2011-05-10 株主名簿閲覧謄写仮処分事件

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1 今回の判例 株主名簿閲覧謄写仮処分事件

  東京地裁平成22年7月20日判決

 Y社の株主であるX社は、Y社の株主総会においてX社の行う株主提案について委任状勧誘を行うため、Y社の株主名簿に記載されている株主の氏名又は名称及び住所等を把握することを目的として、会社法125条2項に基づき、株主名簿の閲覧及び謄写を求めました。

 これに対し、Y社が、会社法125条3項2号及び3号所定の拒絶事由があるとして、これを拒絶しました。

 そのため、X社は、株主名簿の閲覧及び謄写を求め、仮処分を申し立てました。

2 裁判所の判断

 裁判所は以下のように判断し、X社の請求を認めました。

  • 会社法125条3項3号は、請求者が株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるときは、当該株式会社は株主名簿の閲覧謄写請求を拒むことができる旨を定めている。
  • 同項3号にいう実質的な競争関係とは、単に請求者が株式会社の業務と形式的に競争関係にある事業を営むなどしているというだけでは足りず、例えば、株式会社が得意先を株主としているため、競業者に株主名簿を閲覧謄写されると、顧客情報を知られて競業に利用されるおそれがある場合のように、株主名簿に記載されている情報が競業者に知られることによって不利益を被るような性質、態様で営まれている事業について、請求者が当該株式会社と競業関係にある場合に限られる。
  • 本件については、X社及びY社は、いずれも不動産の賃貸や売買等の事業という点で形式的には競業関係にあるが、両者が競業関係にある事業について、株主名簿に記載されている情報が競業者に知られることによって不利益を被るような性質、態様で営まれていることの疎明がない。

3 解説

(1)株主名簿閲覧謄写請求権の概要

 会社法125条2項は、株主名簿閲覧謄写請求権について定めています。

 具体的には、株主及び債権者が、株式会社の営業時間内であれば、株主名簿について閲覧又は謄写の請求を行うことができる、というものです。なお、この請求をするには、請求の理由を明らかにしなければならないとされています。

 株主としては、この株主名簿の閲覧謄写によって、株主総会で自己の提案に同調する株主や、少数株主権の行使を共同で行うことに賛同する株主を募ったりすることができるわけです。

(2)株主名簿閲覧謄写の拒否事由点

本判決は、特に、企業の採用担当者にとって、意味深いものとなりそうです。

他方、会社法125条3項各号は、閲覧謄写請求の拒否事由を定めています。会社は、次のような事由が存在するときは、株主名簿の閲覧謄写請求を拒否することができます。

  • 請求者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
  • 請求者が会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき
  • 請求者が会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき
  • 請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき
  • 請求者が、過去2年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を、利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき
(3)株主名簿閲覧謄写請求を受けた場合

 特に会社の方針と意見を異にする少数の株主を抱えるようになった会社は、この株主名簿閲覧謄写請求を受けることがあるかもしれません。そのような可能性のある会社は、株主名簿閲覧謄写の拒否事由についての正確な理解によって適切に対応することが求められるといえます。

 例えば、本事例のとおり、会社法125条3項3号の「請求者が会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み」というのは単に形式的に同業であるだけでは足りない、という判断が示されました。したがって、ある株主の閲覧謄写請求権が不当と考える会社が3号を理由に請求を拒む場合、裁判所の判断に沿ったもう具体的な主張や立証が必要となるわけです。

 しかし、会社としては、株主名簿閲覧謄写請求を理由なく拒否することが、経営陣が保身に走っているとか、株主の意思表明をする機会を奪ったとかという批判を招く可能性もあります。

 そもそも、法律上、この株主名簿閲覧謄写請求権が、株主提案権等の少数株主による意思表明の行使を実効あらしめる権利と位置づけられていることに鑑みれば、会社としては、株主名簿閲覧謄写請求については、その目的が濫用的なものでない限りは応じるようにし、その結果なされるかもしれない株主提案に対しても堂々と対応することが本来の法の趣旨といえるでしょう。



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