会社の特別清算手続

特別清算とは・メリットとデメリット

 会社が危機に陥り、種々検討・努力しても会社再建の見込みがなく、やむをえず清算せざるをえないこともあります。この場合の選択肢の一つが「特別清算」です。

特別清算のメリット

 まず、特別清算のメリットには以下のようなものがあります。

手続が比較的迅速

 特別清算は、破産手続ほど厳格な手続を要さないため、比較的迅速に処理が進行します。

清算人を会社側で選任可能

 破産手続に関して選任される破産管財人は、裁判所がその裁量で選定しますから、会社側としては誰が破産管財人になるか分からないという面に若干の不安を覚えるかもしれません。他方、特別清算人の場合、会社が依頼し、申立代理を行う弁護士が就任可能ですので、この点の不安がありません。

「破産」のレッテルの回避

 「破産」という言葉にはネガティブな響きが避けられません。この点、特別清算を利用すればこの点を回避できます。そのため、親会社が子会社を清算する場合によく利用されます。

特別清算のデメリット

 特別清算のデメリットには以下のようなものがあります。

債権者の同意が必要

 特別清算は、株式会社しか利用できません。それで、有限会社(現在は特例有限会社)等の他の会社では利用できません。

債権者の同意が必要

 特別清算手続においては、債権者(正確には総債権額)の3分の2以上の同意が得られないと進みません(会社法567条1項2号)。それで、特別清算は、債権者が少数でかつ協力的な場合や、親会社が債権の大半を持つ子会社を清算させる場合等に利用されます。

 特別清算開始の要件1~債務超過の疑い

債務超過の疑いとは

 債務超過とは、会社の財産が会社の債務を完済するのに足りない状態をいいます(会社法510条1号)。つまり、会社が、自身が持っている全財産を処分しても、債務を完済することができない状態ということです。

 破産手続開始の要件とは異なり、特別清算開始の要件は「債務超過の疑い」と、若干要件が緩和されています。「債務超過の疑い」には、債務超過も含まれているとされていますので、明らかに債務超過に陥っている会社でも特別清算を申し立てることが可能です。
 

債務超過の判断

 実務的には、解散時の貸借対照表上債務超過であれば、特別清算の要件としても債務超過と判断されることが一般的です。

 ただし、法律上は、債務超過の状態がある程度継続的である必要があり、一過性の事情によって一時的に債務超過が生じたとしても(例えば他の月は資産超過であり、ある月のみ特別な事情でバランスシート上債務超過に陥ってしまうような場合)、債務超過とはいえません。

 特別清算開始の要件2~清算の遂行に著しい支障を来すべき事情

清算の遂行に著しい支障を来すべき事情

 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情(会社法510条2号)とは、すでに株式会社が通常清算手続(裁判所が関与しない)を開始している場合に、通常清算手続を進めるのに著しい事情を来すこととされています。
 
 例えば、以下のような事情のいずれかがあれば、清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があると判断されます。

  • 利害関係人が多数存在する場合
  • 会社の債権債務関係が錯綜している場合

特別清算に必要な費用の概要

費用の概要

 特別清算は、破産の場合と比べれば比較的少ない費用で可能となる場合が少なくありません。以下、特別清算の申立に必要な費用について解説します。大雑把に申し上げると、特別清算には、(1)裁判所に納める予納金と、(2)申立を代理する弁護士費用が必要となります。

 前記のうち、(2)は弁護士に依頼せずご自分で特別清算申立をする場合にはかからない費用ですが、(1)については特別清算手続費用として必要なものであり、これを裁判所に納めないと、特別清算を申し立てても、裁判所は特別清算手続を開始しません。
 

資金繰りと費用の確保

 この点は破産手続の欄でも書きましたが、特別清算する場合、中小企業であっても、百数十万円程度の費用が必要となります。
 
 それで、早晩行き詰ることが明らかに見込まれる状況になった場合、単に延命するために無理な金策を繰り返し、ただでさえ乏しい資金を使い果たすならば、清算すらできなくなってしまいます。
 
 事業経営者としては、債務が弁済できなくなり再建もできない会社を、法的にきちんと清算し、債権者に対する最低限の責任を果たすという観点から、何らかの法的清算ができる程度の最低限の資金が残っている段階で、弁護士に対して方向性を相談することは重要です。
 
 もっとも、表面上資金が尽きたように見えても、必ずしも特別清算申立をあきらめる必要はありません。詳しいことをここで書くことはできませんが、何らかの方法で申立のための資金を確保する方法がある場合もありますので、この点からも弁護士に一度相談してみるとよいでしょう。

 特別清算申立の費用1~予納金

予納金とは

 予納金とは、特別清算申立の際に裁判所に収める費用です。特別清算の申立てについて、手続を開始する場合、「清算人」が就任します。

 この「清算人」は、清算の決議時に選任されることから、多くの場合申立代理人弁護士が就任可能です。何か特別な事情があって裁判所の判断により選定する場合はその清算人に報酬を支払うことになりますが、この予納金は、この清算人の報酬の最低額を確保するために使用されることになります。
 

