取締役になれない場合
取締役の欠格事由 会社法331条は、主に次の場合(取締役の欠格事由)、取締役になれないとされています。
- 成年被後見人又は被保佐人
- 法人
- 会社法、証券取引法,破産法その他の一定の法律に定められた罪によって刑に処せられ、その執行を終わった日(又は執行を受けることがなくなった日)から2年を経過していない者
- 上記に定めた罪以外の罪によって禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者(又はその執行を受けることがなくなるまでの者)。ただし、この場合、刑の執行猶予中の者は含まれない。
したがって、成年後見を受けたりすると、これらは欠格事由ですから、当然に取締役の地位を失うことになります。仮に取締役としての登記が残っていたとしてもこれは無効の登記となります。
なお、改正前の商法では、破産者であることが欠格事由とされていましたが、会社法になり、欠格事由からは外されました。そのため、破産者であるというだけでは、取締役を辞任する必要はありません。
役員が他の会社の役員を兼務できるか 会社法には、取締役が他社の取締役を兼務することを禁止する規定はありませんし、実際、兼務する例は少なくありません。
とはいえ、独占禁止法には、以下のような規制がありますので、注意が必要です。独禁法13条1項は、他社の取締役を兼務することによって「一定の取引き分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、その役員の地位を兼ねてはならない」と定めます。また同条2項は、「自社と競争関係にある他社に対して、自社の取締役を兼務取締役として受け入れるよう強制してはならない」とも定めています。以上の規制にかからないよう注意する必要があります。
また、競争関係に立つ会社の取締役になることは、後に述べる忠実義務(自己又は第三者の利益を優先させ、会社の利益を犠牲にするようなことをしない義務)に違反する可能性もあります(この場合、取締役会の承認を得る必要がある)。
また、監査役の場合、会社法335条2項において、「監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。」と規定されています。したがって、取締役は、親会社の監査役も兼ねることができませんし、監査役は、子会社の取締役を兼ねることはできません。
なお、「親会社」「子会社」というのは、株式会社の場合、その発行済株式総数の過半数にあたる株式を有しているかどうかによって決まります。
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取締役の義務
取締役の義務〜代表取締役の業務執行に対する監督義務 代表取締役が、取締役会決議に基づかず、独断的に権限を行使する、といったことがあるかもしれません。この場合、他の取締役は、これを放置することはできません。取締役は、代表取締役の業務執行を全面的に監督する権限を有しているからです。
まず、他の取締役は、代表取締役の独断的業務執行に対して、取締役会を開き、代表取締役の独断行為を是正させるようにすべきです。さらには、取締役会において、代表取締役を、代表の地位から解任することができます(ただし、取締役そのものの地位を奪うには株主総会決議が必要)。
会社法によれば、代表取締役に限らず、各取締役が取締役会の招集権限を持っています(会社法336条1項本文)。しかし、定款又は取締役会で、取締役会の招集権限を持つ取締役が定められている場合(多くの場合、代表取締役でしょう。)、他の取締役はすぐに取締役会の招集ができません(会社法336条1項ただし書)。
この場合、他の取締役は、代表取締役(又は招集権限のある他の取締役)に対して、取締役会の招集を請求します。そして、この請求をした日から5日以内に招集権者たる取締役が取締役会を招集しないときは、招集の請求をした他の取締役が、取締役会を招集できます。
さらには、 法令又は定款違反行為が、取締役会決議に基づいてなされることがあるかもしれません。この場合、議案に反対し、かつ、議事録に異議がある旨を記載することが重要です。それは、違法行為が取締役会決議に基づきなされた場合、決議に賛成した取締役は任務を怠ったものと推定され、さらには議事録に異議があることを記載していなかった取締役は、
決議に賛成したものと推定され(会社法369条5項)、責任を追及されることになる場合があるからです(会社法423条3項3号)。
以上のような監督義務を果たさなかった場合、代表取締役の違法な業務執行について、その代表取締役のみならず、他の取締役が責任を負う場合があるので、注意が必要です。
会社役員の義務〜忠実義務 会社法355条は、「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
