2015-01-27 債権の消滅時効と債権管理

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1 今回の判例  債権の消滅時効

 最高裁平成26年9月5日判決

 この訴訟では、NHKの受信料の請求権が何年間の消滅時効に服するのか、具体的には5年か10年かが争点となりました。 

 NHKは、横浜市の男性に平成17年6月~平成24年7月までの受信料19万8940円を請求したところ、一審の横浜地裁及び東京高裁はいずれも5年間と判断し、請求の一部を認めませんでした。
 
 

2 裁判所の判断

 裁判所は、NHKとの受信契約に基づく受信料債権は、年又はこれより短い時期によって定めた金銭の給付を目的とする債権に当たるから、その消滅時効期間は、民法169条により5年と解すべきである、と判断しました。
 
 

3 解説

(1) 債権の消滅時効と時効の期間

 多くの人がご存知のとおり、債権(貸金、売掛金など)には、「消滅時効」があります。つまり、一定の期間を経過すると、その債権について弁済を強制できなくなる、というものです。

 この点、注意が必要なのは、時効の期間は、債権の種類によって様々、という点です。一般論でいえば、債権の消滅時効期間については、5年(商事債権といって、企業間の商取引、会社が行う貸付など)か、または10年(商事債権以外の債権)とされています。

 しかし、以上のほか、民法では、上で申し上げた期間より短い、短期消滅時効という制度があります。短期消滅時効の例を挙げると以下のとおりです。なお、全てを網羅しているわけではない点、ご注意くだされば幸いです。

 5年・・・年又はこれより短い時期によって定めた金銭の給付を目的とする債権(家賃、地代など)
 3年・・・請負代金(工事、設計、監理など)、不法行為(他人間の事故など)に基づく損害賠償
 2年・・・生産者、卸売商人、小売商人が売却した商品代金、
 1年・・・宿泊料、飲食代金、動産の使用料金(レンタカーなど)

 

(2) 実務上の留意点

 以上のとおり、自社の債権管理にあたっては、特に短期消滅時効に留意する必要があります。この点で、なんとなくの知識で5年間は請求できると思っていたものが、実は短期消滅時効にかかってしまっていた、ということがありえるからです。

 それで、自社の取引の種類から、まずは消滅時効期間を把握しておく必要があります。

 またこれも多くの方がご承知のとおり、消滅時効には「中断」という制度があります。つまり、時効が「中断」すると、それまでに進行した時効がいわば「リセット」されて、そこから新たに消滅時効期間がスタートするというものです。

 しかしこの点、少なからぬ方々が、「請求書を送り続けておけば時効が中断する」と考えていますが、法律上は誤りです。民法上、中断事由に「請求」が含まれていることは事実ですが、この「請求」とは、裁判手続による請求をいうからです。

 他方、時効中断の別の事由たる、債務者による「承認」は、裁判手続である必要はありません。債務者から一部でも支払があったり、念書などで支払を約束したりするなど、債務者が債務の存在を承認すれば、「承認」と判断される可能性は高いといえます。

 以上のとおり、債権の消滅時効については、種々難しい問題があり、いろいろな誤解が存在する分野ですから、適切な債権の管理からも、一度正確に知識を得ておく時間を作ると有益かもしれません。



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