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2012-03-05 被用者のセクハラと会社代表者の損害賠償責任

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

学術的・難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。メルマガの購読(購読料無料)は、以下のフォームから行えます。

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以下の検索ボックスを利用して、トピックページ(メルマガバックナンバー)から検索できます。

1 事案の概要

H21.10.16 大阪地裁判決

 会社の従業員であったX氏は、同社の社員(上司)であるA氏からセクハラ行為を受けました。

 X氏は、会社の統括者に、上記のセクハラ行為について訴えたにもかかわらず、会社は十分な調査も行わず、X氏の誤解に過ぎないと結論づけました。

 そこでX氏は、セクハラ行為を行ったA氏と、会社の双方に損害賠償を求めて提訴しました。

2 判決の概要

 裁判所は、以下のように判断しX氏の訴えを基本的に認めました。

(1)A氏について
 不法行為(民法709条)に基づき、X氏の損害を賠償すべき

(2)会社について

(ア)使用者責任(民法715条)に基づき、X氏の損害を賠償すべき
   (従業員A氏の行為の責任を会社が負う。)

(イ)代表者の行為についての損害賠償責任(会社法350条)に基づき、
    X氏の損害を賠償すべき
    (会社代表者が必要な措置を講じなかった行為の責任を会社が負う。)

3 解説

 以前の本コラム(セクハラによる解雇と懲戒処分の選択)では、主に会社が懲戒処分を行う際のプロセスに焦点を当てて解説しました。

 今回は、会社におけるリスクマネジメントといった観点から、セクハラ行為に対する会社の対処について考えます。

【社員のセクハラ行為と会社代表者の責任】

 会社が負う責任について判示した判例といえば、これまで、会社の「従業員」がセクハラ行為を行った場合に、「会社」が使用者責任(民法715条)を負うとされたものや、会社の「代表者」自身のセクハラ行為について、会社が損害賠償責任(会社法350条)を負うとされたものが主でした。

 他方、本判決では、上のとおり、会社の「従業員」によりセクハラ行為がおこなわれた事案であったにもかかわらず、会社の「代表者」の行為についての損害賠償責任(会社法350条)が肯定されました。つまり、裁判所は、セクハラ行為が発生した場合に、会社の代表者が業務執行機関として侵害の発生・拡大の防止のために適切な措置を執らなかったという不作為行為につき、会社の損害賠償責任を認めました。

【会社の取るべき方策】      

 男女雇用機会均等法により、セクハラ防止は会社の義務とされていますし、以上のとおりセクハラ行為に関する会社の責任は厳格になり得るとはいえ緩和されることはないでしょう。多くの会社においては、セクハラ防止のための組織・体制や規則の整備が進められていると思われますが、昨今の判例の動向を考慮するならば、これら規則類が実効性を持つような方策を取ることが望まれるといえます。

・相談・苦情への対応

 本判決では会社のセクハラ行為に関する事実関係の調査が不十分であり、加害者に対する適切な処置を怠ったことについて、義務違反があるとされています。
 それで、会社内で、セクハラ行為に関する相談窓口を設けること、相談・苦情が寄せられた場合には、きちんと事実関係の確認を行うことが必要でしょう。

・セクハラ行為が生じた場合における事後の迅速かつ適切な対応

 セクハラ行為の事実が確認された場合には、加害者に対する適切な懲戒等の措置を講じる必要があるかもしれません。さらに、被害者と加害者を引き離すための配置転換、加害者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復(セクハラ行為に対する被害者の対応を理由に、被害者が解雇、降格、減給等をされていたならばこれらの回復を行う)なども、無視すべきではないでしょう。

 ハラスメント全般については、すぐに表面化しないケースもあり、対応に苦慮される企業も多いと思われます。仮に訴訟などに発展した場合は、被害者への損害賠償はもとより、二次的に発生するかもしれない風評被害なども勘案すると、企業が被る損害は計り知れないものとなる場合があります。

 こうした点について、規程類・防止体制の充実に加えて、現実にハラスメントが発生した場合に現実に対応・処理ができるような体制の重要性が認識されるものと思われます。



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