」と規定し、この義務を「忠実義務」といいます。この忠実義務の一つは、自己又は第三者の利益を優先させて会社の利益を犠牲にするようなことをしない、ということです。具体的には、取締役が他社の取締役となること自体は、原則として許されますが、もし他社の仕事に時間と労力を費し、自社の取締役としての職務に悪影響を及ぼすおそれがあるときは、忠実義務違反となる可能性があります。
そのほか、別に詳しく述べますが、忠実義務が考え方の基礎にある義務として競業避止義務、会社と取締役の取引の制限、その他会社と取締役の利益相反行為の制限、などがあります。
競業避止義務 会社法356条1項は、「取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。」と規定し、取締役が会社と競業するような取引を行なう場合を挙げています(会社法356条1項1号)。つまり、取締役は、取締役会が設置された会社では取締役会の承認を得なければ(会社法365条1項の規程により、同法356条の「株主総会」は「取締役会」と読み替えることになります)、又は、取締役会が設置されていない会社では株主総会の承認を得なければ、会社と競業するような取引を行えないのです。
この競業には、取締役が、自分で又は他の会社の代表取締役となって取引をするような場合のほか、他の会社の平取締役である場合や、「事実上の主宰者として他の会社を経営する」ことも含まれます。
会社と取締役の取引の規制 取締役と会社の利益が相反する行為を取締役が行う場合、取締役会の決議が必要です(会社法356条1項2号、会社法365条1項)。その一つが、会社と取締役の取引です。例えば、取締役が会社に自分の商品を売る(その逆も同様)、会社が取締役に金銭を貸し付ける、といったものです。
会社と取締役の利益相反行為の規制 会社と取締役の取引のほか、一般的に、会社と取締役の間に利益が相反する行為も、取締役会の決議が必要です(会社法356条1項3号、会社法365条1項)、。その例としては、会社が取締役の債務を保証する、いったことがあります。
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取締役の責任
取締役の会社に対する責任 取締役が、その任務を怠ったり、違法行為(総会屋に対する利益供与をすること、利益がないのに配当することなど)により会社に損害を与えた場合、会社に対して損害賠償の責任を負うことになります。
取締役の会社に対する責任を追求するのは誰か
会社が取締役の責任を追及する場合、会社法は、誰が会社を代表して訴訟を遂行するかを定めています。
- 監査役を設置している会社 監査役が会社を代表する(会社法386条1項)
- 監査役を設置していない会社 代表取締役が会社を代表する(会社法349条4項)
- 監査役を設置していない会社 株主総会で定めることができる(会社法353条)
- 取締役会を設置している会社 取締役会で定めることができる(会社法364条)
取締役の第三者に対する責任〜取締役は会社の債務の責任を負うか 株式会社又は有限会社が第三者に対して負っている債務については、取締役であるからといって、それだけでその取締役が、会社の債務を負うことにはなりません。それは、会社と取締役は、別個の存在だからです。
ただし、以下のような場合には、取締役が会社の債務を負うことがあります。
(1)取締役が、(連帯)保証している場合
ある場合取締役が(特に多くの場合代表取締役が)、会社の債務につき個人で(連帯)保証していることがあり、この場合、取締役が会社の債務について責任を負うことになります。
(2)取締役に職務執行につき故意又は重過失がある場合
取締役がその職務を行うにあたって故意又は重過失があったときは、その取締役は、第三者に対して、損害賠償の責任を負う場合があります(会社法429条)。これは、取締役が貸借対照表、損益計算書、営業報告書等に虚偽の記載をし、又は虚偽の登記・公告をしたときも同様の責任です(会社法429条2項1号イ〜ニ)。
実務上、会社が倒産した場合に、取締役の責任を追及する場合、取締役のこの責任を根拠とすることがあります。例えば、支払の殆ど不可能な手形を濫発した、粉飾決算をしていた、などが問題になることがあります。手形濫発の問題は、ここをクリックしてください。
また、この職務執行についての故意又は重過失は、代表取締役ではない取締役の、代表取締役に対する監視義務違反にもあてはまることがありますので、注意が必要です。
手形濫発の上の倒産 経営が悪化して資金繰りが苦しくなってくると、手形を濫発してその場をしのぎ、最終的に会社が倒産する、というケースがあります。この場合、代表取締役が、倒産によって損害が発生した第三者に対し、責任を負うことがあります。
会社法429条1項では、取締役が「職務を行うについて悪意又は重大な過失」があり、その結果第三者に損害が発生した場合、その損害賠償責任を負うことになります。具体的に、どんな場合に故意、または重過失が認められるのかは、ケースバイケースです。
