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営業秘密不正取得・利用行為等(2条1項4号~10号)

営業秘密不正取得・利用行為等(4号から10号)の概要

 不正競争防止法2条1項4号~10号は,営業秘密に係る不正行為を「不正競争」の一類型として定め、規制しています。すなわち、営業秘密を不正な方法で取得したり、第三者に開示したり、利用したりする行為を禁止しています。

 当然のことですが、企業にとって重要な事業上の資産には、不動産や設備といった有形物だけでなく、様々な営業上・経営上・技術上の情報が含まれます。そしてこうした営業秘密やノウハウの重要性はますます増しています。そのため、営業秘密を他社が不正に取得したり使用することの問題が深刻に捉えられるようになって、平成2年の不競法改正により、営業秘密に係る不正行為の類型を不正競争行為として規定しました。

「営業秘密」の要件

 不正競争防止法は、2条1項4号~10号において、営業秘密に関する7類型の不正競争行為を定めています。そしてこれらはいずれも「営業秘密」について規定しています。そこでまずは「営業秘密」の要件について考えます。

 具体的には、以下の要件が必要となります。

  • 秘密として管理されていること(秘密管理性)
  • 事業活動に有用な情報であること(有用性)
  • 公然と知られていないこと(非公知性)

 以下、各要件について検討します。

要件1~秘密管理性

 この要件で示されるように、単に第三者に知られていない秘密情報であるというだけでは「営業秘密」には当たらず、秘密として管理されている、という要件(秘密管理性)が必要です。このためには、主として以下の2個の要素が重視されてきました。

秘密管理性の2大要素

アクセス制限

 まず、当該情報にアクセスできる者が限定されていること(アクセス制限)が必要とされています。

客観的認識可能性

 また、営業秘密として保護したい情報については、秘密であることを表示する必要があります(「部外秘」「極秘」等の表示)。

 ただし、これらの要素をどこまで厳格に見るか否かについては、裁判所によって考え方に差が出ていますし、時代によって厳格な時期もあれば緩やかな時期もあります。詳細は、後述の裁判例のご紹介をご覧ください。

秘密管理性を考慮するに当たっての要素

 過去の裁判例を見ると、秘密管理性を判断するにあたっては、以下のような管理状況が考慮されてきました。

物理的管理
  • 施錠による管理
  • 施設への入退室制限
  • 秘密表示(マル秘といった表示)
  • 台帳による閲覧記録
  • 媒体の持出制限
  • 情報の返還や廃棄の管理
技術的管理
  • ID/パスワードの設定・変更・付与者の限定
  • 情報の機密性に応じたアクセス権者の限定・設定
  • 情報が保存されるサーバやコンピュターの外部ネットワークからの遮断
人的管理
  • 秘密保持契約の締結
  • 教育や研修の実施
  • 業務委託先の秘密情報の管理

秘密管理性が肯定された事例

 以下、秘密管理性が肯定された裁判例の事例を見ていきたいと思います。

原則論に即した考え方をした事例
東京地裁平成11年7月23日判決

 中国野菜輸入先目録・顧客名簿の秘密管理性が問題となった事例です。裁判所は、紙媒体のものについては「秘」の印が押印され、秘密書類保管庫に施錠保管し、鍵は代表取締役が管理して謄写も許されていなかったというケースで、秘密管理性を肯定しました。

東京地裁平成17年6月27日判決

 顧客情報のデータについての秘密管理性が問題となった事例です。裁判所は、顧客情報データベースへのアクセスのための個別のパスワードを毎月変更していたこと、ディスプレイに表示される情報も各部門が必要とする最小限度の願客情報が表示されるようなシステムを採用していたこと、プリントアウトにも関係役員の押印のある依頼書を要求していたこと、プリントアウトの操作手順を知る者も3名に限定していたこと、印字された名簿を外部に持ち出す場合には社長決裁を必要としていたこと、というケースで、秘密管理性を肯定しました。

東京地裁平成23年4月26日判決

 プラント図面・図表等についての秘密管理性が問題となった事例です。この例では、図面及びCADデータが記録されたFDが工場内の計測器室内に保管され、同室入り口扉に「関係者以外立入禁止」の表示がされていました。またFDケースに「持ち出し禁止」のシールが貼られていました。そして、工場は守衛常駐・守衛詰所で出入管理されていました。裁判所は、その図面については、工場の従業員は秘匿性が高い情報と一般的に認識していたと認定し、秘密管理性を肯定しました。

