2005-12-16不動産売買と説明義務

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事案の概要

最高裁平成17年09月16日判決

A1が,仲介業者Bの仲介で,マンションの売主Cからマンションの1室を買いました。

ところが,後に,A1の煙草の不始末で火災が発生しA1が死亡しました。

A1の妻であるがA2は,「防火扉の電源スイッチの操作方法の説明を受けなかったため,火災の拡大を防げなかった」として,売主である売主である不動産業者Cと,仲介業者である宅建業者Bに,損害賠償請求をしました。

判決の概要

最高裁判所は,以下のように判断しました。

【結論】

売主から委託を受け,マンションの販売について一切の事務を行う宅地建物取引業者は,防火戸の操作方法等につき買主に対して説明すべき信義則上の義務がある。

【理由】

1)本件防火戸は,防火設備の一つとして極めて重要な役割を果たす。

2)本件防火戸の電源スイッチは,一見してそれとは分かりにくい場所に設置されていた

3)宅建業者Bは,A1又はA2に対して何らの説明をしなかった

4)A1は,電源スイッチが切られた状態でマンションの引渡しを受け,そのままの状態で居住を開始したため,本件防火戸は,本件火災時に作動しなかった。

5)上記の事実関係に照らすと,売主Cと宅建業者Bは,買主A1に対し,電源スイッチの位置,操作方法等について説明すべき義務があった。

解説

【重要事項説明書と説明義務】

宅建業法では,仲介業者の買主に対する説明義務が定められています。この説明は,一般によく見られる重要事項説明書によってなされることが通常です。

では,重要事項説明書に書いてあることだけを説明すれば十分でしょうか。

十分な場合もありますが,実はそれだけでは不十分なケースもあります。

宅建業法35条所定の事項は,どんな売買であっても説明をしなければならない共通項を挙げただけで,実際は,個々の取引ごとに,ケース・バイ・ケースで,特別に説明しなければならない事項というものがあります。

【説明すべき事項】

では,特別に説明しなければならない事項とはどんな事項でしょうか。大きく分けると,次の3つがあると考えられています。

1)買主の重要な利益にかかわる事実,その事実を告げないことによって,取引の相手方などが重大な不利益を蒙る事実

例:法令上又は行政指導による建築制限の存在,根抵当権や差押えがされていた事実等,騒音,日照,周辺環境,安全設備

2)仮に買主が知っていたら購入を躊躇するような事項

例:この物件でかつて自殺者が出た,隣が暴力団事務所である

3)買主が特定の購入動機を特に明示していた事項

裁判例では,売買契約の際には窓から二条城が見えると説明を受けていたのに,実際のマンションの窓からは,他の建物の看板が視界を遮っているため二条城が見えなかったことから,売主の説明義務違反を理由として契約解除を認めたものがあります。

【業者の説明義務の範囲】

以上みたように,判例は,業者の説明義務の範囲を相当に広く認めています。確かに,多少問題がある物件だと買い手がつきにくく,説明したくないという気持ちも分からないではありませんが,これを隠して仲介するならば,後々大きなトラブルを起こすことになりかねません。



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