2020-06-23 有利誤認表示と打消表示

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今回の事例  有利誤認表示と打消表示

今回は裁判例ではなく、消費者庁の措置命令を取り上げます。

消費者庁令和2年3月24日措置命令

 A社は、クレジットカードも提供する銀行であり、小売業を営む会社の関連会社です。

 A社は、自社のクレジットカードの新規入会のキャンペーンにおいて、 キャンペーン応募者にクレジットカード利用代金の最大20%(1人当たり上限10万円)のキャッシュバックが受けられるという特典を、ウェブサイトや店頭におけるデジタルサイネージなどで宣伝していました。

 その画像は、以下のとおりです(消費者庁公表資料から社名等をマスキングの上引用)

  しかし、このキャッシュバックについては、キャッシュバックが適用されない例外条件がありました。例えば、指定のアプリからログインする必要があることや、キャッシュバックの対象外となる商品やサービスが存在しました。また、1人当たり上限10万円という内容は目立つように表示されていましたが、実際には1回の支払いあたり1万円という上限もありました。

消費者庁の判断

 消費者庁は、以下のとおり判断し、措置命令を発しました。

・ ウェブサイトでは、「入会期間」に「新規入会者」がキャンペーンに応募した上で「利用期間」に商品代金などの決済にクレジットカードを利用した場合、特段の例外条件なく、応募者1人当たりのキャッシュバックの上限金額を合計10万円として、代金の最大20%のキャッシュバックを受けられるかのように表示していた。

・ キャッシュバックを受けることができない例外条件は、ウェブページでは、同一視野に入る箇所ではなく、表示から離れた最下部に表示されていたり、「お申込みはこちら」と記載された、カードの申込みのための44箇所のバナーよりも下部に表示されていた。

・ キャンペーンに関して記載された多数の取引条件の一部として、小さい文字で表示されていた。

・ 表示から離れた箇所に小さく表示された「ご入会特典に関するご注意」とのハイパーリンクをクリックしなければ表示されなかったものもあった

・ 以上のような理由から、こうした例外条件に関する表示は、一般消費者が、上の表示から受ける取引条件に関する認識を打ち消すものではない。

解説

(1)景品表示法の「有利誤認表示」規制

 景表法は、表示や広告について、さまざまな規制を定めています。

 この点、景品表示法(景表法)5条1項2号は、事業者が、自己の供給する商品やサービスの価格等の取引条件について、実際のもの等よりも著しく有利であると一般消費者が誤認する表示を行うことを禁止しています。

 そして景表法に違反する不当な表示がなされているという疑いがある場合、消費者庁は、調査を実施し、その結果として違反行為が認められれば、当該行為を行っている事業者に対し「措置命令」を発します。

 そして、措置命令を受けると、多くの場合即日に、インターネット上で公表されることになります。

(2)打消し表示における留意点

 当然のことながら、自社で販売する商品やサービスについて、価格の安さとか、特典が付くといった、消費者にとって魅力的な取引条件を、目立つように宣伝することは商業上当然のことといえます。

 しかしこうした取引条件に何らかの例外や制約があり、こうした例外や制約が、消費者にとって商品の選択における重要な考慮要素となるものについては、 いわゆる打消し表示を適切に行わないと、消費者を誤認させることになり景表法上違法な表示となってしまいます。

  この点で、公正取引委員会が公表した「 見にくい表示に関する実態調査報告書-打消し表示の在り方を中心に-」は参考になると思われます。 同報告書においては、適切な打ち消し表示を行うために以下の点を注意すべきであると述べています。

・打消し表示の配置箇所
・強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス
・打消し表示の文字の大きさや読みやすさ(行間余白や背景色との対照性)

http://www.yakujihou.com/content/pdf/2-E2.pdf

 先に申し上げた通り、措置命令を受けると、インターネット上で公表されたり報道されたりすることになります。そうなると、顧客を引き寄せようと思って行った行為が大きな逆効果となり、企業としての信用に無視できないダメージが及びます。それで、宣伝広告においては、訴求効果と共にコンプライアンスにも十分に注意することが、重要になると考えます。

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