手形の発行についていえば、一般的には、通常の経営者の見方に立った場合、その金策の方法が合理的な選択といえる範囲内のものかどうか、ということが考え方の一つです。そして、経営がひっ迫してくれば、通常の経営者であっても、ある程度リスクを承知の上で、やや危険な金策でもせざるをえなくなりますから、この場合、合理的な選択の範囲は平時よりは広がるといえます。
いずれにせよ、金策の理由、手形を振り出す必要性の有無、振り出した手形の枚数・金額などを総合的に考え、それでもなお濫発といえるほど、手形を繰り返し振出しているときは、代表取締役として職務執行に重過失があると判断される可能性があります。
名目的役員の責任は? 親戚、友人から、会社の取締役の数が足りないので、取締役に就任して欲しい、報酬は支払えないが名義だけ貸してほしい、取締役会に出席する必要もなく、迷惑をかけない、と言われることがあるかもしれません。では、本当に何の責任も生じないのでしょうか。
結論的には、責任を負う可能性は十分にあります(最高裁昭55・3・18判決)。それは、報酬をもらっているかどうかに左右されません。取締役には、取締役会に出席し意見を述べる権利と義務があり、さらには代表取締役ではなくとも取締役会を開催を求めることができるなど、大きな権限があります。他方、そのような権限があるため、代表取締役を監視し、会社の業務が適切になされるよう注意する義務があります。
そして、このような義務に反し、会社や第三者に損害を与えるなら、ある場合には、会社又は第三者に対し、損害賠償責任を負うことになります。そして、この場合、過去の判例によれば、代表取締役が勝手にやったとか、名前だけ貸してくれと言われた、という言い訳が通らないことも多数あります。ですから、取締役になるかどうかは、そのような重い責任があることを前提の上、慎重に考える必要がありますし、いったん就任する以上、その義務を果たす必要があります。
特に経営状態や経営内容について悪い風評が立っているときは、そのまま放置せず、取締役会に出席したり、今まで取締役会が開かれたことがなければ会社に取締役会の召集を要求したりすべきです。そして、代表取締役の行為を是正する意見を述べ、それを取締役会の議事録に残すなど、職務を果たしたことを立証できるようにしておくべきでしょう。
取締役の責任軽減
取締役の会社に対する損害賠償責任については、原則として株主全員の同意がなければ免除できません(会社法424条)。しかし、この原則を貫くと、株主代表訴訟などで高額な損害賠償が請求されるなどのリスクから、経営が萎縮してしまう可能性が生じます。
そのため、会社法は、一定の範囲で責任の減免について定めています。
<必要な手続>
1) 株主総会において、次の事項を開示し、株主総会の特別決議によって軽減できます(会社法425条)。
- 責任の原因となった事実及び賠償の責任を負う額
- 免除することができる額の限度及びその算定の根拠
- 責任を免除すべき理由及び免除額
2)定款に定めがあり、特に必要があると認められる場合に限り、取締役会決議(取締役会設置会社の場合)又は取締役の過半数の同意(取締役非設置会社の場合)による免除も可能(監査役設置会社又は委員会設置会社に限る。会社法426条)。ただし、その決議後の公告によって、総株主の議決権の100分の3以上を有する株主が異議申立期間内(1か月以上)に異議を述べた場合などには、免除はできません(会社法426条3項、5項)。
3)定款によって、社外取締役との間で、事前に責任限定契約をすることができます(会社法427条)。
詳細は、会社法の規定をご覧ください。
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取締役会の権限と責任
取締役会とはどのようなものか 取締役会は、会社の業務執行に関する意思決定を行い、代表取締役の職務執行を監督する株式会社の機関です(会社法362条以下)。
新会社法になる前の商法においては、取締役会は株式会社には必ず設置すべきものでしたが、新会社法においては、取締役会を設置しなくてもよい場合が定められました。
会社法は、次のような事項については、取締役会が決定すべきものと定め、特定の取締役に、決定を委ねることはできません(会社法362条4項)。
(1)重要な財産の処分及び譲受 詳細
(2)多額の借財
(3)支配人その他重要なる使用人の選任及び解任
(4)支店その他の重要なる組織の設置、変更及び廃止
(5)その他会社法362条4項に定めるもの
(6)その他重要な業務執行の決定
です。
取締役会を置く必要がある会社 取締役会を置く必要のある会社は、以下の会社です(会社法327条1項)。したがって、多くの中小会社は、今後は取締役会を設置する必要はなくなりますが、新会社法制定前から存在している株式会社は、従前どおり取締役会を置いたままとなるところが多いものと推測されます。
