗弁

 PL法は,この点の免責事由につき「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては,当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと」と定めています。
 すなわち,当該欠陥があるかどうか,製造物の引き渡し時点の科学技術の水準では,認識することが不可能だった場合,製造者側は責任を免れることになります。

2)部品製造業者の抗弁

 PL法4条2号は「当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において,その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ,かつ,その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。」を免責事由としています。
  例えば,自動車メーカーが,下請業者に部品を作らせる,という場合があります。この場合,部品の仕様や規格などはすべてメーカーが定め,下請業者は全くその仕様等に従って製作する,という場合があります。この場合,部品の欠陥が,メーカーの「設計に関する指示」に従ったことにより発生したものであれば,設計部分での欠陥に対する責任は免責されるということになります。
 ただし,この場合も,下請業者側に,欠陥が生じたことにつき「過失」がなかったことが必要となります。すなわち,下請業者側が,メーカーの設計又は指示どおり部品を製造すれば欠陥が生じることが予見できたはずなのに,注意を怠り,メーカーの指示に従って部品を製造した場合等は,下請業者に「過失」があったと認められ,下請業者は責任を負うことになります。


保護の対象となる被害者

 前述のとおり,PL法制定の主な趣旨は消費者保護です。しかし,製造物の欠陥により被害を受けた者であれば,消費者だけでなく,個人事業者,企業であっても,保護の対象となります。


責任を負う者の範囲

PL法2条3項には,誰が製造物責任を負うかについての規定があります。以下,簡単に解説します。

製造業者,加工業者

 PL法では,製造物の製造業者だけでなく,加工業者も責任を負います。
 つまり,完成品メーカーから材料の供給を受け,加工を行っている下請加工業者も,原則として責任を負います。


輸入業者

 製造物責任を負う者として注意が必要なのは,製造物を「輸入した者」も責任を負う点です。
 それで,製造や加工をしていない会社であっても,輸入した製造物については,製造物責任を負う可能性があります。
 この規定の趣旨は,被害者個人が直接,海外の製造業者に責任を追求することが困難であるため,とりあえず輸入業者が責任を負い,輸入業者は,製造上の責任について,海外の製造業者に責任を追求してゆけばよいという趣旨です。


表示製造業者

 PL法はまた,「自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名,商号,商標その他の表示をした者」も責任を負うとしています。
 例えば,OEM製品の供給先などがこれに該当すると考えられます。
 OEM製品の供給先は,供給元が製造する製造物を自社ブランドで販売することがほとんどですが,供給先が製造者としての外観を製品に付与しており,消費者は,供給先を信頼してその製品を購入します。それで,そのような信頼を保護すべきであるとの考え方から,製造物責任を負うことになります。
 また,PL法は,「当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者」も製造物責任を負うと定めています。この例とされているのは,プライベート・ブランドの販売業者等です。


修理業者

 単に修理したというだけでは,製造物責任を負うことはありません。
 しかし,修理業者であっても,もとの製造物を加工したと評価される程度にまで手を加える場合,加工業者として責任を負う場合も考えられます。


販売業者の責任

 単に製造物を販売したにすぎない販売業者は,製造物責任を負うことはありません。ただし,その販売業者が,その製造物を輸入した場合や,いわゆる表示製造業者にあたると認められた場合には,責任を負うことになります。
 また,以上は製造物責任の問題であり,民法上の瑕疵担保責任など,他の法律による責任を負う可能性があります。


製造物責任の内容

損害賠償責任の概要

 製造物責任とは,欠陥により,他人の生命,身体又は財産を侵害したときは,これによって生じた損害を賠償するという責任です。
 例えば,テレビが,その欠陥によって爆発し,ある人が大怪我をした場合,また,不幸にして亡くなった場合,また,爆発の結果,家が火事で燃えてしまった場合,人的物的損害について損害賠償責任を負うことになります。


損害賠償責任の範囲

1)相当因果関係
 事故と因果関係のある損害がすべて賠償されるわけではありません。一般的には,欠陥と「相当因果関係」のある損害を賠償すればよい,と考えられています。

2)その製造物のみに損害が生じたとき
 また,PL法では,「その損害が当該製造物についてのみ生じたとき」製造物責任は負わない,としています。例えば,テレビが爆発したが,たまたまそのテレビが破損した以外,損害が生じなかった,というとこは,製造物責任は負いません。
 この場合,テレビそのものについての責任追求は,民法に基づく瑕疵担保責任や債務不履行責任等によることになります。
 もっとも,テレビの爆発によって死傷,そのテレビ以外の財産上の損失が生じ,かつそのテレビが破損した場合は,そのテレビの破損そのものの賠償についても,製造物責任を追及できると考えられています。


損害賠償責任の期間

 PL法5条では,損害賠償を請求できる期間を以下のように定めています。
損害賠償責任を制限する特約の有効性

 例えば,メーカーが,取扱説明書や製品の表示などで,この製品については製造物責任を負わない旨や,製造物責任を負う期間を法律の定める期間より短く定める,ということがあるかもしれません。
 しかし,そのような記載どおりの効力は認められない,と考えられています。

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