5.1.1 特許侵害の考え方~概要

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「特許侵害」とは

はじめに

ここでは、「特許侵害」とは何をいうのか、概要をご説明します。つまり、特許権の侵害とは、どのような場合を言うのか、侵害されているかどうかは、どのように判断すればよいか、ということです。

特許権の権利範囲

 特許侵害につき理解するためには、特許権の権利範囲を理解する必要があります。そして、特許権の権利範囲は、原則として「特許請求の範囲」(クレーム)の記載によって定められます。

 この点例えば、第三者が製造している製品が、自社の特許に関する明細書に掲載された、特定の「実施例」と非常によく似ているとします。しかしこの場合にも、「侵害だ」と速断することはできません。侵害の有無は、クレームと当該他社製品を比較する必要があるからです。

 そして、当該他社製品が、一見似ていると思っても、「特許請求の範囲」に記載された発明に抵触しなければ、原則として特許侵害とはいえません(もっともこの場合も、「均等侵害」や「間接侵害」が成立する余地はあります(*)。)。

(*) 均等侵害については「均等侵害について」のページで、間接侵害については「間接侵害について」のページで、それぞれ解説します。

特許侵害の判断方法

判断手法の概要

 では、ある製品などが、特許の権利範囲、つまり「特許請求の範囲」に抵触しているか否かはどのように判断するでしょうか。具体的には、以下の手順で判断します。

(1) 特許請求の範囲に記載された発明を構成要件に分説する
(2) 侵害疑義製品を、(1)の構成要件に対応するよう、同様に分説する
(3) 前記(1)の構成要件と、(2)の構成とを対比する
(4) 対比の結果、すべての構成において、(1)と(2)との間で相違がない場合、侵害と判断される
(5) 他方、対比の結果、一部の構成において、(1)と(2)との間で異なる部分がある場合、原則として、非侵害となる

判断手法の例~具体例(架空事例)

 上の説明だけだと抽象的で分かりにくいと思いますので、具体例として、以下のような架空事例を取り上げてみたいと思います。ここでは、以下のような特許請求の範囲(クレーム)を持つ特許発明を考えます。

特許請求の範囲

鉄合金材の表面を研磨するための化学研磨剤であって、物質甲10~20重量%、物質乙5~15重量%、物質丙8~15重量%、及び水40~60重量%を含む水溶液からなることを特徴とする鉄合金材用化学研磨剤。

構成要件の分説

 この場合、構成要件は以下のように分説されます(ただし、分説の仕方は人によって若干異なります)。

鉄合金材の表面を研磨するための化学研磨剤であって、
物質甲10~20重量%
物質乙5~15重量%
物質丙8~15重量%
水40~60重量%
を含む水溶液からなることを特徴とする鉄合金材用化学研磨剤

侵害疑義製品の分説と比較(クレームチャート)

 次に、侵害疑義製品についても、同様に分説し、特許請求の範囲を比較します。比較した結果は、以下のようなものであったとします。

符号 特許請求の範囲 侵害疑義製品
鉄合金材の表面を研磨するための化学研磨剤であって、 鉄合金材の表面を研磨するための化学研磨剤であって、
物質甲10~20重量% 物質甲12重量%
物質乙5~15重量% 物質乙7重量%
物質丙8~15重量% 物質丙2重量%
水40~60重量% 水59重量%
を含む水溶液からなることを特徴とする鉄合金材用化学研磨剤 を含む水溶液からなることを特徴とする鉄合金材用化学研磨剤

抵触の有無の判断

 そして、上のような場合、侵害疑義製品と特許発明はよく似ていることは事実です。しかし、当該製品は、構成要件A~C、E、Fを充足するものの、構成要件Dを充足していませんから、原則として非侵害、ということになります(ただし、均等侵害又は間接侵害となる可能性はないわけではありません)。

 つまり、ある特許の侵害といえるためには、特許請求の範囲(クレーム)に記載された構成要件の「すべて」を充足することが必要であるということになります。そのため、ある製品が、そのの構成要件の一部でも欠く場合には、原則として特許権侵害は成立しない、ということになります(もっともこの場合も、「均等侵害」や「間接侵害」が成立する余地はあります(*)。)。

(*) 均等侵害については「均等侵害について」のページで、間接侵害については「間接侵害について」のページで、それぞれ解説します。

 

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