2015-11-17 種苗法と育成者権

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

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1 今回の判例  種苗法と育成者権

知財高裁平成27年6月24日判決   

 なめこの育成者権者であるA社が、B組合等に対して、B組合等が生産するなめこがA社の育成者権を侵害しているとして、販売差止、損害賠償等を求めました。

2 裁判所の判断

 知財高裁は、以下のとおり判断し、請求を認めませんでした。

● 種苗法の保護の対象とされる「品種」とは、現実に存在する植物体の集合そのものを保護の対象とするものである。

● 品種登録簿の特性表に記載された品種の特性は、審査において確認された登録品種の主要な特徴を相当程度表すものの、育成者権の範囲を直接的に定めるものではない

● 育成者権の効力が及ぶ品種であるか否かの判定には、最終的には、植物体自体を比較して、侵害と主張される品種が、登録品種とその特性により明確に区別されないものであるかどうかを検討する必要がある(現物主義)。

● 本件では、登録品種とB組合等の品種とが「特性により明確に区別されない」と認めることはできない。

3 解説

(1)育成者権とは

 作物の品種改良は、古くから行われてきた技術であり、品種改良の結果生じた新しい品種の農作物、花、植物に関して、登録によって一定の独占権を持つ権利を育成者権といいます。

 今回ご紹介する判例は、登録品種と対象品種の異同の判断において「特性表主義」ではなく「現物主義」を採用すべきことを明らかにしたという意味で重要な判決なのですが、本稿ではもう少し基本的な知識として、比較的馴染みが薄いと思われる育成者権に関するアウトラインをご紹介します。

(2)育成者権の対象

 種苗法の保護対象となるのは「農林水産植物」、つまり、栽培される全植物(種子植物、しだ類、せんたい類、多細胞藻類)と、政令で定める植物(現時点はキノコ)とされています(種苗法2条1項柱書)。

 ここで留意すべきなのは、種苗法の保護対象は、現実に育種された「植物体」それ自体であり、その栽培法といった技術思想ではないという点です。他方、育種方法や新品種の育種増殖方法等といった「方法」、新品種育成に有用なDNA等の、育種に関する関連技術は、「発明」として特許法によって保護される場合があります。

(3)「区分性」

 育成者権の保護の対象となるか否かの重要なキーワードとして「区分性」というものがあります。

 この「区別性」とは、品種登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた他の品種と、特性(2条2項)の全部又は一部によって明確に区別されることをいいます。

 つまり、既存の品種と変わらないような「新品種」に独占排他権を与えることは適切ではない、という趣旨です。

(4)「均一性」「安定性」

 また「均一性」という要件もあります。「均一性」とは、ごく簡単にいえば、「播いた種から同じ品種の植物が生育できること」ということです。

 また「安定性」という要件もあります。これは、「何世代増殖を繰り返しても同じものができること」という要件です。

 なお、上の「均一性」の要件は、独立行政法人種苗管理センターによって行われる栽培試験(15条)で確認されますが、異形固体の出現率が原則として3%以下であることを要するとされています。

(5)ビジネス上の留意点

 育成者権の他の要件、出願から登録の手続、効力等、他に申し上げるべき点は多数ありますが、本稿もだいぶ長くなりましたので今回はこの程度にしたいと思います。

 植物の品種改良は、農作物における新たなブランド創出の鍵としても期待されているものです。もちろんこの権利は、直接は農業生産者・栽培者に関係するものです。しかし、ブランド創出にあたっては、栽培者だけでなく、流通、加工、販売、サービス提供といった商流にある事業者が加わり、商標や地域ブランドといった他の権利と、また他のノウハウと組み合わせて事業を推進していくことが少なくありません。

 それで、農業生産者だけでなく、他の事業者の方々も、種苗法による育成者権のアウトラインを知っておくことは有益かと思います。



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