2015-09-02 集合動産譲渡担保と資金調達

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1 今回の判例  集合動産譲渡と資金調達

名古屋高裁金沢支部平成26年10月31日判決

 A社は、B社との間で、3か所のA社倉庫内の日用品等の一切の在庫商品について、B社を譲渡担保権者とし、現在と将来有する一切の債権を被担保債権として、集合動産譲渡担保契約を締結しました。

 同契約においては、契約締結以後に搬入された商品や、これらの転売代金等についても契約の効力が当然に及ぶとされましたが、A社は「通常の営業の範囲内」において商品の売却、加工等の処分をすることができると定められていました。

 ところがA社が営業を停止したため、B社は、これら倉庫にある商品をA社が販売した売掛金について差押を申し立て、差押命令が発令されました。

 これに対し、A社がこの差押命令を争いました。本件で問題となったのは、B社が差し押さえた売掛金が、「通常の営業の範囲内」の取引であって、B社による差押が許されないか否かでした。

2 裁判所の判断

 裁判所は、以下のとおり判断し、差押を認めました。

● A社とB社の集合動産譲渡担保契約では、A社は通常の営業の範囲内において商品の売却、加工等の処分をすることができると定められている。

● しかしこの規定は、A社が通常の営業の範囲内において売却等の処分をした商品について、当然に譲渡担保権の効力が及ぼないものではなく、A社が通常の営業を継続している場合に、契約上、差押をすることができないというにとどまる。

● そうすると、B社が差押を申し立てた時点までに、A社は、商品の仕入れ及び販売を停止し、自己破産の申立を決定した旨を表明しており、通常の営業を継続していなかったから、B社は当該売掛金に対し差押をすることができる。

3 解説

(1)集合譲渡担保~動産を担保とする有用な方法

 他社に金銭を貸したり信用を供与するという場合、他社に担保の提供を求めるということは少なからず見られるところです。また資金調達のために金融機関に担保を提供することも珍しくありません。

 この点、不動産であれば抵当権の設定が一般的と思いますが、機械設備や商品といった動産の場合、「譲渡担保」という形にすることが多いと考えられます。これは、担保目的で、対象物の所有権を債権者に移転するという方法です。

 この点、対象物が特定され、一定期間保有・使用されることが前提となる機械設備などは譲渡担保の対象として扱いやすいものの、商品のように生産され、販売されるなどして、内容に変動があるものはどのように担保となるでしょうか。

 この点を解決するのが集合動産譲渡担保です。これは「A倉庫にある一切の在庫商品」といった特定方法で譲渡担保の対象を定めるもので、現在あるものだけではなく、将来の仕入による在庫商品まで担保の対象とすることができます。

 言い換えれば、この担保は、具体的な中身が新陳代謝することを前提に、一定の場所で保管される在庫商品といった包括的な特定方法で、動産を担保とすることができるわけです。

(2)動産の担保を第三者に主張するための方法

さて、ある程度法律をご存知の方なら、担保権については「対抗要件」といって、第三者に対してある物件が自己の担保となっていることを主張するための一定の要件が必要であることはご理解と思います。例えば不動産に設定する抵当権なら、抵当権設定の登記が「対抗要件」となります。

 この点、動産譲渡担保の「対抗要件」は、従前は「引渡」でしたが、平成16年の法改正で、「登記」制度が認められることとなりました。ただし、登記の対象は、「法人」がする動産譲渡に限定しています。

 具体的には、集合動産譲渡担保であれば、以下の例のとおり、保管場所の所在地・名称で動産を特定することができます(他の特定方法もあります)。そしてこの場合、原則として、当該保管場所にある同種類の動産の全てが対象動産となり、当該場所に搬入された時点で、動産譲渡登記の効力が及ぶこととなります。

【種類】 未登録自動車
【所在】 東京都新宿区○○一丁目×番×号
【備考】 保管場所の名称:○○自動車センター

 なお、動産の登記事項については、その「概要」は誰に対しても開示されますが、どのような動産が譲渡されているかといった情報を含むすべての登記事項は、動産譲渡の当事者、利害関係人、譲渡人の使用人にしか開示されません。

 本稿で動産譲渡登記の制度すべてを解説することはできませんが、何かのための担保を取る方法として、このような制度があるということは覚えておいて損はないと思います。



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