2018-12-18 債権回収と商事留置権

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今回の事例 債権回収と商事留置権

 最高裁平成29年12月14日判決

 A社は、一般貨物自動車運送事業等を営むB社との間で、A社所有の土地を目的とする賃貸借契約を締結し、同土地をB社に引き渡しました。

 同賃貸借契約はA社の解除により終了したため、A社が所有権に基づき土地の明渡B社に請求しました。

 これに対しB社は、当該賃貸借契約の終了前から、A社に対し、A社との間の運送委託契約により生じた運送委託料債権を有しているため、当該債権を被担保債権とする商法521条の留置権が成立していると主張して、A社の請求を争いました。

 争点の一つは、「土地」が、「留置権」の対象となるか否かであり、次項でご紹介する裁判所の判断は、この点に関するものです。

裁判所の判断

 裁判所は以下のように判断しました。

・ 民法は、「物」を「不動産及び動産」と定めている(85条、86条1項、2項)。

・ 商法521条は、同条の留置権の目的物を「物又は有価証券」と定め、不動産をその目的物から除外するような文言はなく、同条が定める「物」を民法における「物」と別に解釈する根拠はない。

・ 不動産を対象とする商人間の取引が広く行われている実情からすると、不動産が留置権の目的物となるとの解釈は、商人間の信用取引の維持と安全を図るという留置権の趣旨にかなう。

・ 以上によれば、不動産は、商法521条に定める留置権の目的物たる「物」に当たる。

解説

(1) 商事留置権の概要

 「留置権」とは、民法上・商法上認められる一種の担保権です。他人の「物」を占有している人がいて、かつ、その物に関して生じた債権を持っているという場合があります。この場合に債権の弁済を受けるまで、その物を留め置く(引渡を拒む)ことができる、という権利が留置権です。

 具体例を挙げれば、自動車工場が、顧客の自動車を修理し修理代金債権が発生したとき、顧客からこの修理代金の弁済を受けるまで、当該自動車を顧客に引き渡さなくてよい、というのが例です。

 また、留置権には、民法に定める留置権と、商法に定める商事留置権があります。

 商事留置権(商法521条)の特徴は、目的物と被担保債権の間に「牽連性」(けんれんせい)がなくてもよい、とされているところです。

 例えば、機械の製造を受託している会社A社が、機械Xの製造の委託を受けて製造し、委託会社B社に引き渡した後、委託代金債権が発生したとします。他方、A社が、B社から、別の機械の製造のために、B社所有の金型Yの貸与を受けており、その貸与期間が過ぎたとします。

 この場合、機械Xの製造委託料と金型Yとの間には「牽連性」はありません。しかし、A社は、商事留置権を行使し、B社から、前記委託代金債権の弁済を受けるまで、この金型Yの引渡を拒むことができるわけです。

 そして今回の裁判では、「不動産」も商事留置権の対象となることが明確になりました。

(2) 債務者倒産時の優先弁済効

 前記のとおり商事留置権は、場面によっては強い担保力を発揮します。

 そして商事留置権の担保力が特に発揮されるのは、債務者(相手方)が破産等の倒産手続に入った場合です。この場合、民法上の留置権とは異なり、債権者は、留置した物について優先弁済権が認められています。

 例えば、債務者が破産宣告を受けたとしても、商事留置権を主張できる債権者は、留置している物の動産競売の申立を行えば、一定の範囲内で債権を回収することができます(ただし、民事再生手続における商事留置権の優先弁済権については、東京地裁平成21年1月20日判決はこれを否定しています。)。

 この商事留置権は、ある場面では債権回収の一つの強力な手段となりうるものですから、頭に入れておいて損はないと思われます。

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