2020-01-28 株主間契約と取締役選任合意

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1 今回の事例 株主間契約と取締役選任合意

東京地方裁判所令和元年5月17日判決

 貸ビル業を営む会社であるA社には、共同の株主としてB氏、C氏、D氏がいました。

 これら三者間で、ビルの建替に関して対立があった後、合意に至りましたが、その合意を示す契約書において、A社の取締役として、B氏、C氏、E氏(D氏の代理人)を新取締役に選任すること、今後もB氏、C氏、D氏の互選とすることの合意が定められました。

 その後、それぞれの株主について相続が発生しましたが、B氏の地位を承継したX氏が、上の合意に基づき、C氏の地位を承継したY氏に対し、A社の株主総会において、X氏を取締役に選任する議案に賛成することを求める訴訟を提起しました。

 なお、本件の事案は複雑であるため、一部を簡略化しています。

2 裁判所の判断

 裁判所は以下のように判断し、X氏の請求を認めませんでした。

・ B氏、C氏、D氏間の取締役選任に関する合意は、法的拘束力を有する。

・ しかし、上の取締役選任に関する合意は、新ビル建築という場面で、その権利関係の確認と新取締役のもとで建築の促進のために締結された契約の中にあることを考えると、この合意が、それぞれ相続があった後も、各取締役の相続人の家系から取締役を選任するという趣旨とは解し難い。

3 解説

(1)合弁事業と株主間契約の概要

 今回の事例のように、複数の株主が一つの会社を共同して所有して共同で事業を行うことは珍しくありません。特に企業どうして出資しあって会社を設立して事業を行うことを、「合弁会社」「合弁事業」と呼ぶことがあります。

 そして、合弁契約においては、合弁会社の組織や運営の基本的事項、各株主の役割と権限の内容、株主間の基本的な取り決めについて、株主間で合意され、その合意の内容が「株主間契約」「合弁契約」として定められることが多いといえます。

 本稿では、株主間契約の特徴や留意すべき点の概要をご紹介します。 

(2)株主間契約の特徴

 通常、株式会社は、株主総会における議決権比率がモノを言います。たとえば2名の株主の持株比率が51%と49%というわずかな差であっても、後者は取締役の選任を含む多くの議決で自己の意思を通すことができません。

 しかし、合弁会社に出資する少数出資当事者としては、それでは共同経営の意味が乏しくなってしまうため、株主間契約においては、一定の事項に関して、出資比率にかかわらず合弁当事者の意向が反映されるような工夫がなされます。

 例えば、重要な組織の変更、重要な投資や借入、新規事業の開始など、一定事項を列挙し、合弁当事者の合意を要件とするといった規定がなされます。

 また、取締役会の構成メンバーについても、少数株主が自己の意向を反映させるために、株主間契約において、取締役の総人数に加えて、各株主が指名できる取締役の人数を定めたりもします。

 同じ会社の株主どうしは、すべての点で意見が一致すればよいのですが、現実には意見が分かれることも当然にありますから、その際の意見調整や妥協のメカニズム、さらには一部の株主だけが暴走しないような取り決めを、合弁会社の開始前に事前に定めておくことは重要といえます。

4 弊所ウェブサイト紹介~M&A・企業間提携

弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した企業間提携やM&Aについては

 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/m_and_a/manda/

において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイトにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたら、メールでご一報くだされば幸いです。



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