2019-08-20 適正な対価による事業譲渡の重要性

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今回の判例   適正な対価による事業譲渡の重要性

大阪高裁平成30年12月20日判決

 以下、事実関係の説明が若干長くなります。時間のない方や興味のない方は読み飛ばしください。

 A社は、商品の卸売販売事業を営んでいましたが、平成27年1月以後、B社が、A社の解雇した従業員を雇用し、A社の設備を利用し、かつA社名義で受発注と配送を行うようになりました。

 また、同年4月から、B社は自社名義でA社取引先と取引を開始し、A社は同事業を事実上廃業しました。

 そしてB社は同年4月と5月に、A社の売掛債権を回収し、さらにA社は、B社にリース契約を承継させる前に、リース料等を弁済しました。

 その後、A社は、5月8日、債権者に対する支払の停止を宣言し、同年8月12日に破産を申し立てました。

 破産管財人C氏は、以上のような経緯のもと、当該事業がA社からB社に無償譲渡されたとして、B社に対し、破産法160条3項に基づいて本件事業の事業価値相当額の返還などを求めました。

裁判所の判断

 裁判所は以下のように判断し、破産管財人C氏の請求を認めました。

・ A社とB社との取引関係の推移をみると、B社が、A社の卸売事業を承継したものと評価できる。

・ 支払不能よりも前にされた偏頗行為(*1)であっても、弁済期まで待てば支払不能になることが確実であるときは、債権者間の平等を著しく害する行為であるため(有害性)、否認(*2)を認める必要がある。

(*1)簡単にいえば、一部の債権者に利益を与える行為をいいます。

(*2)破産管財人が、破産者等が行ったある行為の法律上の効果を覆す行為をいいます。

解説

(1)企業が危機に陥った際の事業譲渡の留意点

 ある企業が、ある領域の自社事業をまとめて第三者に譲渡し、対価を得る「事業譲渡」という取引は珍しいものではありません。そしてこの事業譲渡は、会社が多額の負債を抱え危機に陥っているという場面でも生じえます。

 しかしここで、実務上問題となり得るのは、収益性のある事業を承継させているにもかかわらず、対価の支払いを受けないという場合です。

 対価を受けない事情には様々なものがあるかもしれませんが、一定の価値があるものを無償又はそれに近い対価で取引する行為は、倒産会社から不当に財産が流出することにほかならず、その会社の財産を原資に弁済を受ける債権者の権利を害するものであって、後に破産管財人などから責任追及を受けることにもなりかねません。

(2)企業の倒産と事業の承継

 確かに、会社が倒産の危機に瀕したとき、多くの従業員や取引先を持っている事業を存続させたい、という意図は正当なものです。しかし、多くの債権者との利害対立が先鋭化するような倒産局面では、平時以上に、特にフェアネスや透明性が重視されます。

 このような状況での事業譲渡については時間がないことは事実です。しかし、いわゆる素人判断でいい加減な処理をするよりも、迅速に対応できる法律家の助力を得て、後々の係争を回避できるか、係争が生じても耐えられるような対応をすることは重要といえます。

 この対応にはいろいろな方策があるとは思いますが、筆者が複数行ったことのある一つの方法は以下のようなものです。

  • 事業譲渡先との協議において、公認会計士等から公正ながらも簡易的な方法で対価を算定してもらい、これを踏まえその価格で事業を譲渡する。
  • 譲渡契約において、「譲渡価格は、後に裁判所や破産管財人との協議で変更することがある」といった趣旨の規定を含める。
  • 当該譲渡の事実と譲渡の条件を裁判所に正直に報告し、裁判所や管財人に、その譲渡価格の妥当性を検討してもらう。
  • 万一対価の適正性に問題があれば、調整する。

 もちろん、上の例は単なる一つの例にすぎません。しかし、多くのステークホルダーの利害の調整が厳しく問われる倒産といった場面こそフェアで透明な手続を心がけることが、長期的に見て、かつ多くの関係者にとってより良い結果になるものと思います。

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