1 公開会社
2 監査役会設置会社
3 委員会設置会社
取締役会の招集権限 取締役会の招集権については、定款又は取締役会で招集権者を定めている場合はその定めにより、多くの会社では代表取締役と定められていますが、そのような定めがなければ、原則として、各取締役にその権限があります(会社法336条1項本文)。しかし、取締役会で招集権者を定めていても、他の取締役は、取締役会の招集を請求することができます。
取締役会の招集通知については、原則として会日より1週間前(定款でさらに短縮も可能)に、各取締役及び監査役に対して通知を発することを要しますが、定款をもってその期間を短縮することができますし、取締役及び監査役の全員の同意がある場合には、招集通知を省略することができます。
一部の取締役又は監査役への招集通知が漏れた場合、これによってその取締役が出席せず決議がなされたとき、その決議は原則として無効となると解されています。それは、取締役会は、単に多数決で決める会議ではなく、出席者が意見を出し合い、討論を行うことで、会社の合理的意思決定が実現される、とするのが会社法の趣旨であり、取締役の全員に出席の機会を確保することが、会社にとって重要だと考えられるからです。
ただし、その取締役会の決議が無効となったとしても、第三者との取引行為については、原則有効となります。そして、その第三者が、その取締役会の決議が無効であると知っていた、又は、重過失により知らなかった場合に限り、会社は取引の無効を主張することができます。
取締役会の決議 決議は、原則として、取締役の過半数が出席し、その出席取締役の過半数の賛成が必要です(会社法369条1項)。この定足数又は議決数
を重くすることはできますが、定款の規定をもってしてもこれを軽くすることはできません。
取締役会においては、議事録を作成しなければなりません。議事録に何を記載するかは、ここをクリックしてください。
新会社法では、定款で、決議を省略できる場合がある旨定めることができるようになりました(会社法370条)。すなわち、定款に規定を置けば、取締役会における決議目的たる提案を、取締役の全員が書面又は電磁的記録(電子メール等)により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社の場合は、さらに監査役が異議を述べないとき)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすことができます。これによって、多くの中小会社では、実態にあった意思決定ができるようになりました。
取締役会の議事録への記載事項 会社は、取締役会議事録を作成し、10年間本店に備え置く義務があります(会社法371条1項)。株主は、株主としての権利行使のために、議事録の謄写閲覧を請求することができます(会社法371条2項)。同様に、会社に対する債権者も、会社役員の責任を追及するために必要な場合、裁判所の許可があれば、議事録の閲覧謄写を請求することができます(会社法371条4項)。
取締役会議事録には、一般的には、以下のような事項を記載します。
(1)開催日時・開催場所
(2)出席取締役及び出席監査役
(3)議事の経過の要領及び結果(決議の結果)
会社財産の処分のうち、取締役会決議を必要とするものは? 会社法362条4項1号で、取締役会の決議を経なければならない「重要なる財産の処分及び譲受」とは具体的にどのようなものでしょうか。
判例は、重要な財産の処分に当たるか否かの基準として、(1)当該財産の価格(2)会社の総資産に占める割合(3)保有目的(4)処分行為の態様(5)会社における従来の取扱い等、を総合的に考慮して判断するとしています。
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監査役の職務、義務、責任
監査役とは? 監査役の職務は、取締役の職務の執行を監査することにあります(381条1項)。
監査役を置く必要がある会社 監査役を置く必要のある会社は、取締役会設置会社及び会計監査人設置会社(いずれも委員会設置会社を除く。)です(会社法327条2項、3項)。ただし、取締役会を設置した会社であっても、会計参与を置いた非公開会社であれば監査役は不要です(会社法327条2項ただし書)。
監査役の権限 監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査します(会社法381条1項)。具体的には以下のようなことを行うことができます。
- 監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます(会社法381条2項)
- 監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます(会社法381条3項)
