2006-03-25 フランチャイズチェーン事業と説明義務

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

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事案の概要

H18. 1.31 福岡地方裁判所判決

A氏が,B社(コンビニエンスストアのフランチャイザー)との間でフランチャイズ契約を結んでコンビニエンスストアを開店しましたが,営業不振で閉店を余儀なくされました。そこで,B社が,フランチャイズ契約締結に先立って客観的かつ的確な情報を開示するなどの義務を怠ったとして,損害賠償の支払いを求めて裁判を起こしました。

判決の概要

【結論】

 請求認容

【理由】

 コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンの事業本部(フランチャイザー)は,出店予定者(フランチャイジー候補者)に対して,客観的かつ的確な情報を提供する信義則上の保護義務があるところ,本部の社員が,不正確な情報を出店予定者に提供したり,マイナス情報を秘匿することは保護義務違反に当たる。

 フランチャイザーが保護義務に違反したときは,その情報を信頼して契約関係に入ったフランチャイジーに対して,その契約を結んだことでフランチャイジーが被った損害を賠償する必要があるが,損害額のうち賠償すべき金額を定めるにあたっては,フランチャイジー側の落ち度も考慮される。

 以上の理由から,裁判所は,A氏の開店準備資金,店舗の累積赤字,逸失利益(仮にA氏コンビニエンスストアを開かず,他に就労していたと仮定した場合の収入)の損害賠償を認めました。

解説

【フランチャイズ・システムの特徴】

 フランチャイズ・システムは,フランチャイジー(加盟店)にとっては,フランチャイザー(本部)から,経営ノウハウの提供を受け,信用ある商標,商号の使用と優れた商品の販売が可能となるなど,個人又は小規模経営では得られないメリットを享受することができるとされ,他方,本部にとっては,多店舗展開のスピード,出店コスト削減の面でメリットがある,といわれています。

 フランチャイズ契約は,法的には,加盟店と本部は,あくまでも別個独立した事業者であり,フランチャイズ契約は,両当事者の責任において締結します。つまり,加盟店は,本部の従業員として本部と雇用契約にあるものではなく,自己の資本を投下し,リスクを認識しつつ自己の責任で事業を行うというものが本来の姿です。

【フランチャイズ契約における保護義務】

 一般に,別個独立した事業者間の契約においては,両者が対等な立場にあると考えられ,一方が他方の利益を保護すべき保護義務という考え方は生じません。もちろん詐欺や虚偽の事実を告知することは交渉手段として許されるものではありませんが,自分の利益は自分で守るというものが原則であり,取引相手に対し,自己に不利益な情報を開示しないという行為も,ただちに取引上の信義則に反するとはいえないことが一般的です。

 しかし,フランチャイズ契約の場合は,法的には別個独立の事業者間の取引ですが,実態としては,フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)との間に,事業に関する知識,法律面での知識において差が著しい場合が多く,上で述べた一般原則をそのまま当てはめると,本部が,取引上の重要な情報を操作し,加盟店の知識不足に乗じて不当な取引をする可能性があります。そのため,本部と加盟店を実質的にも対等の立場に置き,加盟店に法律上の保護を与えるため,必要かつ客観的な情報を積極的に提供する義務を,フランチャイザー(本部)に課すべきである,という議論が生じました。

 今回の判例も,まさにこれを正面から認めた判決です。もっとも,すべての判例がこの信義則上の情報開示義務の存在を認めているわけではありませんが,これを認める判例が増えています。

【情報開示義務の範囲】

 上記のとおり,フランチャイザーがフランチャイジーに対して,契約締結段階において積極的な情報開示義務を負う場合があるとして,具体的にどんな内容を開示する必要があるでしょうか。

 公正取引委員会は「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」を公表しています。そこには「本部が,加盟者の募集に当たり,その誘引手段として,重要な事項について,十分な開示を行わず,又は虚偽若しくは誇大な開示を行ったときは,不公正な取引方法の一般指定の第8項(ぎまん的顧客誘引)に該当するおそれが」あるとされています。

 具体的な開示事項には,①商品等の供給条件,予想収益等,②事業活動上の指導の内容・方法、費用負担等,③加盟にさいして徴収する金銭の性質,金額,その返還の有無・条件,④加盟者が定期的に払うべき金銭の額等,⑤損失補償等,⑥契約期間,更新・解除等が含まれています。また,予想収益などを示す場合には,類似した環境にある既存店舗の実績など根拠のある事実に基づくべきであるとしています。もちろん,具体的な紛争においては,開示事項はケース・バイ・ケースで異なりますが,一つの目安になるものと思われます。

【契約前にチェックすべきこと】

 もっとも,加盟店になることを考えている場合,フランチャイズ契約締結にあたり,できる限り適切な情報を得た,契約の内容を理解してチェーン本部と契約し,紛争を避けることのほうが遙かに重要であることはいうまでもありません。それは,失敗した後に損害賠償の請求が必ず認められるとは限りませんし,損害の全額が認められる可能性は低いからです。

 この点,経済産業省では,各チェーン本部毎の事業概要や契約内容等をインターネット上で公開しており,各本部の契約内容を比較,検討して慎重に吟味する上で役立つといえます。

http://frn.jfa-fc.or.jp/

 特に紛争事例として多いのは,本部が加盟店を募集する際に提示する「売上予測」「損益予測」と,実際の経営実態が異なることによるトラブル,店舗を開店できないにも関わらず加盟金が返還されないといったトラブル,ロイヤルティの算定方法についてのトラブル,本部の加盟店に対する過剰な違約金を請求するケースです。特にこれらの点については十分な吟味が必要でしょう。



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