景表法~優良誤認表示の規制

優良誤認表示とは

優良誤認表示の規制の概要

 景表法4条1項1号は、「商品又は役務の品質、規格その他の内容」について、一般消費者に対し、「実際のものよりも著しく優良である」などと示し、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」に該当する表示を禁止しています(優良誤認表示の禁止)。

優良誤認表示の疑いがある場合の消費者庁の措置

 景表法4条2項によれば、このような優良誤認表示の疑いがある場合に、消費者庁は、その表示を行った事業者に対し、その表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、事業者が一定期間内に当該資料を提出しないときは、その表示が優良誤認表示であるとみなされ、排除命令の対象となる、と定められています。

 また、資料の提出期限については、公正取引委員会が資料の提出を求める文書を送達した日から、原則として、15日後とされています(不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の規定による資料の提出要求の手続に関する規則2条)。

 この規定の趣旨は、公正取引委員会による優良誤認行為の立証にかかる時間を短縮し、合理的な根拠がなくなされている優良誤認表示に対する迅速な規制を実現できるようにすることにあります。

資料が「合理的根拠」となるための要件

 では、どのような資料があれば合理的根拠と判断されるでしょうか。この点、「不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針(不実証広告ガイドライン)」は、景表法4条2項の「合理的な根拠を示す資料」といえるためには、以下の要件を求めています。

ア 提出資料が客観的に実証されたものであること
イ 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

 以下、各要件についてもう少し詳細を見てみます。

提出資料が客観的に実証されたものであること

 客観的に実証された内容のものとは、次のいずれかに該当するものであるとされます。

(1) 試験・調査によって得られた結果
(2)専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献

 以下、各項目について詳論します。

「試験・調査によって得られた結果」
試験・調査の方法

 まず、「試験・調査によって得られた結果」については、以下のいずれかの方法で実施する必要があります。

  • 表示された商品・サービスの効果、性能に関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法
  • 学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合には、社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法
試験・調査の主体

 当該事業者とは関係のない第三者(国公立の試験研究機関等の公的機関、中立的な立場で調査、研究を行う民間機関等)である場合、その試験・調査は、一般的には客観的なものであると考えられます。

 しかし、上記いずれかの方法で実施されている限り、当該事業者が行った試験・調査であっても、当該表示の裏付けとなる根拠として提出することも可能であるとされます。

消費者の体験談やモニターの意見等

 消費者の体験談やモニターの意見等を表示の裏付けとなる根拠にする場合、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されている必要があるとされます。

 また、どの程度のサンプル数であれば統計的に客観性が確保されたものといえるかについては、商品・サービス、表示された効果、性能の特性、表示の影響の範囲及び程度によってケース・バイ・ケースに判断しますが、少なくとも、学問上又は関連する専門分野において、客観的な実証に耐える程度のものである必要があるとされます。

 また、以下の各点に留意する必要もあります。

  • 自社の従業員・その家族等、その他利害関係者の体験談を収集して行う調査のみでは、客観的に実証されたものとは認められない。
  • 積極的に体験談を送付してくる利用者以外の体験談を送付しなかった利用者の意見を調査せず、一部の利用者から寄せられた体験談のみをサンプル母体とする調査は、無作為なサンプル抽出がなされた統計的に客観性が確保されたものとはいえず、客観的に実証されたものとは認められない。
  • 広い地域で販売する商品につき、一部の地域において少数のモニターを選定して行った統計調査は、サンプル数が十分でなく、統計的に客観性が確保されているとはいえない。
専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献

 この点、当該見解又は学術文献が次のいずれかであれば、客観的に実証されたものと認められます。

  • 専門家等が、専門的知見に基づいて当該商品・サービスの表示された効果、性能について客観的に評価した見解又は学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの
  • 専門家等が、当該商品・サービスとは関わりなく、表示された効果、性能について客観的に評価した見解又は学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの

 また、以下の点に留意する必要があります。

専門家等が存在しない分野等

 当該見解が、特定の専門家等による特異な見解である場合や、又はある文献が画期的な効果・性能等や、新しい分野に関するものであって当該専門分野において一般的には認められていない場合は、その専門家等の見解や学術文献は客観的に実証されたものとは認められません。

 この場合、事業者は、試験・調査によって、表示された効果、性能を客観的に実証する必要があります。

古来からの言い伝え等

 試験・調査によっては表示された効果、性能を客観的に実証することは困難であるものの、古来からの言い伝え等、長期に亘る多数の人々の経験則によって効果、性能の存在が一般的に認められているものについては、当該経験則につき、専門家等の見解又は学術文献によってその存在が確認されている必要があるとされます。

表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

 すなわち、表示された効果、性能が、提出資料によって実証された内容と適切に対応している必要があります。

 なお、ここでいう「表示された効果、性能」とは、文章、写真、試験結果等から引用された数値、イメージ図、消費者の体験談等を含めた表示全体から一般消費者が認識する効果、性能をいいます。

 したがって、文章を長時間をかけてくまなく丹念に読みこめば提出資料によって実証された内容と適切に対応していないとはいえないものの、表示全体から一般消費者が認識する効果、性能に照らすと、資料の内容と対応していないというケースもありえます。

 不実証広告ガイドラインに挙げられた例を引用すると、以下のようなものがあります。

「食べるだけで一か月に五kg痩せます」との見出しに加え、「○○大学△△医学博士の試験で効果は実証済み」との専門家による評価があることを表示することにより、表示全体として、食べるだけで一か月に五kgの減量効果が期待できるとの認識を一般消費者に与えるダイエット食品について、事業者から、美容痩身に関する専門家の見解が提出された。
しかしながら、当該専門家の見解は、当該食品に含まれる主成分の含有量、一般的な摂取方法及び適度の運動によって脂肪燃焼を促進する効果が期待できることについて確認したものにすぎず、食べるだけで一か月に五kgの減量効果が得られることを実証するものではなかった。
したがって、表示全体として、食べるだけで一か月に五kgの減量効果が期待できるとの認識を一般消費者に与える表示と、提出資料によって実証された内容が適切に対応しているとはいえず、当該提出資料は表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められない。

商品販売開始前からの資料準備の必要性

 以上のとおり、ある商品の販売を行うに際し、その性能や効果等をうたった表示をする場合には、その販売開始前にその合理的根拠を示す資料を確保しておく必要性は高いといえます。

 そもそも、商道徳・ビジネスモラルの観点からも、実証されていない効果を表示することは問題がないとはいえないでしょうが、既に述べたとおり、公正取引委員会から資料の提出を求められてからはじめて準備しようとしても、15日という期間では短かすぎるからです。

 そして、合理的な根拠を示す資料を提出できないときには、その表示が実際には正確な表示だとしても、優良誤認表示とみなされ、排除命令の対象となってしまいます。また、その排除命令が公表・報道される場合には、自社の評判にも大きな影響が生じかねません。ですから、この点十分な注意が必要であると考えられます。

 


本稿は執筆途中です。加筆し次第順次公開します。



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