予納金の金額

 予納金の金額はどの程度でしょうか。これは、会社の事業の内容、資産及び負債その他の財産の状況、債権者数、株主数、監督委員又は調査委員の選任の要否その他の事情によってケース・バイ・ケースではあります。
 
 ただし、東京地裁商事部等の実務では、協定型では5万円、和解型では8360円とするのが通常です。もっとも、「特別清算手続によることが債権者の一般の利益に反する」と認められる可能性が少なくない事件等については、将来破産手続開始命令をする可能性があるので、破産手続開始予納金相当額を求めることがあります。例えば、以下のような事件です。

  • 総債権額の3分の2以上の債権者の申立同意書がない事件で特別清算開始の命令をする事件
  • 現金・預金の額が著しく少なく、優先的な債権を支払うに足りる資産がないと見込まれる事件

 特別清算申立の費用2~清算人報酬

清算人報酬とは

 清算人報酬とは、清算人の職務に対して支払われる報酬です。清算人は、特別清算申立前に株主総会で解散の議決をする際に選任されます。

 この「清算人」には、通常、退任と同時に、裁判所の定める額の報酬が支払われます。なお、清算人は、必要があるときは裁判所の許可を得て清算人代理を選任することができ(会社法525条)、清算人代理の報酬は、清算人の報酬とは別に支払われることになります。
 
 もっとも、会社が依頼する弁護士が特別清算人となる場合、申立代理人としての費用のほかは別途清算人報酬を受領しない扱いも多いと思われます。この場合、申立時に、清算人が報酬放棄書を裁判所に提出します。
 

清算人報酬の金額

 清算人報酬の金額はどの程度でしょうか。実務上、清算人の報酬は、破産管財人の報酬より低額とされています。もっとも、裁判所が選任した清算人については、清算事務の内容を考慮のうえ、破産管財人の報酬と同等程度とすることもあります。

 特別清算申立の費用3~弁護士費用

 以上の予納金、清算人報酬のほか、申立を代理する弁護士の費用が必要となります。

 前記のとおり、予納金及び清算人報酬は破産手続と比較して相当低額ですが、特別清算手続のスムーズな進行のためには、申立までの代理人弁護士としての活動(総債権額の3分の2以上の債権者の同意を得ること、現状と財産の保存、資料の収集、事情聴取等)が非常に重要な位置を占めるようになります。
 
 また当然ながら、特別清算手続が開始した後も、弁護士は、裁判所に最大限協力し、業務を続け、協定の策定や和解の締結等に当たって必要な折衝や説得を行います。そのため、申立を行う代理人弁護士への費用が必要となります。
 
 
 

 会社の特別清算申立を決意して、弁護士に特別清算申立を依頼したとします。この場合、どのような流れで事件が進み、どのような結果となるのかは非常に気になることでしょう。
 まずは、大雑把な流れをご説明すると、大筋以下のとおりです。

受任通知
(弁護士から債権者への通知)

会社財産の保全等

資料収集・事情聴取・申立書類準備

解散決議

清算の公告

特別清算申立

特別清算開始の命令・清算人選任

清算人の業務進行

債権者集会の開催・協定許可(協定型)

又は

和解契約締結許可(和解型)

協定の実行 又は 和解契約の実行

終結決定

 特別清算申立の手続の流れ1~依頼から申立まで

 以下、手続きの流れをやや詳細に解説します。まずは、弁護士に依頼してから、特別清算申立までの流れをご説明します。
 

受任通知

 弁護士に依頼すると、まず、弁護士から債権者に対して受任(弁護士が依頼者の代理人となったということ)の通知を出します。受任通知を出し、債権者に到達すると、会社への請求・取立は、原則として止まります。
 

会社財産等の保全

 また、いったん特別清算申立を決定し、事業を停止した会社の財産が散逸しないように現状を保全することも、申立代理人としての弁護士の重要な役割です。それで、会社の財産については、以後、依頼された弁護士が会社から引渡しを受け管理します。
 
 弁護士は、会社財産の保全のため、一般に以下の財産・書類等を会社から預かります。

  ◇ 代表者印・銀行印
  ◇ 会社の預金通帳
  ◇ 手形帳・小切手帳
  ◇ 預かり手形
  ◇ 決算書
  ◇ 売掛金を裏付ける資料(請求書、売掛帳)
  ◇ 不動産等がある場合、権利証等
  ◇ 証券類(保険証券、有価証券)・会員券
  ◇ 重要な契約書類
  ◇ その他会社財産に関係するもの

