ウィーン売買条約の概要と適用

 本稿では、日本も近年加盟し、国際契約に影響を与え得る「ウィーン売買条約」について、その概要をご説明します。

ウィーン売買条約の概要

 ウィーン売買条約は、正式名称を「国際物品売買契約に関する国連条約(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods。またはCISG)」といい、全101条からなる、契約や損害賠償の基本的な原則を定めた条約です。

 その加盟国は79か国であり、米国、カナダ、オーストラリア、韓国、中国、ドイツ、フランス、イタリア、ロシア等世界の主要国の多くが含まれています。日本においても2009年8月より発効しました。他方、英国は今のところ加盟していません。参考:締約国一覧

ウィーン売買条約が適用される場合

ウィーン売買条約適用の原則

 どのような場合にこのウィーン売買条約が適用されるのでしょうか。まず、当事者の所在する国がいずれも締約国である場合は、自動的にウィーン売買条約が適用されます(同条約1条1項)。

 また、当事者の所在する国の一方が非締約国であっても、国際私法に基づく準拠法の判断の結果、締約国の法を適用するとされた場合には、同条約が適用されることになります(1条第2項)。

 
 さらに、契約当事者の営業所が異なる国にある場合には、当該当事者間の契約は国際取引とみなされ、ウィーン売買条約が適用されます。

 
 例えば、締約国である日本の企業が、同じく締約国である中国にある企業と売買契約を締結する場合、原則としてこの条約が適用されることになります。また、締約国である日本の企業と、非締約国の企業との売買契約であっても、国際私法に基づく準拠法の判断の結果、日本法が適用されれば、ウィーン売買条約が適用されることになります。

ウィーン売買条約の適用の排除

契約の規定による排除

 ウィーン売買条約については、その適用を排除または変更することができます(6条)。しかし、その場合、売買契約において、同条約の適用を明示的に排除する文言を規定する必要があります。

 言い換えれば、契約書において、単に準拠法を定めるだけでは、原則としてウィーン売買条約の適用が排除されているとは解釈されないということです。ただし、明示的な排除規定がない場合も、準拠法の定めがウィーン売買条約の排除を意図していたという証明できる場合もあります。

慣習・慣行による排除

 また、ウィーン売買条約には、当事者が、合意した慣習や当事者間で確立した慣行に拘束されるという規定もあります(9条1項)。それで、ウィーン売買条約の適用が契約上明示的に排除されていない場合でも、合意した慣習や当事者間で確立した慣行があれば、ウィーン売買条約に優先して適用されるということになります。

 なお、ここでいう「慣習」には、インコタームズといった国際慣習も含まれます。それで、売買契約書において、貿易条件に関する解釈はインコタームズによると明示的に規定されている場合には、インコタームズの規定が優先的に適用されることになります。

条約の規定による適用範囲外の契約

 ウィーン売買条約は、以下の売買については条約が適用されないとしています(2条)。

  • 個人用,家族用又は家庭用に購入された物品の売買(ただし例外あり)
  • 競り売買
  • 強制執行その他法令に基づく売買
  • 有価証券,商業証券又は通貨の売買
  • 船,船舶,エアクッション船又は航空機の売買
  • 電気の売買
人身侵害の適用除外

 ウィーン売買条約は、物品によって生じたあらゆる人の死亡又は身体の傷害に関する売主の責任、つまり製造物責任に基づく人身損害については、適用しないとされています(2条)。

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