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ポイント解説国際法務 ウィーン売買条約の個別の内容

ウィーン売買条約の特徴

 本稿では、ウィーン売買条約(CISG)の個々の内容について見ていきたいと思います。最初に、この条約の特徴について概観します。

 まず売主側にとって特徴的な内容としては以下のようなものがあります。

  • 物品の適合性につき、契約条件への適合性に加えて、契約締結時において売主に明示的・黙示的に知らされていた特定の目的への適合性まで含みうること
  • 不適合性につき、買主からのクレーム提起期間が長く、2年とされていること

 他方、買主側にとって特徴的な内容としては以下のようなものがあります。

  • 実行可能な限りにおいて短期間内での物品検査義務が課されていること
  • 契約において、買主の解除権よりも売主の追完権が優先するため、買主による契約解除の妨げとなりうること

 以下、個々の内容について概観したいと思います。

契約の成立等

契約の成立時期

 日本民法では、契約の成立時期は、「承諾の通知を発信した時」です(民法526条。発信主義)。しかし、ウィーン売買条約では、契約の成立は承諾の「到達時」とされています(到達主義)。

 また、契約の申込の撤回ができる場合についても、ウィーン売買条約では「相手方が承諾の通知を発する前に撤回の通知が相手方に到達する場合」と定めており、日本民法とは異なる規定となっています。

相手方からの条件付承諾への対応

 ウィーン売買条約が適用される場合であって、買主が、海外の売主に対し、製品を注文したものの、売主が、注文の条件の一部を変更をして承諾の回答をしてきた場合には注意が必要です。

 すなわち、ウィーン売買条約では、その変更が、注文内容に実質的に変更を加えない程度のものであるときは、買主が遅滞なく異議を述べない限り、契約は条件を付加した承諾の内容で成立するとされています。

したがって、買主は、売主から条件付の承諾の通知が来た場合であってその条件が望ましくないものであるときは、遅滞なく異議を述べる必要があります。この点は日本民法の扱いと異なりますので、注意が必要です。

買主による製品の検査義務

 ウィーン売買条約では、買主は、製品を受領した後、可能な限り短い期間内に検査をする義務を負います。そして合理的期間内に不適合の通知を行わなかった場合には、製品の不適合を主張する権利を失うことになります。

売買目的物の瑕疵

適合性の適用範囲

 ウィーン売買条約では、原則として、契約書に明示された仕様への適合性のほか、目的物が、契約締結時に明示又は黙示に売主に知らされていた特定の目的に適合していないと判断される場合に、その目的物は不適合(瑕疵がある)であるとみなされるという規定があります。

 それで、売主としては、このようなリスク(黙示的な使用目的への適合性違反による責任)を回避するためには、契約書において、買主の使用目的への適合性は保証の範囲外であることを明示する必要があります。

売主の契約義務違反に対する買主の救済措置

救済措置の概要

 ウィーン売買条約の45条から50条には、売主の契約義務違反に対する買主側の救済措置が規定されています。

 例えば、日本企業が、同条約の締約国である外国の企業からある製品をを輸入したものの製品の10%は不適合品であった場合、以下のような救済措置が取れることが定められています。

  • 損害賠償請求(45条2項)
  • 売主義務の履行請求(46条1項)
  • 代替品引渡請求(46条2項)
  • 瑕疵修補請求(46条3項)
  • 契約解除(49条)
  • 代金減額請求(50条)

 それで、前記の場合でいえば、日本企業は当該外国企業に対して、代金の10%の減額請求ができますし、その他代替品の納品の請求や契約解除ができる場合もあるなど、救済措置が詳細に規定されています。

 そのため、日本企業が特に輸入者の場合、ウィーン売買条約の適用を積極的に検討してもよいかもしれません。

買主から売主に対するクレーム提起期間

 ウィーン売買条約では、買主は、原則として、売主から物品を交付された(受領した)日から2年以内にクレーム通知を行うと規定しています(39条2項)。

しかし、実務においては、取扱う製品によっても、また業界の商慣習によっても扱いは様々であるものの、商品の品質保証期限を1年とする扱いも少なくなく、前記クレーム提起期間は少々長いといえます。

 それで、特に売主側として契約を締結する場合には、同条約に規定するクレーム提起期間を排除するために、契約書等にクレーム提起期間を明記する必要があります。

代替品の納品の請求・解除についての留意点

 代替品の引渡請求については注意が必要です。つまり、製品に瑕疵があった場合、日本法とは異なり、ウィーン売買条約によれば、代替品の引渡請求ができるのは、重大な契約違反の場合に限られます。

言い換えれば、買主としては、ウィーン売買条約のもとでは、細かい製品の瑕疵については、代金減額や損害賠償請求により対応しなければならないということになります。

 また同様に、ウィーン売買条約においては契約ができる限り存続することを趣旨としていることから、契約解除についても「重大な契約違反」がある場合に認められるとされています。

損害賠償の範囲等

損害賠償の範囲

 損害賠償の範囲については、ウィーン売買条約においては、日本民法よりも詳細な規定があります。

この点、ウィーン売買条約では、損害賠償の範囲として、得られるはずであった利益(逸失利益)の喪失についても損害賠償が含まれることが規定されています。他方日本法では、瑕疵があったというだけでは逸失利益の賠償は原則としてできませんので、この点は買主側に有利な規定といえます。

損害軽減義務

他方、ウィーン売買条約では、契約違反を主張する当事者において、その損害を軽減する合理的措置を講じる義務が規定されています。

 
 例えば、輸入業者が、メーカーの契約違反により製品の転売機会を逸したとして逸失利益を主張する場合、その製品をできるだけ高い価格で別の買主に転売する努力をし、損害を軽減するようにする必要があるということになります。

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