 特別清算申立の流れ2~資料収集・事情聴取・申立書類準備・解散決議

資料収集・事情聴取

 特別清算申立の準備のため、必要な書類を収集・整理します。

 前記で述べた書類のほか、主として以下のような書類を収集し、整理します。なお、これらの資料の多くは、依頼者の手元にあるため、依頼者による協力が必要となります。

  ◇ 過去3年分の確定申告書・直近の試算表
  ◇ 会社の債務に関する契約書(消費貸借契約書・リース契約書等)・買掛金等の請求書
  ◇ 会社の会計帳簿(元帳、出納帳、売掛帳、買掛帳、給与台帳等)
  ◇ 租税・社会保険料の金額を示す書類(納付書、通知書等)
  ◇ 自動車・車両の車検証
  ◇ その他会社の契約に関する一切の契約書・書類

 収集した資料から弁護士が事案を分析したうえで、依頼者と打合せを持ち、事業の開始から支払不能に至った経緯を詳細に聴取します。また、その際に、依頼者から申し出はないものの、書類・資料から存在が疑われる財産の有無と内容についても確認・聴取します。
 
 さらに、特別清算申立に当たり、直近の一定の期間内に、依頼者が財産を処分したり隠匿したと疑わせるような事情がないか、等も聴取します。特別清算手続を始めてから、債権者が詐害行為取消しの訴えを提起することのないためです。

債権者との交渉

 協定の可決には、議決権総額の3分の2以上の債権者の同意が必要です(会社法567条)。裏を返すと、債権額3分の1を超える債権者の反対がある場合には、協定が可決されず、特別清算手続を進めることはできません。それで、大口債権者が特別清算の申立に同意するよう、弁護士が事前に交渉を行うことが必要です。
 
 あるいは実務上は、親会社が子会社の特別清算を行うような場合には、親会社が子会社の債権の3分の2以上を弁済し、その後に申し立てることが少なくありません。

解散決議・申立書作成

 以上の過程を経て、特別清算申立が可能との見込みが立った段階で、株主総会を招集し、会社解散と清算人選任を議決します。解散決議は特別決議事項ですので、株主総会で議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、議決権の3分の2以上の賛成が必要です(会社法309条2項11号)。この際に、清算人も選任します。
 
 特別清算申立書を作成した上で、証拠書類を含めた一件記録を準備し、裁判所に提出します。

 特別清算申立の流れ3~特別清算開始から終結まで

特別清算開始命令

 特別清算の申立を行うと、裁判所が一件記録を検討し、特別清算開始の要件が法律上存在するかを検討します。そして、要件があると認められると、裁判所が特別清算開始命令をします。
 
 そして、この特別清算手続開始命令により、債権者が会社の財産に対して、既に行っていた強制執行や保全処分は効力を失います(会社法512条1項2号)。

清算人の就任

 特別清算開始命令と同時に、特別清算の議決を行った株主総会で既に選任された清算人が就任します。清算人は、特別清算する会社の財産について管理する権限を持ち、債権者及び株主に対して公平かつ誠実に職務を行う義務を負います(会社法523条)。

 その職務及び権限のうち、主なものは以下のとおりです。

財産の現況調査・目録作成

会社の財産管理、各財産の処分価額の評価査定

債権の確定

債権者が届け出た債権の存否及び額を調査します。

協定の策定・債権者集会の招集

会社法上は清算会社が行うこととされていますが、実際には清算人が協定の内容を策定し、債権者集会に申し出ることになります。

債権者集会の開催・協定許可

 清算会社が債務超過の場合、債務の全部又は一部の免除を受けて、残額を弁済することが必要となります。その方法として、協定による方法と、次に述べる個別和解の方法とがあります。協定による場合、清算会社は、債権者集会を招集して、協定の申し出をします(会社法563条)。
 
 この債権者集会において、(1)出席した議決権者の過半数の同意が得られ、かつ(2)議決権者の議決権の総額の3分の2以上(旧法では4分の3以上でしたが、法改正により緩和されました)の議決権を有する債権者の同意が得られると、協定が可決されます(会社法567条1項)。
 
 協定の内容は、債務の減免、期限の猶予その他の権利変更について、債権者間で平等でなければなりません(会社法565条)。
 

個別和解

 和解型の特別清算の場合、債権申出期間が経過した後に、裁判所の許可を得て清算会社と債権者の間で和解をします。協定と異なり、債権者同士の平等は必ずしも必要ではなく、債権者ごとに和解を締結します。

終結決定・破産手続への移行

 特別清算手続の終了には、終結と破産手続への移行があります。
 
 まず、特別清算の終結には、特別清算の結了による場合と、特別清算の必要がなくなったことによる場合(会社法573条)があります。終結により、会社の権利義務は消滅し、会社の法人格は完全に消滅します。
 
 また、特別清算によることが債権者の一般の利益に反するとき(会社法574条1項3号)、協定が否決されたとき、協定の不許可の決定が確定したとき(会社法574条2項)には、手続が終了し、破産手続へ移行する場合もあります。



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