2015-05-27 協調性に欠けた従業員の解雇

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1 今回の判例 協調性に欠けた従業員の解雇

東京地裁平成26年12月9日判決

 A社は、21年間銀行に勤務していたB氏を中途採用し、雇用契約を締結しました。その後、A社がB氏を解雇したところ、B氏は、解雇の無効を主張して、A社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、賃金等の支払いを求めました。

 

2 裁判所の判断

 裁判所は以下のとおり判断し、解雇を有効と判断しました。

● B氏は、日常的に同僚等に高圧的、攻撃的な態度を取ってトラブルを発生させており、さらに、インターネットのサイトで業務以外のことをし続けていたことから、A社の業務の遂行に支障を来していた。

● A社は、職種限定社員であると主張するB氏を、希望どおり与信審査部に異動させ、他の従業員らとのコミュニケーション及び行状について、何度もB氏との面談を実施して注意を行い、懲戒処分(譴責処分)も行うなど、改善の機会を何度も与えた。しかし、B氏の言動が基本的に変わることがなかったため、A社はB氏を解雇するに至ったから、解雇は社会通念上相当である。

● B氏は、職種や配置転換の可能性を検討せず解雇したのは、解雇回避義務を尽くしていないと主張するが、B氏の言動の原因であるその性向等は容易に変わり得ないものと考えられ、職種や配置転換を検討していなかったとしても、そのことをもって解雇回避義務を尽くしていないとはいえない。

 

3 解説

(1)勤務態度不良・協調性欠如の従業員の解雇

 本件では、勤務態度が悪く、同僚とのトラブルを起こし業務に支障を生じさせていた従業員への普通解雇が有効とされました。ただしここで留意すべきは、勤務態度が悪く、同僚とのトラブルを起こすような従業員は直ちに解雇が許される、と考えるのは早計である、という点です。

 一般的に、勤務態度不良を理由に社員を解雇する場合の解雇の有効性(正確には解雇権の濫用の有無)については、行為の重大性、回数、結果、影響(企業秩序や業務遂行への影響)、改善の余地の有無、他の労働者の取扱いとの均衡、企業の種類・規模、職務内容、解雇回避のための他の手段の可能性、会社側の態度等を総合考慮して、ケース・バイ・ケースに判断されます。

 そして、これらの考慮要素の中で軽視されがちながら裁判実務では意外と重視されているのは、会社が改善のための注意・指導・処分をどの程度行ったか、これによって改善の機会をどの程度与えたかというものです。この場合、1~2回の注意では十分ということは通常は考えにくく、一定の期間にわたり、相当数の注意・指導を行うことや、また、戒告・譴責等の処分を行うことが必要な場合もあります。

 また、このような注意指導の努力を繰り返したり、場合によっては戒告・譴責等の処分をしても改善されなければ、当該社員について「改善の見込みがないこと」の補強事実ともなりうる、という意味でも、こうしたプロセスは、解雇が無効と判断されるリスクを低下させることにつながります。

 つまり、解雇を選択せざるをえないという判断に至るまでのプロセスをきちんと示せることが、重要なポイントの一つとなるわけです。

(2)日常的な立証資料の収集の重要性

 また、実際の訴訟においては、解雇した当該問題社員の問題行動の立証に苦心する場合があります。それで、会社としては、ある社員について将来解雇も考えざるをえない可能性を考えた場合、上長等が本人の問題行動の記録化を始めるとともに、日常行った注意指導と本人の対応を詳細に記録しておくことも重要となってきます。また、注意や指導を与える場合には書面や電子メールといった、証拠に残る方法を取ることも重要と考えられます。

 証拠に残らない口頭での注意指導は、いざ紛争の場面では功を奏さない場合が多い、ということを念頭に、プロセスの記録化に留意する必要があるわけです。

 以上のとおり、問題社員については職場の士気や秩序の低下をおそれ、すぐに解雇を希望する会社は少なくありませんが、特に後日紛争を起こしかねないような社員については、労働法に通じた弁護士のアドバイスも得ながら、慎重なプロセスを踏むことが重要となると考えられます。



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