2.3 法人著作の解説

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法人著作の考え方

 著作権法の原則は、ある著作物を現実に創作した自然人が著作者となるというものです。

 しかし、会社(法人)等の職員がその職務上著作物を創作する場合があります(例:会社の従業員が製品マニュアルを作成する。新聞記者が新聞記事を執筆するなど)。このような場合に、会社にその著作権が帰属させないと不都合なことが多くなります。

 そこで、著作権法は、一定の場合、創作者を雇用していた等の法人に原始的に著作権が帰属し、かつ法人が著作者になると定めました。このことは法人著作または職務著作と呼ばれています。

法人著作の要件と留意点

要件のアウトライン

法人著作(職務著作)の成立要件はどのようなものでしょうか。具体的には以下の要件を満たす場合です(著作権法15条)。

  • 著作物の創作が、法人等の発意に基づくものであること
  • 法人等の業務に従事する者が職務上作成するもの
  • その法人の著作名義で公表するもの
  • 契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと

 以下、各要件の詳細と実務上留意すべき点に若干触れることとします。

「法人等の発意に基づく」

 当該著作が、法人等の「発意」に基づく必要があります。なおこれは、会社から社員に対する具体的な指示や命令に限るものではなく、著作物の作成についての意思決定が使用者の判断によるものであれば足ります。それで、具体的指示や命令がなくても、会社の職務上制作された著作物で、業務の過程において社内で作成されたものであれば、発意を肯定できることが通常ではないかと考えられます。学説の中には「使用者の意図に反しない程度であればよい」と発意を広く解する説もあります。

 ただ、どんな場合に「発意」が肯定されるのかは、説が様々なので(もっと厳しく見る見解もあるので)、重要なケースでは、常日ごろからできる限り会社の「発意」を裏づける証拠・資料を作り、残しておくことは有益かと思われます。特に、ある社員がイニシアチブを取って発案し、かつ自宅などで制作を行なっており、これを会社が使うといった場合に、後々問題となりかねません。

例えば、社内文書やメールなどで、当該制作について、会社の職務として行っていることと、上司や会社が指示・承認をしたことを残す(制作中でも、あるいは次善の策として完成後でも)、制作について会社にメールなどで適宜報告をさせるようにする、その他「発意」を立証できる資料を確保できるようにしておくといったことが考えられます。

「法人等の業務に従事する者」とは

前記2番目の要件である「法人等の業務に従事する者」とは何でしょうか。これは、使用者と作成者との間に雇用関係があること、または、実質的にみて、法人等の内部において従業者として従事していると認められる場合があることをいうとされています。また、例えば、「職務上作成した」ということについては、仮に自宅で作成したものであっても職務に基づいているものであれば、職務上作成に該当しないというわけではありません。

以下、具体的に問題となりうるケースを若干取り上げます。

派遣社員

 派遣労働者(派遣社員)については、当該社員が派遣先の会社から指揮命令を受ける点を考慮して、>「法人等の業務に従事する者」に該当すると考えるのが多数説です。

外部の受託者・請負人

 雇用関係のない外部の者が請負契約により著作物を作成した場合には、職務著作は適用されない可能性が高いといえます。したがって、請負契約等で第三者に著作物の作成を依頼する場合、契約書に著作権の移転を明示する必要があります。

法人等が自己の著作の名義の下に公表する著作物であること

 また、4番目の要件として、法人等が自己の著作の名義の下に公表する著作物である必要があります。それで、その著作物の著作者としての表示に、法人等の名称が表示されている必要があります。「制作著作」(c)マークなどによって、著作者表示をする必要があります。

 また、法人等の著作の名義で実際に公表したものにかぎらず、公表することを「予定している」著作物も、これに該当します。そのため、法文では「公表するもの」と規定されています。

 ただし、プログラムの著作物に関しては例外であり(法15条2項)、公表に関する要件がありません。それは、プログラムの著作物の場合、公表を前提としないで開発されるものも少なくないため、こうした事情を法が考慮したためです。

 


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