2019-03-12 工場見学と営業秘密の保護

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今回の事例 工場見学と営業秘密の保護

大阪地裁平成30年4月24日判決

 A社は、生春巻のサラダやドレッシングなどを主な商品としてコンビニやスーパーなどで販売していました。

 B社は、取引先から生春巻を製造するよう求められ、その検討のため、紹介を受けたA社に製造工場の見学を依頼しました。

 A社は、B社代表者の求めに応じてB社代表者を案内し、生春巻の製造工程を見学させ、製造方法を説明し、写真撮影を許可しました。

 そして、A社とB社は、協力工場としての取引のために商談を進めましたが、その話合いは打ち切られました。

 その後、B社が生春巻を製造して大手スーパーに卸すようになったところ、A社はB社に対し、A社の生春巻の製造方法が不競法上の営業秘密に該当し、かつB社が当該営業秘密を不正に取得して競業行為をしているとして、損害賠償などを請求しました。

裁判所の判断

 裁判所は、以下の理由により営業秘密の秘密管理性を否定し、B社の責任を認めませんでした。

・ A社は、工場の立ち入りを厳重に管理していると主張するが、食品工場における衛生管理のための出入りの管理と何ら変わらない。

・ A社は、従業員が競業他社の関係者が入社しないよう注意し、秘密保持誓約書を徴求していると主張するが、実際に入社時に選別している証拠はなく、入社時の誓約書徴求の事実も認められないから、従業員に対する関係でも秘密管理が十分なされていたとはいえない。

・ B社代表者の見学に先立ち、秘密管理に関する合意は両社間でなされず、A社からその旨の求めもなかった。

・ したがって、A社主張の製造方法は、不競法2条6項の要件にいう秘密管理性が認められないから、同法の「営業秘密」とはいえない。

解説

(1)法的な保護を受ける営業秘密

 現代においては、企業にとって、営業上の秘密やノウハウは競争力や利益の重要な源泉であり、その法的な保護は重要な経営課題です。

 そのため、不正競争防止法は、多くの条文を割いて営業秘密の保護を図っています。

 しかしながら、自社の情報が不競法上の営業秘密としての保護を受けるためには一定の要件が必要であり、単に営業秘密であると主張するだけで法律上保護されるわけではありません。

 法律上の要件で裁判上最も争いとなり、かつ請求者側が敗訴する主な原因となる要件は、「秘密として管理されていること(秘密管理性)」です。

 そのため、モノをいうのは日常の情報管理です。それで、自社の営業秘密がいざというときに保護されるだけの管理がなされているか、専門家に相談しつつチェックと改善の機会を作るとよいかもしれません。

(2)工場見学における自社の秘密保護

 何らかの理由で、他社から自社の工場見学の要望を受けることがあるかもしれません。しかし、工場には自社の営業秘密や技術的ノウハウが関係していますから、営業秘密の保護を考える必要があります。

 この点、「予防は治療に勝る」は真実です。後に裁判などしなくてよいよう、以下のような点を含めた措置は検討する価値があるといえます。

  • 相手会社との秘密保持契約の締結
  • 見学者個人から秘密保護誓約書を徴求する
    見学者を特定し、不適切な人間が紛れ込まないようにする
  • 携帯電話、カメラ、スマホ等の持込を禁止する
  • 利必要な秘匿措置(納入された原材料などの箱にある会社名を隠す、不必要な設備などを隠す)

  • 見学コースの限定
  • 案内者への指示(何を開示し、何を開示しないかなど)
  • 弊所ウェブサイト紹介~不正競争防止法 ポイント解説

    弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
    業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

    例えば本稿のテーマに関連した不正競争防止法については

      https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/fukyouhou/index/

    において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。

    なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイト
    において解説に加えることを希望される項目がありましたら、メー
    ルでご一報くだされば幸いです。



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