2011-10-18 広告表示の合理的裏づけと景表法

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1 今回の判例  広告表示の合理的裏づけと景表法

H22.10.29 東京高裁判決

 健康食品の製造販売業を営む事業者であるA社は、自社の製造する「タバクール」と称する商品の包装紙に、「ニコチンをビタミンに変える」等と表示していました。

 これに対し、公取委が、当該表示について、不当景品類及び不当表示防止法(景表法)4条1項1号に該当する表示か否かの判断のために、A社に対し、同条2項の規定に基づき、当該表示の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたため、A社は資料を提出しました。

 しかし、公取委は、A社が提出した資料は合理的な根拠を示すものであるとは認められず、当該表示は景表法4条1項1号の規定に違反し、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良であることを示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められるとし、排除命令を出しました。

 これに対し、A社は排除命令の取消を求める審判請求を行い、その審判請求を棄却する審決を受けたため、A社は、当該審決の取消を求める訴訟を起こしました。

 本稿では、「合理的な根拠を示す資料」に関する運用指針の当否に絞って論じることとします。

 

2 裁判所の判断

裁判所は、以下のように判断しました。

  • 本件では、当該表示が、実際のものよりも著しく優良であることを示し、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがある表示に該当する可能性が相当程度存在することが認められ、その該当性を判断するためには、当該表示を裏付ける合理的な根拠を示す資料の有無を確認する必要がある。
  • 当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料に当たるか否かについて、公取委の運用指針は、景表法4条2項の立法趣旨、公平の観念等に照らして、同条2項の解釈として妥当なものである。
  • A社の提出資料は、運用指針の基準を充たさず、当該表示を裏付ける合理的な根拠を示す資料とはいえない。

 

3 解説

(1)優良誤認表示と資料の提出

 景表法4条1項1号は、「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」に該当する表示を禁止しています(優良誤認表示の禁止)。

 そして、景表法4条2項によれば、このような優良誤認表示の疑いがある場合に、消費者庁(*)は、その表示を行った事業者に対し、その表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとされています。そして、事業者が一定期間内に当該資料を提出しないときは、その表示が優良誤認表示であるとみなされ、排除命令の対象となる、と定められています。

 本稿では、当該資料がどのような場合に「合理的な根拠」となるのかについて、「不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針」(以下「運用指針」)の内容をご紹介します。

 (*)本判例の事件当時を含め、改正前景表法では公正取引委員会でした。

(2)資料が「合理的根拠」となるための要件の詳細

 運用指針は、景表法4条2項の「合理的な根拠を示す資料」といえるための一つの要件として「提出資料が客観的に実証された内容のものであること」を定めています。

 そして、運用指針は「客観的に実証された内容のもの」とは、次のいずれかに該当するものであるとしています。以下、各事項について詳細をご紹介します。

  A) 試験・調査によって得られた結果
  B) 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献

(3) 「試験・調査によって得られた結果」の詳細

前記「試験・調査によって得られた結果」について、運用指針は、以下のとおり述べています。

 ア 当該試験・調査の方法

学術界・産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施する必要がある。

上のような方法が存在しない場合、当該試験・調査は、社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施する必要がある。

 イ 試験・調査主体

試験・調査を行った機関が当該事業者とは関係のない第三者(例:国公立の試験研究機関等の公的機関、中立的な立場で調査、研究を行う民間機関等)である場合には、一般的には客観的なものであると考えられる。

上記アの方法で実施されている限り、当該事業者が行った試験・調査であっても、根拠として提出することも可能である。

 ウ 体験談・モニターの意見等

消費者の体験談やモニターの意見等の実例を収集した調査結果を表示の裏づけとなる根拠として提出する場合には、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されている必要がある。

(4)「専門家、専門家団体、専門機関の見解・学術文献」の詳細

他方「専門家、専門家団体、専門機関の見解又は学術文献」について、運用指針は以下のとおり述べています。

 ア 専門家等による見解又は学術文献を提出する場合

その見解又は学術文献が次のいずれかであれば、客観的に実証されたものと認められる。

  • 専門家、専門家団体又は専門機関(「専門家等」)が、専門的知見に基づいての表示された効果、性能について客観的に評価した見解又は学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの
  • 専門家等が、当該商品・サービスとは関わりなく、表示された効果、性能について客観的に評価した見解又は学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの

 イ  特定の専門家等による特異な見解等の場合

以下の場合には、客観的に実証されたものとは認められないため、事業者は前記の試験・調査によって、表示された効果、性能を客観的に実証する必要がある。

  • 特定の専門家等による特異な見解である場合
  • 画期的な効果、性能等、新しい分野であって専門家等が存在しない場合等
  • その他当該商品・サービス又は表示された効果、性能に関連する専門分野において一般的には認められていない場合

 ウ 古来からの言い伝え等

生薬の効果など、試験・調査によっては表示された効果、性能を客観的に実証することは困難であるが、古来からの言い伝え等、長期に亘る多数の人々の経験則によって効果、性能の存在が一般的に認められているものについては、このような経験則を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合においても、専門家等の見解又は学術文献によってその存在が確認されている必要がある。

(5) 商品販売開始前からの資料準備の必要性

 以上のとおり、ある商品の性能や効果等を表示する場合に、その合理的根拠となる資料の内容や資料準備の方法は、相当に注意を払う必要があります。

 せっかく画期的な商品を開発し、販売したとしても、そして、自社としてはその商品には確かな効果があるという確信があるにもかかわらず、合理的な根拠を示す資料を提出できないとき(又は運用指針に合致しない実験や資料だった場合)には、優良誤認表示とみなされ、排除命令の対象となってしまうこともあります。

 それで、商品の表示を裏づける資料・実験結果が、景表法の要請にかなうものか否か、この点は、表示内容を決定する際に、景表法に精通した専門家の意見なども参考に慎重に検討すべきではないかと思われます。



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