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共同開発契約の解説と主要条項のポイント

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共同開発の意義と重要性

共同開発契約とは

 本ページでは、主としてハードウェア製品を念頭に、製品の共同開発契約のポイントと主要条項について概観します。

 共同開発とは、複数の会社が共同して、新技術、新製品、新サービスを開発する行為です。

 企業によって、それぞれの強みは異なります。得意な技術分野が異なることもあれば、ある特定のプロセスにも強弱があります。また、一方はコンセプトやノウハウを持ち、他方は商品化技術を持っていることもあります。それで、それぞれの強みを持ち寄って、シナジー効果を発揮させることや、開発期間を短縮したりリスクを分散させることが意図されます。

 また、企業同士のほか、企業と研究機関の共同開発というケースも少なくありません。

共同開発契約と収入印紙

 一般的に、共同開発契約書には、印紙税は課税されません。それは、このタイプの契約は、印紙税法に定める課税文書に該当しないからです。

 ただし、名目が共同開発であっても、実質は一方当事者が他方当事者に製品の開発を請け負わせるような請負契約と見られる場合は、印紙税法上の第2号文書(請負に関する契約書)に該当する余地があります。

共同開発契約のリスク

 共同開発契約には種々のリスクが生じえます。例えば、各当事者がそれぞれの技術情報や営業秘密を開示・交換することになり、秘密情報の漏えいの危険が生じます。

 また、共同開発契約においては取り決めるべきことが多く、それが各当事者の利害とも大きく関係し、行き違いや誤解があるとトラブルの原因となることになります。例えば、開発の役割分担、費用負担、成果についての知的財産権の帰属と取扱、第三者へのライセンスの扱い、量産時の利益配分の有無、等々が含まれます。

 よって、「書面による契約」が重要であり、1個1個の項目について慎重な吟味と交渉が必要となります。

独禁法時上の考慮

 共同研究開発については、主として参加者の中に競争関係にある事業者が複数含まれる場合、独占禁止法上の問題が生じるおそれがあります。

 この点、公正取引委員会は共同研究開発ガイドライン(「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」)を公表していますので、必要に応じて参照しつつ独禁法上の問題を検討していくことになります。

 この点、同ガイドラインは、独禁法の問題の有無につき、以下の各事項が総合的に勘案しつつ技術市場又は製品市場における競争が実質的に制限されるか否かによって判断するとしています。

[1] 参加者の数、市場シェア等
[2] 研究の性格
[3] 共同化の必要性
[4] 対象範囲、期間等

 なお、同ガイドラインは、製品市場において競争関係にある事業者間で行う当該製品の改良又は代替品の開発のための共同研究開発については、参加者の当該製品の市場シェアの合計が20%以下である場合には、通常は、独占禁止法上問題とならないとしています。

共同開発契約に先立つ契約

 経緯や背景に別の事情がある場合を除き、企業間でいきなり共同開発契約を締結するのではなく、共同開発契約の締結に至るまでの過程に応じた契約や合意がされることは珍しくありません。例をを挙げれば以下のとおりです。

秘密保持契約

 共同開発契約の締結に至るまでの過程で、両当事者が秘匿性の高い情報を相互に開示することは珍しくありません。それで、実務上は、開示する情報を秘密として取り扱うための秘密保持契約(機密保持契約)が締結されることが通例です。

 秘密保持契約についての解説のページもご参照下さい。

フィージビリティ・スタディに関する契約

 また、共同開発に入るか否かを判断する前提として、フィージビリティ・スタディ契約を締結することもあります。つまり、共同研究契約を締結する前に、相手方の技術力等を見極めて共同開発の成功可能性を判断するためのフィージビリティ・スタディを進めるための契約です。

共同開発契約の主要条項とポイント

 以下、共同開発契約の主要条項とポイントをご説明します。なお、以下のサンプルはもっぱら主要条項の説明が目的ですので、網羅性・完全性・各条項の整合性については検証していません。それでこれを雛形(ひな形)として使用することはご遠慮ください。

契約の目的

第*条(目的)
甲及び乙は、本契約の定めにしたがい、以下の開発対象物を、緊密な協力のもとに共同して開発するものとする。
(1)開発の内容:甲が開発したA素材(以下「本素材」という)を使用した、B分野の製品のC部品として使用される製品(以下「本製品」という)の開発
(2)目的:本製品の開発及び製品化

 当然のことながら、開発の対象物を契約に明示する必要があります。もちろん、契約締結の段階で対象物のすべての内容を明記することができないことが多いと思いますし、あまりに具体化しすぎると共同開発の範囲が狭くなりすぎてかえって契約目的を達成することができなくなるほか、対象物の変更の都度に契約修正が必要となるなどの弊害が生じおそれもあります。

 それで、合意できている開発対象物の内容の具体性や特定については、基本的な事項や方向性について誤解やずれを防ぐために具体性を重視しつつも、バランスも必要ということになります。

 なお、開発対象物について、本文中に記載することもあれば、別紙に詳細に定めることもあります。

共同開発の期間

第*条(開発期間)
1 本件開発の実施期間は、20**年  月  日から20**年 月 日までとする。
2 前項の開発実施期間は、甲乙両者の書面による合意により、必要な期間延長することができる。

