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5.1 著作物の引用の要件・ポイント

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著作権法上の「引用」の概要

 著作権法に定める「引用」は、他人の「著作物」を許諾なく利用することができないという法の原則に対する例外の一つであり、著作権法32条1項[条文表示]で定められています。

 しかし、この「引用」に該当するためには、著作権法上の要件を満たす必要があります。一般的には以下のような要件が必要とされています(論者によって整理の仕方は異なります)。

 a 引用部分が公表された著作物であること
 b 引用部分と自己の著作物の区分が明瞭であること
 c 自己の著作物が「主」であり、引用部分が「従」であること
 d 「引用の目的上正当な範囲内」であること
 e 出所を明示すること
 f 改変など、引用部分の著作者人格権を侵害しないこと

 以下、各要件のうち、説明が必要と思われるものについて簡単にご説明します。

「引用」の各要件の説明

公表された著作物であること

 引用できるのは、公表された著作物である必要があります。未公表の著作物を引用することはできません。

 どのような場合に「公表」といえるかは、著作権法4条に規定されています。具体的には「発行」された場合(4条1項)、上演、演奏、上映、公衆送信、口述若しくは展示の方法で公衆に提示された場合(4条1項)が含まれます。

 また、インタラクティブ送信の場合は、送信可能化された時点(ネット上にアップロードした時点)で公表とされます(4条2項)。

 なお、これらの行為は、権利者や適法に許諾を受けた者の行為である必要があります。

明瞭区分性

 「引用部分と自己の著作物の区分が明瞭であること」が必要であり、「明瞭区分性」といいます。

 そのための方法としては、引用部分にカギ括弧(「」)や引用符(”“)を付すことが典型例です。あるいは、引用部分にインデントをつけたり、枠線を付けたり、背景色を変えたりするという方法もあります。

 また、学術論文など引用方法について確立された慣行がある場合、これに従うことが望ましいといえます。

主従関係

 「自己の著作物が「主」であり、引用部分が「従」であること」が必要であり、「主従関係」といいます。

 「主従関係」は、量的な面と質的な面(内容)について存在することが必要です。つまり、量的にいって自己の著作物のほうが多いというだけでは不十分です。

 内容面でも、自己の著作物が主体性を保持し、引用部分は、自己の著作物を補足したり、参考資料を提供するといった位置づけである必要があります。

「引用の目的上正当な範囲内」であること

 「正当な範囲内」か否かを判断するにあたっては、(a)そもそも引用の必要性があるか、(b)引用の量や範囲が必要な範囲内か、(c)引用方法が適切か、といった要素から判断します。

 これらの要素は、ケース・バイ・ケースで総合的に判断するしかありません。以下、裁判で争われた事例から具体例を簡単にご紹介します。

(2)藤田嗣治絵画複製事件 (東京高裁昭和60年10月17日判決)

 近代日本の美術史を体系的に解説する書籍中のある論文に藤田画伯の絵画が掲載されていました。同画家の未亡人が、著作権侵害を主張しました。

 裁判所は、「美術著作物が言語著作物の記述に対する理解を補足し、あるいは右記述の例証ないし参考資料として、右記述の把握に資することができるように構成されており、美術著作物がそのような付従的性質のもの以外ではない場合」に、引用として適法となると述べました。

 そして、同事件では、掲載された絵画の複製自体鑑賞性を有することに加えて、絵画のうち論文の当該絵画に関する記述と同じページに掲載されているものは12点中の2点にすぎないことから、絵画と論文の結びつきが少ないとして正当な引用には当たらないと判断しました。

美術鑑定書事件(知財高裁平22年10月13日判決)

 美術品の鑑定等を業とするBが、ある画家の制作した絵画について鑑定証書を作成する際に、鑑定証書に添付するため絵画の縮小カラーコピーを作成した行為につき、その画家の相続人らが著作権侵害を主張しました。

 裁判所は、当該添付が「鑑定証書の偽造を防ぐため」であり「添付の必要性有用性が認められる」ことや、「著作物の鑑定業務を適切に行われることには、贋作の存在を排除し、著作物の価値を高め、著作権者等の権利保護を図ることにつながる」と述べて、コピーの添付が引用の目的に含まれると判断しました。

 そして、当該「コピー部分のみが分離して供されることは考え難いこと」、「絵画と別に流通することも考え難いこと」等から、コピーの添付は「その方法ないし態様としてみても、社会通念上、合理的な範囲にとどまる」と述べて適法な引用と判断しました。

XO醤男と杏仁女事件(東京地裁平成16年5月31日判決)

 全253ページの小説の中に、小説中の9箇所合計20頁にわたって、中国詩人の詩集中の9編の詩を翻訳して掲載しました。

 裁判所は、利用された9編の詩は全文であること、当該詩が本文中のストーリーの一部を構成していること、詩の利用目的が、それを批評したり研究したりするためではなく、本文中においてある場面における主人公の心情を描写するためであること、当該心情を描写するために必ずしも本件詩を利用する以外の方法がないわけではないことに加えて、題号の表示方法なども考慮し、正当な引用には当たらないと判断しました。

出所を明示する

 「出所の明示」については、著作権法48条1項1号[条文表示]に明示されている要件です。

 この出所の明示にあたっては、原則として著作者名を示す必要があります(著作権法48条2項[条文表示])。

 これ以上の細かなルールはありませんが、引用した著作物の題名(書籍名、論文名)、著作者名、ページ、Webページの場合アドレス等が多く使用されます。

著作者人格権を侵害しない

改変等は不可

 著作者には、「著作者人格権」という権利があります(著作者人格権の概要はこちら)。そして、「著作物の内容、題号を意に反して勝手に変えたり削ったりさせない権利」(同一性保持権)が、その一つです。

 それで、引用にあたっては、引用部分の著作物を改変しないようにします。

翻訳・要約の可否

 他方、引用のために翻訳を行うことは法律上許されています(著作権法43条2号[条文表示]

 他方、引用する著作物が長い場合には、要約して引用することは認められているでしょうか。この点、東京地裁平成10年10月30日判決(『「血液型と性格」の社会史事件』)は、他人の著作物をその趣旨に忠実に要約して引用することが許容されるとしています。

 もっとも、要約の可否は論者によって意見が別れていますし、要約の方法によっては原文の文意が変わってしまうことがありますから、十分に注意が必要です。

 


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