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6.2 特許関連契約~特許プール解説

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標準化と特許

標準化の必要性

 本稿では、特許ライセンスの一態様である特許プール(パテントプール)をめぐる法律上の問題についてご説明します。

 この点、まずは、パテントプールと深い関わりのある標準化と特許の関係について考えることとします。

 例えば、携帯電話といった無線通信について考えてみると、標準化の必要性は明らかです。もしメーカーごとに、また通信キャリアごとに、各自がそれぞれ独自の仕様・規格で携帯電話の端末を製造したり、通信方法を取ったりするならば、携帯電話はお互いにつながらなくなったり、同じキャリアで同じメーカーの携帯電話どうししかつながらなくなったりし、大変に不便なことになります。

 そうすると、そもそも携帯電話自体普及が大きく妨げられることでしょう。そこで、無線通信に関係するメーカ、キャリアなどが、各社が共通して使用できる標準規格を制定し、同じ標準規格を広く使用することによって、携帯電話の普及を図ることができますし、実際にそうしてきました。

標準化、特許の矛盾とパテントプール

 しかしここで、一つの問題が生じます。それは、当該技術に関して、各社が保有している特許との関係の問題です。標準規格制定に参加した会社が、自社の特許技術が当該標準規格に取り込まれるよう働きかける場合もあります。この場合、その会社は、予め、標準規格に取り込まれた自社の特許発明を合理的・非差別的に(いわゆるRAND条件(*)で)ライセンスする旨を表明しますので、通常は当該特許を理由に独占権の行使はされず、規格の制定自体の妨げとはなりません。

 しかしここで、別の問題が生じることになります。つまり、制定された標準規格に必須の特許を持っている各社が、当該標準規格を使用する他社に対し、各自がそれぞれ実施料を設定してしまう場合です。各社が設定する実施料はそれぞれ低いものであっても、当該標準規格に多くの必須特許が含まれる場合、標準規格を使用するライセンシーが支払う実施料は高額になってしまいます。例えば、ある標準規格に50社の特許が含まれるとし、各社が個別に0.5%という低い料率の実施料を設定しても、合計すると25%という料率になってしまうわけです。

 そこで、多数の特許が個別にライセンスされることによる特許の実施料の高額化を防ぎ、当該規格の普及を図るために、パテントプールという仕組みが作られました。つまり、ある標準規格に必須な特許(規格必須特許)をできる限り集め(プールし)、標準規格使用者に、これら必須特許を一括して合理的な料率でライセンスするという仕組です。

 パテントプールの仕組をごくおおざっぱにいうと、最初に特許プール管理会社(License Administrator)を設立します。そして、プールに参加する必須特許の保有者が、管理会社に実施許諾権を付与します。方式としては、特許権者から管理会社にサブライセンス権を付与する場合と、ライセンスは特許権者からライセンシーに直接される場合があります。

 いずれにせよ、管理会社がプール参加者の必須特許のライセンスを取りまとめ、当該標準規格の使用者(ライセンシー)は、その管理会社に一括してライセンスを申込、やりとりはその管理会社と行い、一括して特許許諾が受けられます。そして、標準規格の使用者であるライセンシーが支払った特許実施料は、管理会社が集計し、各権利者に特許件数に応じて支払います。

(*) RAND条件

 RANDとは、Reasonable and Non-Descriminatory の略です。FRAND(Fair, Reasonable and Non-Descriminatoryt)と言われることもあります。その内容(特にReasonableの意味)は、実際は曖昧な部分がありますが、少なくとも、合理的条件でライセンスを受けようとする者を差別的に取り扱わず、差止請求を行使しないという意味を持ちます。

 しかしなぜ、特許権を持っている者が独占権の行使を選択せず、あえてRANDを表明するのでしょうか。それは、特に情報通信やエレクトロニクスの分野を中心に、有用な新技術に関連した特許を全部1社で(又は少数で)保有できるというケースが少なくなっているからです。

 そして、ある技術について、特許を保有する各社が、相互に高額の実施料を求めたり差止請求を行ったりという戦いを繰り広げると、結局その技術自体早々に見捨てられて他の代替技術に取って代わられ、その技術が普及せず、短命なもので終わってしまいます。

 それで、各社が自己の利益の短期的な最大化を図るような行動によって全体として当該技術自体を葬ってしまうよりも、相互に一歩譲って、RAND条件を表明してパテントプールを作り、当該規格を普及させて広く浅く実施料を得ることが得策と考えている、というわけです。