 共同開発の期間を明記することは重要です。

 共同開発契約の期間を定めない場合、共同開発が事実上終了・中止しているのに、自社が提供したノウハウや知的財産が他社に使われっぱなしになって自社が不利益を被るといった問題が生じます。

 また、共同開発契約で競業禁止義務について規定される場合、共同開発が事実上終了・中止しているのに契約だけが残っていると、自社が同種の開発を独自で、または別の会社と共同で行おうと思う場合に無用な足かせとなることがあります。

共同開発の分担

第*条(共同開発の分担)
1 本共同研究開発における甲及び乙の各役割分担は、以下に定めるとおりとする。
(1)甲の役割
 ア 本製品の仕様の検討・策定
 イ 本製品の試作品の評価
 ウ 本製品の最終設計図面の作成
 エ 本製品の量産向け製品の評価
(2)乙の役割
 ア 本製品の仕様の評価
 イ 本製品の試作品の製作・修正・完成
 ウ 本製品の最終設計図面の評価
 エ 本製品の量産向け製品の製造・試験
2 前項に定める役割以外の業務を行う必要が生じた場合、甲及び乙は、当該業務の実施の有無、内容、各自の役割及び履行条件について協議して合意する。

規定のポイント1~役割に関する具体的な規定

 役割に関する条項については、共同開発に必要な作業を洗い出し、段階ごとの各作業について、いずれの当事者の役割なのかを定めます。

 当事者の役割分担のあり方は様々です。製品のモジュール別に分担するケース、一方はコンセプトやノウハウを提供し、他方が製品化を担当するケース、一方が設計から試作までを行い、他方が量産化のための開発を行うケースなどがあります。

 あるいは、一方が金銭や人材を提供し、他方が開発行為をするケースも、「共同開発」という括りで考えられることもあります。

 いずれにせよ、各当事者がそれぞれ担う役割を適切に実行するか否かは、共同開発の目的達成を大きく左右するこることになりますので、役割を明確に定めることは重要であるといえます。

規定のポイント2~不測の事態に関する規定

 共同開発においては、その過程で当初予期し得なかった業務が生じることもあります。こうしたことが障害とならないような規定を入れる必要がありますが、その性質上具体的に規定することは困難ですので、両当事者が誠実に協議して定めるといった条項とすることが多いと思われます。

知的財産権の帰属

第*条(知的財産権の帰属)
1 本件開発により得られた発明、考案、意匠、著作物、ノウハウなどの一切の知的成果物は、甲及び乙の共有とし、甲乙別段の合意がない限り、各自の持分は均等とする。
2 甲及び乙は、前項の本件開発の成果にかかる特許権、実用新案権、意匠権又はその他登録可能な権利について登録のための出願をなすときは、甲乙共同名義で行う。出願手続後の手続及び登録後の維持保全にかかる手続ついても同様とする。

規定のポイント1~知的財産権の帰属のあり方

 後々に紛争が生じることを避けるためにも、開発の成果やこれに含まれる知的財産権の帰属や利用・実施について規定する必要があります。

 上のサンプルのように共有とするケースは少なくないと思われます。持分比率はサンプルのように均等とするケースのほか、成果に対する貢献度が異なるといったケースでは、持分割合に差を設ける場合もあります。

 あるいは、他の定め方として、共同開発のテーマに属している場合でも、各当事者が単独の行為で得た知的財産は、各当事者に帰属し、共同で得た知的財産を共有とする、という定め方もあります。

規定のポイント2~権利出願についての定め

 また、得られた知的財産について特許などとして出願する場合の定めについても定めます。上のサンプルでは、共有とすることを前提に、甲乙共同名義で行うとしていますが、そもそも出願をするか否か、出願するとして権利の範囲をどうするか、出願後に拒絶を受けた場合にどこまで手続を行うか、その他の点で甲乙の意見が合わない場合にどうするのかといった点も定めるとよいでしょう。

第三者との共同研究開発の制限

第*条(第三者との共同研究開発の制限)
 甲及び乙社は、本共同開発期間中、相手方の書面による事前の承諾なく、本共同開発と同一又は類似する研究又は開発を第三者と共同で行わず、第三者に同様の開発を委託し、若しくは第三者から開発を受託してはならない。

規定のポイント1~第三者との競合する共同研究開発の制限の明示

 共同開発においては、共同開発期間中に当事者が第三者との間で同一又は類似の研究開発を行うことを制限する取決めを行うことが少なくありません。このような制限が必要と考える場合、契約書にその旨を明示する必要があります。

規定のポイント2~禁止の範囲の定め方

 もっとも、競合する開発の禁止の範囲については、できるだけ具体的にする必要があります。これが曖昧だと紛争の原因になりかねないからです。この点、上のサンプルで「類似」とある点は、場合によっては「類似」の範囲をより具体的に定めるほうが適切といえます。例えば、「類似の研究・開発とは、●●●●組成物からなる●●用の●●製品にかかる研究を又は開発とする」などと規定できるかもしれません。

 
 


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