- 必要があると認めるときは、取締役(または招集権のある取締役)に対し、取締役会の招集を請求することができ、招集がない場合、自ら招集ができます(会社法383条2、3項)。
- 取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます(会社法385条)
- 会社が取締役(取締役であった者を含む)に対し、又は取締役が監査役設置会社に対して訴えを提起する場合には、当該訴えについては、会社を代表します(会社法386条)
監査範囲の限定 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、定款で、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定めることができます(会社法389条)。
従業員は監査役になれるか 会社法335条2項は、監査役が、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。と規定しています。したがって、従業員を監査役に兼務させることはできません。
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株式と株主
株式の譲渡は自由か? 株式の譲渡は、原則として自由です(会社法127条)。しかし、会社法では、定款で、株式の譲渡について取締役会の承認が必要とする旨を定めることができ、多くの中小会社は、そのような定めを置いています。したがって、会社にとって望ましくない者が株主となることを防止することができます。
しかし、株主が死亡し、株式を相続する場合、取締役会の承認は不要です。
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株主総会
総会開催の方法
株主総会は、後に述べる例外を除き、書面で行うことはできず、実際に開催しなければなりません。なお、出席できない人には株主総会の招集通知に委任状を添付し、委任状を提出してもらうこともできます(会社法310条1項)。委任状についての注意事項は、ここをクリックしてください。
総会開催の決議の省略(書面による同意)
新会社法では、決議を省略できる場合がある旨定めることができるようになりました(会社法319条)。すなわち、株主総会における決議目的たる提案を、株主の全員が書面又は電磁的記録(電子メール等)により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなすことができます。これまで、多くの中小会社では、株主総会を開く手間等から、実際に開かないのに開いたことにして議事録だけを作成するような運用が多くみられましたが、この規定によって、実態にあった意思決定ができるようになりました。
株主総会開催の手順 定時株主総会の開催については、会社法は、毎事業年度の終了後一定の時期に召集する事を定めています(会社法296条1項)。多くの場合、定款に「決算期の後2ヶ月以内に開催する」などと定められていますので、それに従います。
(1)株主総会招集の決定
- 取締役会設置会社の場合、取締役会を開き、株主総会招集を決定します(会社法298条4項)。取締役非設置会社の場合、各取締役が招集できます。
- 議決によって、開催日時・場所・議題・提出議案・書類を決めます。詳しくは、ここをクリックしてください。
- 貸借対照表、損益計算書、営業報告書、利益・損失処分案と、それらの付属明細書を添付します(会社法437条)。監査役設置会社では、監査報告書も必要です。
- 開催場所は、旧商法第233条の規定では、本店(本社)の所在する市区町村か、隣接する市区町村に限られていましたが、会社法においてはどこでも開催可能になりました(298条1項1号)。しかし、株主総会の開催場所があまりに遠方の場合、理由説明を要する場合があります(会社法施行規則63条)。
- 開催場所に関していえば、一部の役員、株主がいわゆるテレビ会議システムなどによって株主総会に出席することも可能と解されています(会社法施行規則72条3項1号)。
(2)株主への招集通知
- 取締役会設置会社の場合など一定の場合、書面で招集の通知をします(会社法299条2項)。あらかじめ所定の承諾があれば、電子メール等による通知も可能です(会社法299条3項)。取締役会非設置会社では、原則として、招集の方法は書面である必要はありません。
- すべての株主の同意があれば、一定の場合を除き、株主総会の招集手続きを省略することができます(会社法300条)。
- 通知は、原則として総会開催日の2週間前までに発送しなければなりませんが、非公開会社であれば1週間前までで足ります(例外あり)。また、会社が取締役会非設置会社である場合、定款でさらに短縮できます(会社法299条1項)。
