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2.2 共同著作物と著作権の共有の扱い

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著作権の共有

著作権が共有となる場合

 以下のような場合、ある著作物の著作権が共有となります。

  • 著作権者が死亡し、相続人が複数いる場合
  • 複数人による共同著作物の場合
  • 契約や合意によって、複数の当事者間である著作物が共有とされた場合

共同著作物とは

 では、著作権が共有となる場合のうち「共同著作物」とは何をいうのでしょうか。具体的には以下の要件を満たすものが共同著作物となると考えられています。

  • 複数の者が創作に携わること
  • 共同関係があること
  • 単一の著作物について、各人の寄与を分離して個別的に利用できないこと

 他方、1冊本について、Aさんが第1章を執筆し、Bさんが第2章と第3章を執筆したというような場合は、作品全体の創作に関しての共同行為がみられませんので、それぞれ独立した著作物が結合している、「結合著作物」と考えられます。

共有著作権の扱い

 著作権法は、共有にかかる著作権の扱いについて規定を置いています。

 例えば、各共有者は、その持分を譲渡するなど、著作権の共有持分を処分する場合、共有者全員の合意を得る必要があります(65条1項)。

 また、共有著作権は、共有者全員の合意によらなければ行使することができないものとされています(65条2項)。その「行使」の一つには、著作権の利用許諾が含まれるほか、著作物を共有者自らが利用することも含まれると考えられています。

 他方、著作権に基づく差止請求・損害賠償請求等は、各共有者が単独で行うことができます(117条)。

著作権の共有に関する実務上の留意点

 以上のとおり、著作権が共有とされた場合、その扱いには大きな制約(特に全員の共有者の合意)が加わりますので、実務上、ある著作物を安易に共有とすることは慎重に考える必要があります。

 例えば、ソフトウェア開発委託において、契約規定中、成果物の著作権の帰属について双方の主張が対立し、まとまらないということがあります。この場合、妥結案として、成果物の著作権を共有とするという案が用いられることがあります。

 しかし、単に著作権の共有について規定するだけにとどめると、前記のとおり共有著作権の行使に対する制約から、大きな足かせとなることがあります。例えば委託者は、当該委託によって開発したソフトウェアを第三者に販売(ライセンス)したいと思っても、受託者側から、「その販売は自己の同意が要る」などと主張され、これが紛糾の種となるということがありえます。

 ですから、仮に著作権を共有とするとしても、自社のビジネスを具体的に念頭に置いた上で、後々の成果物の利用に支障が生じないよう、当該成果物をどのように利用できるか、複製のほか、改変や改良については単独でどこまで行えるのか、著作権の共有持分の譲渡は可能か否か等、詳細な点を契約書に定める必要があります。

 契約交渉においては妥協はつきものですが、それに際しては、生じうるリスクとビジネスへの支障をできる限り回避するような周到な方策を同時に考え、勝ち取れるよう交渉を行うことが実務上は重要であると考えます。

 


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