不正競争防止法の概要

不正競争防止法とは

 不正競争防止法とは、事業者間において正当な営業活動を遵守させることにより、適正な競争を確保するための法律です。すなわち、公正な競争を阻害する一定の行為を禁止することによって、適正な競争を確保し、公正な市場を確保しようとしています。

 そして後述のとおり、不正競争行為に対する抑止を実効化するため、差止の請求や損害賠償請求を認めているほか、一定の重大な行為については刑事罰の適用も定めています。

不正競争行為の概要

 不正競争防止法によって禁止される行為をざっと挙げると、以下のとおりです。

周知表示に対する混同惹起行為(2条1項1号)

 広く知られた商品表示によく似た表示、類似表示を使用した商品を作り、売るなどして、市場において混同を生じさせる行為です

 詳細は、https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/fukyouhou/index/fuseikyousou_1gou/をご参照ください。

著名表示冒用行為(2条1項2号)

 他人の著名な商品表示を、自己の商品表示として使用する行為です。この場合、1号の場合と異なり、混同が生じなくとも違法となります。

 詳細は、https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/fukyouhou/index/fuseikyousou_2gou/をご参照ください。

商品形態模倣行為(2条1項3号)

 他人の商品の形態を模倣した商品を販売したりする行為です。

 詳細は、https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/fukyouhou/index/fuseikyousou_3gou/をご参照ください。

営業秘密不正取得・利用行為等(2条1項4号から10号)

 営業秘密を盗んだり、悪用したり、盗ませたりする行為です。なお、詳しくは後に述べるとおり、「秘密」といえるためには一定の要件があります。

 詳細は、https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/fukyouhou/index/fuseikyousou_4-9gou/をご参照ください。

限定提供データの不正取得等(2条1項11号~16号)

 2018年改正で設けられた規定です。データの利活用を促進するための環境を整備するため、ID・パスワード等により管理しつつ相手方を限定して提供するデータを不正取得等する行為を、新たに不正競争行為に位置づけました。

技術的制限手段に対する不正競争行為(2条1項17号、18号)

デジタルコンテンツのコピー管理技術、アクセス管理技術を無効にすることを目的とする機器やプログラムを提供する行為です(技術的制限手段の試験又は研究のために用いられる場合を除きます)。

不正にドメインを使用する行為(2条1項19号)

不正の利益を得る目的または他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示と同一または類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有し、又はそのドメイン名を使用する行為をいいます。

 詳細は、https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/fukyouhou/index/fuseikyousou_13gou-2/をご参照ください。

品質内容等 誤認惹起行為(2条1項20号)

商品の原産地、品質、製造方法等について、誤認させるような表示をしたりする行為です。

 詳細は、https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/fukyouhou/index/fuseikyousou_13gou/をご参照ください。

信用毀損行為(2条1項21号)

競争関係にある者の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は、流布する行為です。

 詳細は、https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/fukyouhou/index/fuseikyousou_21gou/をご参照ください。

代理表示等冒用行為(2条1項22号)

代理権や販売権が消滅したにもかかわらず、総代理店、特約店等と言った表示を承諾なく継続して使用する行為などです。

不正競争行為に対する是正方法の概要

 不正競争防止法は、不正競争行為に対して、以下のような是正方法を定めています。

差止請求(3条1項)

 不正競争行為によって営業上の利益を侵害される(おそれのある)者が、侵害の停止又は予防を請求することができます(不正競争防止法3条1項[条文表示])。

 この点に関する詳細は、不正競争行為に対する是正方法のページの該当箇所をご覧ください。

廃棄除去請求(3条2項)

 侵害行為を構成した物、侵害行為によって生じた物の廃棄、侵害行為に供した設備の除却を請求することができます(不正競争防止法3条2項[条文表示])。

 この点に関する詳細は、不正競争行為に対する是正方法のページの該当箇所をご覧ください。

信用回復措置(14条)

 営業上の信用を害された者は、侵害した者に対して、信用の回復に必要な措置を取らせることができます(不正競争防止法14条[条文表示])。謝罪広告とか、取引先に対して謝罪文を発送させるなどの方法が考えられます。

 この点に関する詳細は、不正競争行為に対する是正方法のページの該当箇所をご覧ください。

損害賠償請求(4条)

 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は損害賠償の責任を負います(不正競争防止法4条[条文表示])。また、不競法5条は、損害額の推定の規定を定め、損害額の立証の困難性を緩和しています。例えば、その侵害者が侵害行為により利益を受けた額を損害額を推定するなどの規定を置いています。

 この点に関する詳細は、不正競争行為に対する是正方法のページの該当箇所をご覧ください。

不正競争行為の適用除外

 以下のような場合は、不正競争行為に該当しないとされています。

普通名称・慣用表示の使用

概要

 商品(あるいは営業)につき、その商品(営業)の普通名称、又は、同一あるいは類似の商品(営業)について慣用されている商品等表示を普通に用いられる方法で使用し、又は、そのような表示を使用した商品を譲渡したりする場合には、1号、2号、14号、16号の不正競争行為にはなりません(不正競争防止法19条1項1号)。

 慣用表示とは、普通名称とは異なり、もともとは商品や営業を識別できる印として機能していたものが、同業者間で普通に使用されるようになり、特定の出所を示すものではなくなった表示をいいます。

「普通名称」に関する判断例

 裁判例上普通名称性が肯定された例としては、以下のようなものがあります。

  • 「トイレットクレンザー」(東京高裁昭和38年5月23日判決)
  • 「つゆの素」(名古屋地裁昭和40年8月6日判決)
  • 食酢の名称として「くろず」「玄米くろず」「本黒酢」(鹿児島地裁昭和61年10月4日判決)
  • 化粧品枠の名称として「ベゼル」(東京地裁平成3年2月27日判決)
  • クレオソートを主成分とする胃腸薬として「正露丸」(大阪地裁平成25年9月26日判決)
「慣用表示」に関する判断例

 裁判例上「慣用表示」が肯定された例としては、以下のようなものがあります。

  • 「プレイガイド」(東京地裁昭和28年10月20日判決)
  • 山口県川棚温泉の名物料理について「瓦そば」(東京高裁平成5年1月26日判決)

自己氏名の使用

 
自己の氏名を不正の目的でなく使用するような場合も、1号、2号、16号の不正競争行為にはなりません(不正競争防止法19条1項2号)。

先使用

 他人の商品等表示が需要者の間に広く認識される前からその商品等表示と同一・類似の商品等表示を使用する行為等については、2条1項1号の不正競争行為とはなりません(不正競争防止法19条1項3号)。なお、かかる先使用の主張に対しては、権利の侵害を受けたと主張する者は、先使用者に対し、混同防止表示を付加するように請求することができます。

 また、他人の商品等表示が著名になる前からその商品等表示と同一・類似の商品等表示を使用する行為等については、2条1項2号の不正競争行為とはなりません(不正競争防止法19条1項4号)。

形態模倣商品の善意取得者

 他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者(その譲り受けた時にその商品が他人の商品の形態を模倣した商品であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)がその商品を譲渡等を行う行為は、2条1項3号の不正競争行為とはなりません(不正競争防止法19条1項5号ロ)。

営業秘密に関する例外

 取引によって営業秘密を取得した者(その取得した時にその営業秘密について不正開示行為であること又はその営業秘密について不正取得行為若しくは不正開示行為が介在したことを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)がその取引によって取得した権原の範囲内においてその営業秘密を使用し、又は開示する行為は、4号~9号の営業秘密に関する不正競争行為とはなりません(不正競争防止法19条1項6号)。



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