大阪地裁平成25年4月11日判決

 顧客情報のデータについての秘密管理性が問題となった事例です。この例では、専用ソフト利用にはユーザー名とPWの入力が必要あり(PW変更もあった)、従業員が私物PCにそのソフトをインストールする際には様々な義務が課された依頼書への署名が義務づけられ、実際には当該ソフトのインストールとアンインストール作業は、従業員個人ではなく作業担当者が行っていました。また、管理業務等を委託していた関連会社については、従業員にIDとPWが付与されてソフトのアクセス権限が付与され、委託契約においてで守秘義務が設定されていました。そして裁判所は、顧客情報の管理状況からすれば、顧客情報のアクセス権限者が同情報の秘密性を当然認識していると認定し、秘密管理性を肯定しました。

原則論を緩和した考え方をした事例
大阪地裁平成8年4月16日判決

 男性用かつらの販売・理容業の支店長が独立に際して顧客名薄を持ち出したという事例です。顧客名簿にはマル秘の印がつけられていました。また、顧客名簿の保管については、顧客からは見えないカウンター裏側に収納されており、施錠等がなかったものの、裁判所は秘密管理性を肯定しました。

大阪地裁平成15年11月13日判決

 コンビユータに保存されていた設計図の電子データを元工ンジニアが持ち出したことが問題となった事例です。裁判所は、バスワード等によるアクセス制限や秘密であることの表示等がなかったものの、全従業員数が10名であって電子データの取扱いは全従業員が認識していたこと、性質上情報へ日常的にアクセス制限が課せられないと判断し、秘密管理性を肯定しました。

 これは、企業規模が極めて小規模であったことや、持ち出した情報の性質といった特殊事情が大きく影響したものと考えられます。

大阪地裁平成25年7月16日判決

 ソフトウェアのソースコードの秘密管理性が問題となった事例です。裁判所は、一般に、商用ソフトウェアにおいてはコンパイルした実行形式のみを配布したり、ソースコードを納品しても開示しない措置をとったりすることが多く、開発者にとって、ソースコードは営業秘密に該当すると認識されていること、本件ソースコードの管理は必ずしも厳密であったとはいえないが、このようなソフトウェア開発に携わる者の一般的理解として、本件ソースコードを正当な理由なく第三者に開示してはならないことは当然に認識していた、等と判断して秘密管理性を肯定しました。

 これは、企業規模が極めて小規模であったことや、持ち出した情報の性質といった特殊事情が大きく影響したものと考えられます。

秘密管理性が否定された事例

 次に秘密管理性が否定された裁判例の事例を見ていきたいと思います。

東京地裁平成10年11月30日判決

 顧客名簿の秘密管理性が問題となった事例です。裁判所は、顧客名簿に秘密とする表示がなかったこと、そのプリントアウトが本立てに置かれており社員が自由に見ることができたというケースで、秘密管理性を否定しました。

東京地裁平成12年12月7日判決

 裁判所は、同種の書類中の一部のみに「マル秘」の押印があるにとどまっており、さらに同書類の内容がパソコンに保存されてパスワードが設定されていないというケースで、秘密管理性を否定しました。

知財高裁平成24年2月29日判決

 顧客名簿に相当する名刺ホルダー、ノート及びパソコンに登録されたデータの秘密管理性が問題となった事例です。書面については、従業員が3つの顧客名簿を容易に取り扱うことができる状況にあり、顧客名簿の情報が秘密であることを示す表示が付せられていませんでした。また電子データについては、顧客名簿のデータが保管戯れていたパソコンや入力データにはパスワードが設定されておらず、従業員は、当該パソコンを日常的に使用していました。また、顧客名簿に相当する名刺ホルダー等の保管についても厳しく指示されてはいませんでいた。以上のような事実関係のもと、裁判所は、秘密管理性を否定しました。