(3)総会の準備
- 想定問答集の作成:株主からの生じうる質問を想定し、適切な回答ができるよう予め準備し、想定問答集を作っておくことも場合によっては有益でしょう。各部署が予想される質問についての回答を作成し、総務部長がまとめる、といった手順がとれます。
- 会場の確保:会場は会社やホテルの会議室など、株主全員が入れる場所を確保します。
- 会場の場所は制限がありませんが、本店の所在地か多くの株主が出席しやすい場所がよいと思われます。
(4)議事進行
- 定款で指定された者、指定されていなければ総会で選出された者が議長となって議事を進めます。
- 計算書類に基づいて代表取締役が決算報告、営業報告をし、質疑応答をします。質問に関する詳細は、ここをクリックしてください。
- その後、決算、利益処分案の承認など、決議事項を諮り、決議を受けます。
- 動議が出た場合の対応は、ここをクリックしてください。
- 新役員の選出が議題としてあがっている場合、候補者を紹介して選任決議をします。
- 議事がすべて終了すると、議長が閉会を宣言します。
(5)議事録の作成と保存
株主総会を行えば議事録を作成しなければなりません。なお旧商法では、議長・出席取締役が署名、捺印する必要がありましたが、新会社法では不要となりました。また、議事録は電磁的記録をもって作成することも可能です(会社法施行規則72条2項)。
株主総会議事録の記載事項については、会社法施行規則72条3項に詳細に規定しされています。旧商法下での株主総会議事録と比較すると記載すべき事項が増加しており、会社法に基づいて株主総会議事録を作成する際には、記載事項に漏れのないようにする必要があります。議事録記載事項の一部を挙げると次のとおりです。
- 株主総会が開催された日時及び場所(当該場所にいない取締役、株主等が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
- 株主総会の議事の経過の要領及びその結果
- 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称
- 株主総会の議長が存するときは、議長の氏名
- 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
- 会社法に定められた一定の内容について、株主総会において述べられた意見又は発言の概要
議事録は、本店に10年間、支店に写しを5年間、議決権行使の代理委任状及び議決権行使書を本店に3ヶ月備え、株主と会社債権者の請求があれば、閲覧・謄写させなければなりません(会社法318条、310条6項、311条3項、312条4項)。
株主総会招集通知にはどんな事項を記載しますか。 開催日時・場所・議題・提出議案・書面投票ができる旨を定めるときは所定の事項を記載し(詳しくは会社法施行規則63条)、必要書類を添付します。
議題は、一般的には、株主が、招集通知を見て、総会で何が決議されるかが分かる程度に記載することが必要で、かつそれで足ります。例えば、「利益処分案承認の件」、「退任取締役に対する退職慰労金贈呈の件」等と記載します。
しかし、一部の重要な事項は、議題のほか、議案の要領を記載することが必要です。つまり、単に何が決議されるかだけでなく、議案の中身(いかなる行為をするか、いかなる変更がなされるか)を具体的に記載する必要があります。主なものを挙げると、以下のとおりです(会社法施行規則63条7項)。
- 役員等の選任
- 役員等の報酬等
- 会社法法第199条3項又は第200条第2項に規定する場合における募集株式を引き受ける者の募集
- 会社法第238条第3項各号又は第239条第2項各号に掲げる場合における募集新株予約権を引き受ける者の募集
- 事業譲渡等
- 定款の変更
- 合併
- 吸収分割
- 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継
- 新設分割
- 株式交換
- 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得
- 株式移転
株主総会に際して株主から委任状をもらう場合、どんな点に注意すべきですか。
会社法上、以下のような規制がなされています。
- 原則として、委任状は総会毎に会社に提出されなければなりません(会社法310条2項)。
- 議決権の代理行使があった場合には、会社は、総会終結の日から3か月間、委任状を本店に備え置かなければならず、株主の閲覧・謄写に応じなければなりません(会社法310条6項)。
株主からの動議への対応 株主総会において、株主から動議が出されました。どのように対応すべきでしょうか。
動議とは、株主及び議長が、株主総会の目的事項又は総会運営などに関して、総会の決議を求める意思表示です。したがって、株主から決議を求められた事項が、株主総会の目的事項又は総会運営の事項に当たるのかどうかを判断しなければなりません。
