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5.2.3 「消尽」と並行輸入~特許侵害主張への抗弁

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特許侵害と「消尽」

問題の所在

 特許権者は、特許法によって、「業として特許発明の実施をする」権利を独占できる旨が定められています(特許法68条)。したがって、第三者が、特許権者の許諾なく、「業として特許発明を実施する」場合、その実施行為は、通常は、権原のない実施行為として特許権を侵害することとなります。

 しかし、特許権者の許諾のない実施行為であっても、一定の「権原」が認められることがあります。その一つが「消尽」という考え方(法理)です。以下この点についてご説明します。

「消尽」とは

 特許法には、「実施行為独立の原則」という原則があります。つまり、ある製品は、「製造」→「卸売」→「小売」→「使用」というプロセスを経ることが少なくありませんが、その各行為は、いずれも特許の実施行為に該当します。それで、理論上は、特許権者が製造した製品を正常な流通過程で仕入れた事業者が販売する場合でも、特許権者は、その販売事業者を気に入らなければ、「販売」の行為を差し止めることができる、という解釈もなくはありません。

 しかし、製造者が、自らの特許権や実施権に基づいて製造した製品を、正常な流通過程で仕入れた事業者がこれを販売する行為が特許権侵害と判断されるとすれば、明らかに常識に反するおかしな結果となり、商品の流通は大きく妨げられてしまいます。

 そのため、このような場合、その製品については特許権者からの出荷の時点で特許権が「消尽」し、その後の正常な流通過程においてなされる販売などの実施行為は、特許権侵害とはならないと考えられています。これを消尽論といいます(「インクカートリッジ事件」最高裁平成19年11月8判決)。以下、消尽論が問題となってきたケースについてご説明します。

国内消尽

 この消尽論は、国内での流通についてはほぼ異論なく認められている考え方です。

 通常国内消尽が問題となるケースは多くありませんが、リサイクル品や、正規品の第三者による修理・改造について、判例上問題となってきました。この点は、こちらをご覧ください。

並行輸入と国際消尽

並行輸入についての裁判所の考え方

 他方、いわゆる国際消尽については、並行輸入との関係で大いに問題となってきましたが、最高裁は、一定の範囲で並行輸入が特許権侵害とならない旨判断しました。ただし、最高裁は、特許権の国際消尽は否定した上で、別の理由付けで並行輸入を認めています。

 すなわち、「BBS事件」(最高裁平成9年7月1日判決)は、我が国の特許権者又はこれと同視し得る者が国外において特許製品を譲渡した場合」特許権は行使できない、と述べました。

 ただし、例外として、(i)特許権者と譲受人おいて、当該製品について販売先ないし使用地域から日本を除外する旨を合意したこと、また、(ii)特許製品にこれを明確に表示した場合、を挙げています。

「同視しうる者」

 まずここで、「特許権者又はこれと同視し得る者」とありますが、ここでいう「同視しうる者」とは何を指すのでしょうか。

 この点は明確な答えがあるわけではありませんが、一般には、親会社、子会社や関連会社といった、特許権者と同一企業グループに属する会社は含まれると考えられます。

 また、資本関係のないライセンシーが含まれるか否かは不明ですが、含まれる余地はあると考えられます。

「除外の合意」の表示の問題

 また「販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨」の合意を製品に表示するのは、どのように行えるでしょうか。

 この点、関税定率法基本通達は、「製品の本体又は包装に刻印、印刷、シール、下げ札等により、通常の注意を払えば容易に了知できる形式で当該製品について販売先ないし使用地域から我が国が除外されている旨の表示がされている場合で、当該製品の取引時にはその旨の表示がされていたことが輸入時において確認できる場合」との基準を示しています。

 もっとも、当該表示は、「Not for sale in Japan」といった英文でもよいのか、日本語である必要があるのか否かは不明です。

 

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