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ポイント解説国際法務 国際裁判管轄 (1)民事訴訟法

国際裁判管轄と民事訴訟法

 不思議なことのように思われる方もおられるかもしれませんが、これまで、民事訴訟法をはじめとする日本の法律には、国際的な事件に関する裁判管轄を明示的に規定したものはありませんでした。

 そして、2012年4月1日から施行された民事訴訟法の改正によって、国際裁判管轄に関する規定が含まれるようになりました。それで以下、改正民事訴訟法に基づき、ある国際事件について、どのような場合に日本の裁判所に訴訟を起こせるのか(起こしたとして日本の裁判所が管轄があると判断してくれるのか)、をご説明します。

管轄の原則~被告の住所地等

自然人の場合

管轄の原則として、被告の住所地等を管轄する裁判所というものがあります。具体的には、人(自然人)に対する訴訟については、被告が以下のいずれかの場合、日本国内の裁判所に管轄が認められます(民訴法3条の3第1項)。

  • その人の住所が日本国内にあるとき
  • 住所がない場合又は住所が知れない場合にはその居所(一時的に住んでいる場所)が日本国内にあるとき
  • 居所がない場合又は居所が知れない場合で訴えの提起前に日本国内に住所を有していたとき

被告が法人の場合

 次に、被告が法人の場合には、日本の裁判所が管轄権を有するとされます(民訴法3条の2第3項)。

  • 主たる事務所又は営業所が日本国内にある場合
  • 事務所若しくは営業所がない場合又はその所在が知れない場合には代表者その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にある場合

事件ごとに認められ得る管轄

 以上の一般原則のほか、事件の種類・性質によって管轄が認められる場合もあります

業務に関する訴えの管轄

 日本国内に事業所又は営業所を有する者に対する訴えで、その事務所又は営業所における業務に関するものは、日本の裁判所に管轄が認められます(民訴法3条の3第4号)。

 また、日本において事業を行う者に対する訴えについては、その訴えがその者の日本における業務に関するものである場合には、日本の裁判所に管轄が認められます(3条の3第5号)。

契約上の訴えに関する管轄

 債務の履行地が日本国内にある場合には、日本の裁判所に管轄が認められます。また、契約において選択された法律によればその履行地が日本国内になる場合にも、日本の裁判所に管轄が認められます(民訴法3条の3第1号)。

財産の所在地

 請求の目的が日本国内にあるときには、日本の裁判所に管轄が認められます(民訴法3条の3第3号)。

 また、財産権上の訴えで金銭の支払を請求する場合には、差押ができる財産が日本国内にある場合には、日本の裁判所に管轄が認められます(民訴法3条の3第3号)。

 加えて、不動産が日本にある場合には、当該不動産に関する訴訟については、日本の裁判所に管轄が認められます(民訴法3条の3第11号)。

不法行為地

 不法行為に関する訴訟については、不法行為があった地が日本国内にあるときには、日本の裁判所に管轄が認められます(民訴法3条の3第8号)。

ただし、加害行為が行われた地が国外であり、加害行為の結果だけが日本で発生した場合であって、その結果が通常予見できないものについては、日本で訴訟を起こすことはできません(民訴法3条の3第8号)。

消費者契約に関する管轄

 消費者から事業者に対してなされる訴えは、訴えの提起時に消費者の住所が日本国内にあるとき、又は契約締結時に消費者の住所が日本にあるときには、日本の裁判所に管轄が認められます(民訴法3条の4第1項)。

 他方、事業者から日本国内の消費者に対する訴えについては、被告住所地主義の規定が適用されます。それで、原則として日本の裁判所に訴えを提起しなければなりません(3条の2)。

労働契約に関する管轄

 労働者がその使用者(雇用者)に対して訴訟を提起する場合、労働を提供する場所が日本にある場合には、日本の裁判所に管轄が認められます(3条の4第2項)。

 なお、労働の提供地が定まっていない場合(例えば採用直後で勤務地未定の場合など)であって、労働者を採用した事業所が日本にある場合には、日本の裁判所に管轄が認められます(民訴法3条の4第2項)。

 他方、使用者(雇用者)から日本国内の労働者に対して訴訟を提起する場合、被告住所地主義の規定が適用されますので、原則として日本の裁判所に訴えを提起する必要があります(民訴法3条の2)。

合意による管轄

管轄の合意の原則

 以上のとおり法律の規定による管轄のほか、管轄に関して当事者間で合意がされている場合には、原則としてその合意のとおり管轄が認められます(民訴法3条の7第1項)。ただしその合意は原則として書面によることが必要です(民訴法3条の7第2項)。

 また、「応訴管轄」といい、被告が、日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで、本案(訴訟の中身)について弁論をした場合などにも、日本の裁判所に管轄が認められます(民訴法3条の8)。

管轄の合意の例外1 裁判権を行使できない国の場合

 ただし、裁判権を行使できない外国の裁判所に専属的に管轄を認める合意は無効とされます(民訴法3条の7第4項)。例を挙げれば、戦争などでその外国の司法制度が全く機能不全になっているというケースでは、その外国での専属的管轄のみを認めることは裁判を受ける権利を奪うことになりますので、その合意は、無効とされます。

 この場合、前記のとおりの管轄の法律上の原則に従って日本の裁判所における管轄の有無が判断されます。

管轄の合意の例外2 消費者契約に関する紛争の特則

 事業者と消費者と契約に関しても、管轄の合意に関する例外があります。つまり、以下のいずれかの要件を満たさない限り、当該合意は無効とされます(民訴法3条の7第5項)。

  • 事業者と消費者が、消費者契約締結の時点で、消費者が住所を有している国の裁判所に訴えを適することができる旨の合意をするとき(ただし専属的な合意とは解釈されません)。
  • 消費者が国際裁判管轄の合意に基づき合意された国に裁判所に提訴した場合、又は事業者が提訴した場合に消費者が国際裁判管轄の合意を援用したとき

管轄の合意の例外3 労働関係に関する紛争の特則

 使用者と労働者との間の管轄の合意については、以下のいずれかの要件を満たさない限り当該合意は無効とされます。

  • 労働契約終了時の合意であって、その時の労働提供地の国の裁判所に提訴できるとの合意
  • 労働者が国際裁判管轄の合意に基づき合意された国に裁判所に提訴した場合、又は使用者が提訴した場合に労働者が国際裁判管轄の合意を援用したとき

特別の事情による訴えの却下

 以上の規定によって日本に裁判管轄があると定められる場合でも、裁判所は、事案の性質、被告の応訴負担の程度、証拠の所在地、及びその他の事情に鑑み、当事者の衡平が害されたり、又は適正・迅速な審理の実現を妨げられたりすると認められるときは、訴えを却下することができるとされています(民訴法3条の9)。

ただし、専属的合意管轄の合意に基づく訴え提起の場合には、この却下の規定は適用されません。

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