2015-02-24 会社と取締役との利益相反取引

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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

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1 今回の判例  会社と取締役との利益相反取引

東京高裁平成26年5月22日

 A社が振り出した、受取人B社とする額面金額約3億6000万円の約束手形の第1裏書人欄にはB社(代表取締役C氏)名義の記名押印がありました。

 そして、この手形を受け取ったD社が、満期に手形金の支払を受けられなかったため、裏書人であるB社に対して支払を求め仮差押を行いましたが、同仮差押は取り消されました。

 そこで、B社は、D社に対し、B社名義の裏書が取締役会の承認を欠くことや、C氏の代表権の濫用である等と主張し、手形債務の不存在等の確認を求める訴訟を提起しました。なお本件は他に多数の争点がありますが、本稿では上の争点に絞って解説します。
 
 

2 裁判所の判断

 裁判所は、以下のとおり判断し、手形債務の不存在を認めました。

● 本件の裏書は、C氏個人がD社に負っていた債務をB社が保証する趣旨で、C氏がB社の代表取締役として行ったものであり、会社と取締役の利益相反取引に該当する。

● したがって、当該裏書についてB社の取締役会の承認が必要であるところ、取締役会の承認はない。

● また、当該裏書は、C氏が自己ないし第三者の利益を図って代表取締役としての権限を濫用した行為である。

● 本件の裏書が正常な取引とはいえない背景があり、D社は、取締役会の決議がないことや、権限濫用の事実について知っていたか、知りうべきであった。
 
 

3 解説

 

(1)会社と取締役との利益相反取引

 会社の取締役が負う基本的な義務の一つに、「自己又は第三者の利益を優先させて会社の利益を犠牲にするようなことをしない」、つまり、会社と取締役の利益相反行為を行わないという義務があります。

 この利益相反行為の一つとして、会社と取締役の取引があります。例えば、取締役が会社に自分の商品を売る(逆も同様)、会社が取締役に金銭を貸し付ける、といった例が該当します(会社法356条1項2号)。

 前者であれば不当に安い価格で取締役が会社の商品を購入できれば、会社に損害が生じます。後者であれば、取締役の地位を利用して返済見込が薄くても会社から資金が融通されれば、後に会社が損害を受ける可能性があります。

 それで、会社法は、会社と取締役との利益相反取引については、会社の損害を防止するため、取締役会または株主総会(取締役会非設置会社の場合)の承認を要すると定めているわけです。

 加えて、会社と取締役の取引のほか、以下のような行為も、会社と取締役の利益が相反する行為として、同様の制限に置いています。
  ● 会社が、取締役の第三者に対する債務を保証する行為(本件の例)
  ● 取締役の第三者に対する債務を担保するため、会社の資産に担保を設定する行為

(2)ビジネス上の留意点

 上で申し上げたような典型例のほか、実務上、利益相反行為に該当するか否かについての判断が難しい場合があります。

 例えば、取締役から会社に金銭を貸し付ける場合があります。この場合、一見会社に損害が生じるおそれはないように見えるかもしれませんが、利息が発生する貸付であれば、利益相反に該当します。

 また、会社間の取引であっても会社と取締役の利益相反取引となることがあります。例えば、A氏が、X社の取締役であり、かつY社の代表取締役である、というケースで、X社とY社間で取引を行う場合、X社においては利益相反取引となって承認が必要と解されています。それで、同一の人物が取締役を兼任している会社間の取引については留意が必要です。

 以上のように、利益相反該当性はしばしば難しい判断が求められます。それで、慎重を期するとすれば、念のため承認を得ておいたり、法律の専門家の意見を求めることはリスク回避としてありうる方法であると考えられます。

参考ページ:会社法解説  http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kaishahou/index/


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