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2016-04-26 事業ブランド名を引き継いだ事業譲受人の責任

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

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1 今回の判例  事業ブランド名を引き継いだ事業譲受人の責任

東京地裁平成27年10月2日判決

 内装工事の設計・監理等を主たる業務とするA社は、ウェブサイト等に社名の略称として「DWP」という記載をし、その名称を標章として用いながら業務を行ってました。

 A社は業績不振に陥り、経営が厳しくなるにつれ、A社とは別の法人を用いて事業を行うことを決め、知り合いの公認会計士B氏が有する休眠会社C社を、A社の別法人として使うことにしました。

 そして、C社の商号を変更して、株式会社DWPとし、事業目的もA社と同一のものにしました。また、代表取締役をA社の取締役の中から選任し、本店所在地もA社と同じビルに変更しました。またC社は、「DWP」の標章を名刺やホームページ、提案資料等に使用していました。

 以上の事実のもと、A社の債権者たる銀行D社が、C社はA社から事業譲渡を受けたとし、かつ、A社の標章である「DWP」を続用したことから、C社はA社の債務の弁済責任を負うべきであると主張しました。

2 裁判所の判断

 裁判所は以下のように判断し、D社の請求を認めました。

● C社の設立の動機・経緯、設立者や取締役、従業員の同一性、事務所所在地の同一性、A社とC社との顧客紹介の関係などの点から見れば、A社からC社には事業譲渡がなされたと認定できる。

● A社とC社の商号の主たる構成部分に同一性は認められず、C社がA社の商号を続用したものと直ちに評価することはできないが、「DWP」は、A社がかねてより使用していた標章であり、A社の営業主体を表すものとして業界で浸透し、ブランドカを有するに至っている。

● C社は、「DWP」を従業員の名刺、ホームページ、提案資料等に表示していたことから、A社という営業主体がそのまま存続しているとの外観を作出していた。

● それでC社は、営業譲渡後遅滞なく、自らがA社とは別の法人であることを説明したなどの特段の事情がない限り、会社法22条1項の類推適用により、A社の債務について弁済する義務を負う。

3 解説

(1)事業譲渡と商号の続用

 会社法22条1項は、事業譲渡において、譲受会社が譲渡会社の商号(会社名)を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う、との原則を定めています。

 それは、譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用すると、債権者や第三者が、譲受会社と譲渡会社とを混同してしまうおそれがあり、このようなまぎらわしい外観を作り出したのが当該譲受会社であることから、その外観作出について責任を負うべき、という考えによります。

 また本件では、会社名そのものを引き継いだものではなく、譲渡会社が長年使っていた社名の略称であって譲渡会社の事業を表すブランドとなっていたものを、譲受会社が使い続けたというケースですが、裁判所は、会社法22条1項を「類推適用」して、譲受会社が、譲渡会社の債務について責任を負う旨判断しました。

(2)商号や略称の続用に関するリスク

 今回の事例は、譲渡会社と譲受会社が実質的に同一とも評価しうる、いわゆる債務逃れ目的の詐害的な事例と評価しうるものです。しかし本件の事例を離れ一般的な事業譲渡のことを考えても、商号や、場合により事業ブランド名の続用にも、一定のリスクが伴うことを考える必要があります。

 特に、一般に事業譲渡は、譲渡会社の債務を遮断するために採用されるスキームであることを考えると、万一こうした「遮断」の効果が生じないようなことになると、事業譲渡のスキームをとった意味が半減してしまいますから、こうしたリスクは軽視できません。

 それで、譲受会社が会社法によって譲渡会社の債務を負う結果にならないか、事業譲渡の実行にあたり、専門家である弁護士のアドバイスを求めることはたいへん重要であると思われます。

(3)詐害的な組織再編に関する会社法の改正規定

 最近、本件のような詐害的な組織再編に関わる訴訟が頻発していることを受け、平成26年の会社法改正によってこの点を手当する規定が定められました。

 具体的には、残存債権者を害することを知って譲渡会社が事業譲渡した場合、残存債権者は、譲受会社に対し、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求することができる旨の規定です(会社法23条の2第1項)。また、同様の詐害的行為がよく問題となる、会社分割にも同趣旨の規定があります(会社法759条4項等)。

 こうした規定は、債権者を害する詐害的な事業譲渡や会社分割の防止という点で、一定の役割を果たしていくものと思われます。



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