例えば、議長交替の動議がなされる場合があります。これは、議事進行を妨害する目的でなされることも多いのですが、議長の交替も総会運営に関する事項すから、無視することはできません。
この場合、議長は、まず、審議に付するかどうかを総会に諮った上で、賛成多数の場合、議長交代の動議を審議します。
他方、総会運営に関しないことであり、かつ、本総会の目的である議題に関係がない事項について議題とすることを求める場合、違法な動議として、議長の判断で総会の審議に付さないことができます。
例えば、最終決算の承認、利益処分案の承認が議題とされていた総会において、取締役解任の動議がされても、招集通知に記載されていない以上、決議を行うことはできません(決議取消の理由になる。ただし、総会に株主全員が出席しているときは可能)。
株主の質問権と役員の説明義務 株主総会に、反対派の株主が出席し、嫌がらせとしか思えない質問が出る可能性があります。どのように対処したらよいでしょうか。
一般に、取締役、監査役には、株主総会において株主から説明を求められた事項につき説明をする「説明義務」があります。他方、株主には「株主の質問権」があります。
したがって、株主の質問を全く無視することはできません。とはいえ、以下のような質問には、答える必要はありません。
総会での説明義務、質問権の趣旨は、議案について株主が判断するための材料を提供するためです。したがって、この議案と無関係な質問には答える必要がありません。
- 株主の共同の利益を著しく害するとき(会社法施行規則71条2号)
株主総会は公開の議場で行われます。それで、企業秘密に属する事柄、例えば、研究開発中の製品に関する機密情報に属する質問、生産コストや販売原価などの営業機密に属する質問等に答える必要はありません。
- 回答に調査を要するとき(会社法施行規則71条1号)
調査を要するような質問は、事前に書面で提出しなければなりません。事前の質問の提出がなく、総会で質問が突然調査を要する質問が出た場合、答える必要はありません。
- 株主が当該株主総会において実質的に同一の事項について繰り返して説明を求める場合 (会社法施行規則71条3号)
同じ質問に繰り返して説明する必要はありません。
- その他、説明しないことに正当な事由のあるとき(会社法施行規則71条4号)
上記のほか、質問がもっぱら議事の妨害を目的としてなされたような場合など、答えないことに正当な理由がある場合も、回答する必要はありません。
株主総会の効力を争う方法 株主総会の審議と採決の手続に違法な点がある場合、その効力を争う方法がありますか。
大きく分けると、株主総会決議取消の訴え、決議不存在及び決議無効確認の訴えのいずれかによって、争うことができる場合があります。
決議取消の訴え 会社法831条に定められています。決議取消の訴えを起こすことのできるのは株主、取締役、監査役などで、決議の日から3か月以内に訴えを提起しなければなりません(会社法831条1項)。
この訴えの対象は
- 株主総会の招集や決議の方法が、法令又は定款に違反している、または著しく不公平である(一部の株主に対して招集通知をしないで開催した、取締役が説明義務を果たさなかった等)
- 決議の内容が定款に違反するとき(法令違反は無効確認訴訟の対象となる)
- 特別利害関係ある株主が議決権を行使して、著しく不当な決議がなされた場合
ただし、手続に何らかの法令又は定款違反が認定されても、裁判所が、その違反が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさないと判断したときは、請求を棄却する場合もあります(会社法831条2項)。
決議無効確認の訴え 会社法830条2項に定められている訴えです。この訴えは、提訴できる人、提訴期間に制限はありません。株主総会の手続には問題はないものの、決議の内容自体が法令に違反する場合は、決議は無効となり、決議無効確認の訴えによって、無効であることを確認できます。
決議不存在の訴え 会社法830条1項に定められている訴えです。この訴えは、提訴できる人、提訴期間に制限はありません。これは、手続上の欠陥があり、株主総会が存在したとはいえないような重大な場合の訴えです。例えば、招集通知を出すべき場合で、株主のほとんどに招集手続通知を出さず、ほんの少数の株主だけで決議したような場合が考えられます。
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会社役員の報酬
取締役の報酬の定め方 会社法は、取締役の報酬額につき、定款で定めている場合を除き(通常定款で定めることはありませんが)、株主総会の決議で定める、と規定しています(会社法361条1項)。