特許プールのメリット・デメリット

 以下、特許プール(パテントプール)のメリットとデメリットについて見てみます。

パテントプールのメリット

ライセンス交渉の効率化

 多数の必須特許を含む標準化技術を使用したいと思う場合、ライセンシーは、仮にパテントプールがなければ、多数の権利者と、多数の必須特許のライセンスについて、交渉を持つ必要があります。一般的には、1社とのライセンス交渉も合意に至るまで長期間を要します。したがって、それが多数の権利者との交渉には、さらに膨大な時間を要します。

 他方、パテントプールを通じたライセンスの場合、ライセンス交渉は、そのライセンス管理会社と交渉するのみであり、かつ実施料が最初から一定の基準があるため、効率的かつ迅速にライセンス交渉ができます。

ロイヤリティ収入獲得の容易化

 標準化技術に関する必須特許をパテントプールを通じてライセンスする場合、必須判定をクリアさえすれば、比較的容易にロイヤリティ収入を得ることが期待できます。

 一般に、任意に実施料を支払う意思のない他企業から実施料を支払ってもらうのは容易なことではありません。侵害の立証は多くの場合困難ですし、相手方が当該特許の無効を、無効審判の請求や無効の抗弁という形で主張してくることは珍しくありません。加えて、相手方が、特許侵害を回避するよう、製品の設計変更を行うこともあります。

 他方、ある標準規格を利用している場合、基本的にはその必須特許を実施していると考えざるをえないといえますし、当該標準規格の利用に関する部分は設計変更もできません。また、特許の無効を主張するとしても、あるパテントプールへのロイヤリティ支払を回避するためには、当該プールに登録された特許の全部を無効にしないといけませんが、コスト面を考えても現実的とはいえません。また、一部の特許を無効としても、パテントプールに支払う実施料に大差ありません。

そして、パテントプールのライセンス条件は、ロイヤリティとしても合理的なものであることが多く、あえて膨大なコストと手間をかけてあえて特許プールに含まれる特許について争うよりもむしろ、ライセンスを受けるという選択肢を取ることが合理的と判断することが多いわけです。

実施料の低額化

 前述のとおり、多数の必須特許権者から個別にライセンスを受けると、1社あたりでは低額の実施料が積み上がって高額となります。例えば、ある標準規格に50社の特許が含まれるとし、各社が個別に0.5%という低い料率の実施料を設定しても、合計すると25%という料率になってしまいます。

 この点、パテントプールを通じたライセンスでは、ロイヤリティの累積の上限の料率が設定されており、現実的に利用可能な料率で多数のライセンスを受けることが可能です。

紛争回避

 前述のとおり、通常の一対一の交渉で特許ライセンスを得ることは相当の手間であり、相手方も様々な手段で争う場合が少なくありません。しかし、標準規格のパテントプールを通じたライセンスの場合、標準規格の利用者はあえてコストと手間が関わる割に実益の乏しい「争う」道を選ばず、ライセンスを受けることを選択することが少なくありません。

 そのため、パテントプールには紛争回避効果があるともいえます。

特許プールのデメリット

無効特許の混在

 パテントプールにおいては、登録される特許について必須判定というプロセスがあります。つまり、当該特許のクレームが、当該標準技術の実施にとって必要不可欠であることが審査され、判定されます。

 他方、プールに登録された特許の有効性については、必須判定のプロセスでは審査の対象はなっていません。それは、特許庁の審査を経て登録された特許である以上有効であると扱って差し支えない上に、個別の特許について徹底して無効理由の判断を行うことは、時間面、労力面、コスト面で現実的ではないためです。

 そのため、パテントプールの中に、無効審判等によって結果的に無効となる特許が混在する可能性は否定できません。

独占禁止法との抵触の問題

 パテントプールは、集団で共同でライセンスをするという点で、制度の本質上独占禁止法との抵触の可能性があります。そのため、パテントプールの中には、制度を構築し運用する前に、米国・欧州・日本の各競争法当局のクリアランスを得るというケースもあります。

 もっともこの点についても、これまでの各競争法当局から出された見解やガイドラインに沿った運用が行われている限りは、基本的には独占禁止法との抵触の問題は起こりにくいと考えられます。

 


 このページは書きかけです。加筆次第おって公開します。



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