2011-05-10 セクハラによる解雇と懲戒処分の選択

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事案の概要

H21.04.24 東京地裁判決

大阪にあるメーカーであるA社の東京支店長(取締役兼務)B氏が、複数の女子社員に対して慰安旅行中の宴会の席で肩を抱いたり自分の膝にすわらせようとしたり、「胸が大きいな」と発言して胸を測るそぶりをしたり、「ワンピースの中が見えそうだ。この中で誰がタイプか答えなかったら、犯すぞ」と言うなどの発言を繰り返していました。そのため、A社は、セクシャルハラスメント行為によりB氏を懲戒解雇としました。

この懲戒解雇処分を不服とした元支店長が、懲戒解雇は権利の濫用であり無効であるとして従業員としての地位確認の裁判を起こしたのがこの訴訟です。

判決の概要

【結論】

 解雇無効

【理由】

裁判所は、懲戒解雇は会社の解雇権の濫用であり無効であるとしました。

裁判所は、B氏の言動については、女性を侮べつする違法なセクハラであり、懲戒の対象となる行為であることは明らかで相当に悪質であるとしつつ、強制わいせつ的とまではいえないこと、懲戒解雇に関しては、これまでB氏に対して何らの指導や処分をしてこなかったのに労働者にとって極刑である懲戒解雇を直ちに選択するのは重きに失すると判断しました。

解説

【懲戒解雇に至るプロセスも重要】

この判断のポイントは、B氏のセクハラ的言動に対し、会社が、全く注意や処分をしてこなかったと認定されたことにあります。

もっとも、裁判所が、コンプライアンスを重視して厳しく対応しようとする会社の姿勢は十分首肯できる、などと述べており、裁判所としても相当に悩んだようです。筆者としても、会社が、コンプライアンスの観点、再発防止の観点、再発時の会社の責任(使用者責任を問われることもある)、軽い処分を課した場合のB氏の改善の見込などを考え、懲戒解雇という選択をしたことについては、重すぎると断定できるのか疑問なしとはいえません。

ただし、一般論としては、懲戒解雇の有効性(無効とはされないこと)の判断の要素には、当該従業員の行為に対し、会社が懲戒解雇に至るまでに、いかなる措置(注意、他の軽い処分)を取ってきたか、これに対して当該従業員がどのような対応を取ってきたのかが含まれることは事実です。

従業員に対する懲戒解雇の有効性(正確には解雇権の濫用の有無)については、裁判所は、行為の動機、態様、結果、従前の勤務成績、他の懲戒処分選択の可能性、過去の処分例との均衡、解雇という重い措置が同人に与える影響等を総合考慮して、個々の事案ごとに判断しています。すなわち、簡単にいえば当該違反行為・情状と、懲戒処分の間にバランスが取れていることが必要であるわけです。

横領のような刑法に触れるような違法行為、その会社にとって遵守すべき重要な業法に明らかに違反する重大な行為などであれば、1回目の行為から懲戒解雇にすることは許されると判断されることが多いでしょうが、就業規則に違反するもののこれらに至らない行為の場合、会社としては難しい判断を強いられることになります。この場合には、最初から懲戒解雇とするか、あるいは、厳重注意・減給処分・出勤停止処分といった処置を行い、さらに態度が改まらない場合に解雇とする、という段階的方法を取るべきか、慎重に考えるべきでしょう。場合によっては早い段階で弁護士と相談しつつ、法的判断を踏まえた対応が求められるかもしれません。



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