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5.1.2 特許侵害の要件~「業として」「特許発明」とは

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特許侵害の要件

 第三者や競合他社の製品が一見自社の特許発明を使っているように見えたとしても、特許侵害と即断することはできません。特許侵害か否かの判断にはしばしば、技術的に、また法的に難しい論点が絡むことがあります。以下、特許侵害の判断についての基礎的な考え方をご説明します。

 特許権者は、特許法によって、「業として特許発明の実施をする」権利を独占できる旨が定められています(特許法68条[条文表示])。したがって、特許権を侵害する行為とは、第三者が当該独占権を侵害すること、つまり、特許権者の許諾なく、「業として特許発明を実施する」ことをいいます。

 言い換えれば、特許権の侵害行為とは、(1)「業として」、(2)「特許発明」を、(3)「実施し」、(4)その実施について「権原がない」ことが必要といえます。

 そこで以下、上の各要素について簡単にご説明します。本ページでは、(1)「業として」と、(2)「特許発明」についてご説明します。(3)「実施し」については、こちらをご覧ください。また、(4)の「権原がない」ことについては、こちらをご覧ください。

「業として」とは

概要

 「業として」とは、種々の説があるものの、大筋、「事業に関連した経済活動の一環としてなされるもの」と解されています。そのため、例えばある特許発明に該当する製品を家庭の主婦が手作りで製作して家事に使用しても、これは「業として」とはいえません。

 他方、営利性は不要と解されています。営利事業ではない公共事業として特許発明を実施する行為や、非営利団体の事業であっても「業として」に当たります。ある会社が、特許発明に該当する製品を製造・販売する行為は、それが特注品であって1回限りの製造であり、反復継続しないとしても、通常は、「業として」に該当するといえます。

「業として」についての判例

 この点の判例は多くはありませんが、例えば「受水槽事件」(大阪地裁平成3年9月30日判決)は、京都府が出資し、第三セクター方式により設立された被告会社が、卸売市場全体に水を供給する施設として実用新案権の侵害物件を使用していたケースです。

 裁判所は、被告の行為について、「その事業に関連ある経済活動の一環としての行為であるから、『業として』本件考案を実施する行為に該当し、本件実用新案権を侵害する」と判断しました。

「特許発明」とは

「特許発明」の範囲の考え方

 「特許発明」については、説明するまでもないと思われるかもしれませんが、頭に入れなければならないのは、特許発明としての権利範囲は、原則として「特許請求の範囲」に記載されていた発明である、という点です。

 例えば、第三者が製造している製品が、自社の特許に関する明細書の、ある実施例と非常によく似ているとします。この場合でも、当該他社製品が「特許請求の範囲」に記載された発明と異なる場合には、原則として特許侵害とはいえません。もっともこの場合も、「均等侵害」や「間接侵害」が成立する余地はあります。

均等侵害については「均等侵害について」のページで、間接侵害については「間接侵害について」のページで、それぞれ解説します。

「特許発明」との抵触性の判断方法

判断手法の概要

 では、ある製品などが、「特許請求の範囲」に抵触しているか否かはどのように判断するでしょうか。具体的には、以下の手順で判断します。

(1) 特許請求の範囲に記載された発明を構成要件に分説する
(2) 侵害疑義製品を、(1)の構成要件に対応するよう、同様に分説する
(3) 前記(1)の構成要件と、(2)の構成とを対比する
(4) 対比の結果、すべての構成において、(1)と(2)との間で相違がない場合、侵害と判断される
(5) 他方、対比の結果、一部の構成において、(1)と(2)との間で異なる部分がある場合、原則として、非侵害となる

判断手法の例

 例として、以下のような架空事例を取り上げてみたいと思います。ここでは、特許請求の範囲(クレーム)として、以下のようなものであるとします。

【特許請求の範囲】

鉄合金材の表面を研磨するための化学研磨剤であって、物質甲10~20重量%、物質乙5~15重量%、物質丙8~15重量%、及び水40~60重量%を含む水溶液からなることを特徴とする鉄合金材用化学研磨剤。

 この場合、構成要件は以下のように分説されます(ただし、分説の仕方は人によって若干異なります)。

鉄合金材の表面を研磨するための化学研磨剤であって、
物質甲10~20重量%
物質乙5~15重量%
物質丙8~15重量%
水40~60重量%
を含む水溶液からなることを特徴とする鉄合金材用化学研磨剤

 次に、侵害疑義製品についても、同様に分説し、特許請求の範囲を比較します。比較した結果は、以下のようなものであったとします。

符号 特許請求の範囲 侵害疑義製品
鉄合金材の表面を研磨するための化学研磨剤であって、 鉄合金材の表面を研磨するための化学研磨剤であって、
物質甲10~20重量% 物質甲12重量%
物質乙5~15重量% 物質乙7重量%
物質丙8~15重量% 物質丙0重量%
水40~60重量% 水59重量%
を含む水溶液からなることを特徴とする鉄合金材用化学研磨剤 を含む水溶液からなることを特徴とする鉄合金材用化学研磨剤

 この場合、侵害疑義製品は、構成要件Dを充足していませんから、原則として非侵害、ということになります。ただし、均等侵害又は間接侵害となる可能性はないわけではありません。

 こいずれにせよ、以上が特許侵害の判断の基本的な手法であり、上のような表を「クレームチャート」と呼ぶことがあります。

 

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