2014-10-21 事業場外みなし労働時間制

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

学術的・難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。メルマガの購読(購読料無料)は、以下のフォームから行えます。

登録メールアドレス   
<クイズ> 
 これは、コンピュータプログラムがこの入力フォームから機械的に送信することを防ぐための項目です。ご協力をお願いいたします。
 

なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

以下の検索ボックスを利用して、トピックページ(メルマガバックナンバー)から検索できます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1 今回の判例  事業場外みなし労働時間制
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

最高裁平成26年1月24日判決

 A氏は、人材派遣会社B社に雇用されており、募集型の企画旅行の期間、旅行会社C社に派遣されて海外旅行添乗員の業務を行っていました。A氏は、未払いの時間外割増賃金・深夜割増賃金があると主張して、B社に対し割増賃金と付加金を請求しました。

 これに対し、B社は、当該添乗業務が労基法38条の2の事業場外みなし労働時間制が適用されるとして争いました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 裁判所の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 裁判所は、以下の各点を含む事情を総合考慮して、事業場外みなし労働制は適用できないと判断しました。

● 添乗業務は、旅行日程や目的地等業務の内容があらかじめ具体的に確定されており、添乗員が自ら決定できる範囲や選択の幅は限られている。

● C社から添乗員に対しては、日程表・マニュアル等により具体的な業務指示がなされている。

● 添乗員は携帯電話に常時電源を入れておく義務があり、旅程管理上重要な問題や変更の必要が発生したときには、C社に報告し、個別の指示を受けることが求められていた。

● 業務内容について、出発地、発着地、観光地や観光施設、出発時刻、到着時刻等を添乗日報に詳細・正確に記載して報告する義務があり、C社はツアー参加者のアンケートや関係者への問合によってその正確性を確認することができた。

● 以上から、C社の具体的な指揮監督が及んでおり、添乗員の勤務状況の把握が難しいとはいえない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(1)事業場外みなし労働時間制とは

 事業場外みなし労働時間制とは、労基法38条2項に定める制度であり、「労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いとき」に、所定労働時間または当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす制度です。

 そして、この制度の適用の可否にあたり問題となるのは、前記事例でも争われたように、「労働時間を算定し難いとき」に該当するか否かです。そしてその判断は、前記事例のとおり、業務の性質、内容やその遂行の態様・状況等、会社と従業員との間の業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様等から、業務実態に照らして判断されることになります。

(2) 実務上の留意点

 一昔前であれば、例えば外回りの営業職であれば、いったん社外に出てしまうとどこで何をやっているか分からないという状況もあったと思います。しか近年は、より多くの成果を挙げるため、またITや通信環境の発達もあって、会社が外勤の従業員を管理する度合いが強くなってきている会社も少なくないと思われます。
 
 例えば、その日の訪問予定がすべてグループウェアに登録されて管理されており、そのスケジュールにそって行動することが義務づけられているかもしれません。また、外出中は常に携帯電話を持っており連絡が取れる状態になっており、逐一会社の指示を受けるといった状況もありえます。さらに、帰社後、営業日報を作成し、上司に報告を行って指導を受ける、という状況もあるかもしれません。

 そして、これまで事業場外みなし労働制を採用しており、過去には適法だったとしても、運用の変化の結果、同制度の適用要件を満たさなくなり、後に残業代の請求を受けるリスクが実は生じているといった事態が想定されます。それで、過去に外勤の営業職等について事業場外みなし労働時間制を採用して運用してきたケースでも、最近の業務実態にあわせて当該制度の適否を見直すことも必要かもしれません。

 なお、事業場外みなし労働時間制度は、あくまでも労働時間算定についての例外です。それで、例えば法定労働時間を超えるみなし労働時間を設定した場合には、36協定や時間外労働に対しての割増賃金の支払いが必要となります。また、深夜労働の割増賃金の規定の適用もあり、従業員が現実に深夜時間帯(午後10時以降)に労働した場合、その時間に応じた深夜割増賃金の支払いも必要となります。こうした点見過ごされがちですが、あわせて留意する必要があります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4 弊所ウェブサイト紹介~労働法 ポイント解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した労働法については

   https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/roumu/index/

において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。



メルマガ購読申込はこちらから

弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」は、以下のフォームから行えます。

登録メールアドレス   
<クイズ> 
 これは、コンピュータプログラムがこの入力フォームから機械的に送信することを防ぐための項目です。ご協力をお願いいたします。
 

 なお、入力されたメールアドレスについては厳格に管理し、メルマガ配信以外の目的では使用しません。安心して購読申込ください。



法律相談等のご案内


弊所へのご相談・弊所の事務所情報等については以下をご覧ください。



Copyright(c) 2014 弁護士法人クラフトマン IT・技術・特許・商標に強い法律事務所(東京・横浜)  All Rights Reserved.

  オンライン法律相談

  面談相談申込

  顧問弁護士契約のご案内


  弁護士費用オンライン自動見積


   e-mail info@ishioroshi.com

  電話 050-5490-7836

メールマガジンご案内
ビジネスに直結する
判例・法律・知的財産情報


購読無料。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。

バックナンバーはこちらから