「報酬」は、取締役の職務執行の対価であれば、また金銭で支払われるものに限りません。例えば、会社の取締役に対する貸金などの債権放棄、会社が取締役の債務を無償で引き受けること、社宅の無償供与等も報酬に含まれます。
しかし、株主総会の決議で、個々の取締役一人一人別個にその人の報酬額を定める、というやりかたをしている例は多くありません。通常は、取締役全員の報酬の総額を「○○万円以内」と定め、個々の取締役への配分額は、取締役会の決議に一任する、という決定をすることが普通です。さらに、取締役会は、個々の取締役への配分を代表取締役に一任することもできると考えられています。
取締役の賞与の定め方
取締役に対する賞与、会社の経費ではなく、会社の利益の分配として支給されるものです。それで、会社の利益処分案に、総額を記載し、定時株主総会の承認決議を得なければなりません。
個々の取締役への具体的な配分について、株主総会が取締役会に、取締役会が代表取締役に一任できると考えられています。
取締役の退職慰労金の定め方 取締役が退職時に会社から受け取る退職金を、通常、退職慰労金といいます。退職慰労金は、一般的には、在職中の職務執行に対する対価としての性質をもつものと解され、これを支払うためには、定款または株主総会の決議によることが必要です。
報酬、賞与と同様、株主総会では、総額を「○○万円以内」とを定め、退職する個々の取締役への具体的な配分は、取締役会に一任することができます。また、会社に一定の支給基準に従って役員退職金を支払うという内規がある場合、株主総会が、かかる内規に従って相当な額の退職金を支払うべきことを取締役会に一任する、という決議をするだけでも足ります。
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会社役員の辞任、解任
いつ辞任はできるか? 取締役が辞任したい場合は、会社に対し、辞任したい旨の意思表示をすれば、辞任の効力が生じます。会社代表者の承諾を得る必要はありません。辞任の意思表示は口頭でもよいですが、通常は、辞任しようとする取締役が代表取締役に辞表を提出します。
ただし、その辞任が、会社のために不利な時期になされた場合は、会社の損害を賠償しなければなりませんが、取締役にとってやむを得ない事由があるときは損害賠償の責任はありません。
では、会社の代表取締役自身が辞任したい場合はどうするかですが、他にも会社の代表者がいるときはともかく、そうでない場合は、まず取締役会を開いて後任の代表者を選任し、同時に辞任することになります。
辞任後、第三者への責任を負わない方法 注意しなければならないのは、辞任通知が会社に到達すれば、会社に対しては、取締役辞任の効力は生じますが、第三者に対する関係においては、取締役の辞任について、退任の登記をしないと、辞任したことを知らない第三者に対しては「自分はすでに取締役を辞任している」と主張することができない、ということです。
通常、退任の登記は、代表取締役が、証明書類を添付して法務局に申請します。しかし、代表取締役が、退任の登記手続に協力してくれないことも多いでしょう。
この場合、裁判所に訴訟を提起し、判決を得て変更の登記をすることができます。また、訴訟が終わるまでに、問題が生じる可能性があり、第三者からの責任を追及される可能性があるならば、訴訟のほか、取締役を辞任している事実をその第三者に通知しておくことができます。
以上に加え注意しなければならないのは、会社法は、ある取締役の辞任によって、取締役の最低人数を欠く場合(例えば取締役が3人いるところで、1人が辞任するような場合)、辞任した取締役は、新たに選任された取締役が就職するまでの間、取締役としての権利義務を有すると規定していることです(会社法364条1項)。なお、このような取締役を権利義務承継取締役と呼んでいます。つまり、権利義務承継取締役は、会社との関係では役職を辞していても、取締役としての職務権限、取締役としての義務が残ります。
役員を解任する方法は? 取締役に不正行為があったり、能力不足のため、その取締役を解任したいと考える場合は、考えられます。
まず、代表取締役を解任し、平取締役にするだけであれば、取締役会で行えます。他方、取締役そのものから解任するためには、株主総会を開き、その取締役に対する解任決議をする必要があります(会社法339条1項)。
株主総会での解任決議は、定時株主総会で行うこともできます。しかし、定時株主総会がまだ先であり、すぐに解任したい場合、臨時株主総会を開いて、取締役の解任決議をする必要があります。
役員を解任するための理由は必要か? 取締役の解任は、理由があってもなくても、いつでも株主総会で解任することができます。
ただし、正当な理由なく解任した場合、会社は、解任によって解任された取締役に発生した損害を、賠償しなければなりません(会社法339条2項)。
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