要件2・3~有用性と非公知性

有用性

 この要件で示されるように、ある情報が不競法による保護の対象となるためには、その情報が客観的に有用であることが必要であると考えられています。

 他方、企業が密かに行っている反社会的な行為、脱税などの違法行為に関する情報などは、「有用性」が認められないと考えられています。

非公知性

 非公知性については、一般的に、保有者の管理下以外では一般に入手できない状態をいいます。他方、守秘義務が課せられていない者が知っている情報について非公知性がないとされる可能性が高いと考えられます。

 また、相互に秘密保持義務を負う複数の者が知っている情報も、非公知性が失われることはないと考えられています。

営業秘密に関する不正競争行為の類型

営業秘密に関する不正競争行為の概観

 不正競争防止法が禁止する営業秘密についての不正行為は7類型ありますが、大きく分けると以下のように分類できます。これらの規定から、営業秘密の保護を十分に図ろうとする不正競争防止法の意図を見てとることができます。

不正取得型

 営業秘密を不正な方法で取得すること、又は不正取得されたものであることを知ってこれを取得使用すること

不正開示型

 与えられた営業秘密を不正な目的で使用、開示し、又は不正開示行為が介在した営業秘密をそれと知りつつ取得、使用すること

営業秘密に関する不正競争の7類型

 さらに細かく見ていくと、営業秘密に関する不正行為の類型は以下のとおりです。

4号

 営業秘密の保有者から窃取、詐欺、強迫、その他の不正な手段により営業秘密を取得する行為、及びその取得者本人が使用、開示する行為(4号)

5号

 不正取得行為があった事情を知りながら、又は知らないことに重過失がある場合で、営業秘密を取得する行為、及びその取得者本人が使用又は開示する行為(5号)

6号

 営業秘密を取得した時点では不正取得されたことを知らなかったが、後に、不正取得されたものであることを知った(又は重大な過失により知らなかった)にもかかわらず、その営業秘密を使用、開示する行為(6号)

7号

 保有者から提示された営業秘密を、不正競業その他の不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、営業秘密を使用、開示する行為(7号)

8号

 7号に規定された不正開示による取得であること、又は不正開示行為が介在していることを知りながら又は重過失によって知らないで、営業秘密を取得する行為、及びその取得者本人が使用、開示する行為(8号)

9号

 営業秘密を取得した時点では7号に規定された不正開示行為があった(又は介在したこと)ことを知らなかったが、後に、不正開示によって得られたものあることを知ったにもかかわらず(または重大な過失によって知らないで)、その営業秘密を使用、開示する行為(9号)

10号

 不正に取得した技術上の秘密を利用して製造された物品(「営業秘密侵害品」)を製造した者がその物を譲渡等する行為、又は、当該物品を譲り受けた者がこれを譲渡する行為(10号)

 ただし、後者については、その譲り受けた時に、その物が営業秘密侵害品であることを知っていたか若しくは重過失によって知らななかったであったことが必要です。

営業秘密不正取得・利用行為等に対する是正方法の概要

 不正競争防止法は、営業秘密不正取得・利用行為等に対して、以下のような是正方法を定めています。

差止請求(3条1項)

 不正競争行為によって営業上の利益を侵害される(おそれのある)者が、侵害の停止又は予防を請求することができます(不正競争防止法3条1項[条文表示])。

 なお、営業秘密に関する差止請求権(2条1項10号にかかる行為に対するものを除く)については、差止めの対象となる行為が継続する場合、当該行為があった事実と行為者を知った時から3年の消滅時効にかかります。また、当該行為の開始時から20年を経過した場合も、差止請求権を行使することができません(不正競争防止法15条[条文表示])。

廃棄除去請求(3条2項)

 侵害行為を構成した物、侵害行為によって生じた物の廃棄、侵害行為に供した設備の除却を請求することができます(不正競争防止法3条2項[条文表示])。

信用回復措置(14条)

 営業上の信用を害された者は、侵害した者に対して、信用の回復に必要な措置を取らせることができます(不正競争防止法14条[条文表示])。謝罪広告とか、取引先に対して謝罪文を発送させるなどの方法が考えられます。

損害賠償請求(4条)

 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は損害賠償の責任を負います(不正競争防止法4条[条文表示])。また、不競法5条は、損害額の推定の規定を定め、損害額の立証の困難性を緩和しています。例えば、その侵害者が侵害行為により利益を受けた額を損害額を推定するなどの規定を置いています。

 

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