フランチャイズシステムの法律解説

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 現代のビジネスでは、企業間の提携のあり方のひとつとして、「フランチャイズシステム」は広く普及しています。

 一般に「フランチャイズ」においては、フランチャイザー(本部)が、加盟店(フランチャイジー)に対して、自己のブランドや経営ノウハウを利用し、統一的なイメージ・商品・サービスによって店舗や事業を営む権利を与え、多くの場合、ノウハウの授与、指導援助を与えます。

 これに対し、加盟店(フランチャイジー)は、ロイヤリティ等の対価を支払います。

 以下、フランチャイズシステムについて、フランチャイザーの立場から、留意すべき法律上の点を解説したいと思います。

法律上考慮すべき点1~説明義務・情報提供義務

加盟店募集と説明義務

 多くのケースで、フランチャイザーは、事業拡大のため種々の宣伝や営業行為によって加盟店を募ります。そして、加盟店になる方々は、従来から事業を営む事業者や会社の場合も多いですが、他方、サラリーマンなど事業経験がない方も少なくありません。

 そのため、加盟店の募集に当たり、フランチャイザーとしては、加盟希望者の適正な判断のために適切な情報開示をすることが重要となります。他方、加盟希望者においても、開示された情報を含め、検討しているフランチャイズ・システムの事業内容について自主的に十分な検討を行う必要があります。

中小小売商業振興法と説明義務

中小小売商業振興法の概要

 この点、中小小売商業振興法は、小売商業を対象とした一定のフランチャイズシステムを対象として、フランチャイザーに対して、一定の事項について情報開示・説明義務を定めています(中小小売商業振興法11条[カーソルを載せて条文表示])。

 フランチャイズシステムのすべてに同法が適用されるわけではありませんが、同法が開示を義務付けている重要事項について、フランチャイザー(本部)が、加盟希望者に対する説明事項に含めるかどうかを検討することは重要といえます。

法定開示書面に定めるべき説明事項

 中小小売商業振興法11条は、いわゆる「法定開示書面」を交付して一定事項を説明する義務を課しています。主たるものを挙げれば以下のとおりです。なお、以下はすべてを網羅しているわけではなく、法文を要約している箇所がありますので、全部・正確な内容は法文を参照ください。

本部事業者に関する情報
  • 本部事業者の名称・住所・従業員 の数・役員の役職名及び氏名
  • 本部事業者の資本の額等、主要株主の氏名・名称
  • 本部事業者が他に事業を行っているときはその種類
  • 子会社の名称及び事業の種類
  • 本部事業者の直近三事業年度の貸借対照表・損益計算書
フランチャイズシステムに関する情報
  • 当該フランチャイズ事業の開始時期
  • 直近三事業年度の加盟店舗の数の推移(年度末加盟店数、新規出店数、契約解除店舗数、更新と不更新の店舗数)
  • 直近の五事業年度におけるフランチャイズ契約に関する訴訟の件数
  • 営業時間・営業日及び休業日
フランチャイズ契約に関する情報
  • テリトリー権の有無(加盟店の周辺の地域において、本部や他の加盟店が同一・類似の店舗の営業を行う可能性)
  • 競業制限の有無(契約終了後の他のフランチャイズチェーンへの加盟禁止、類似事業への就業制限等)
  • 秘密保持義の有無(務約期間中・契約終了後、知り得た情報の開示を禁止又は制限する規定の有無)
  • ロイヤルティ等(加盟者から定期的に徴収する金銭についての算定方法、金銭の性質、徴収時期、徴収方法)
  • 加盟店からから定期的に売上金を送金させることがある場合(その時期及び方法)
  • 加盟店に対する金銭の貸付などを行う場合(利率、算定方法、その他の条件)
  • 加盟者に対する特別義務(店舗構造又は内外装について加盟店に特別の義務を課す場合の内容)
  • ペナルティ(契約違反の場合の金銭の支払その他義務の内容)
  • 契約期間、契約の更新・解除に関する事項
フランチャイズ店舗運営に関する情報
  • 加盟に際し徴収する金銭に関する事項(金額、金銭の性質、徴収時期、徴収方法、返還の有無と条件)
  • 加盟店に対する商品の販売条件
  • 経営の指導に関する事項(研修・講習の開催有無、内容、継続的な経営指導の方法等)
  • 使用する商標、商号その他の表示

公取委ガイドラインと説明義務

 フランチャイズシステムに関しては、公正取引委員会が、独占禁止法に違反する行為の未然防止といった観点から、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」を公表しています。

 同ガイドラインによれば、フランチャイザー(本部)は、加盟希望者の適正な判断に資するよう、以下の事項の開示が望ましいとしています。

[1] 加盟後の商品等の供給条件に関する事項(仕入先の推奨制度等)

[2] 加盟者に対する事業活動上の指導の内容、方法、回数、費用負担に関する事項

[3] 加盟に際して徴収する金銭の性質、金額、その返還の有無及び返還の条件

[4] 加盟後、本部の商標、商号等の使用、経営指導等の対価として加盟者が本部に定期的に支払う金銭(「ロイヤルティ」)の額、算定方法、徴収の時期、徴収の方法

[5] 本部と加盟者の間の決済方法の仕組み・条件、本部による加盟者への融資の利率等に関する事項

[6] 事業活動上の損失に対する補償の有無及びその内容並びに経営不振となった場合の本部による経営支援の有無及びその内容

[7] 契約の期間並びに契約の更新、解除及び中途解約の条件・手続に関する事項

[8] 加盟後、加盟者の店舗の周辺の地域に、同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること又は他の加盟者に営業させることができるか否かに関する契約上の条項の有無及びその内容並びにこのような営業が実施される計画の有無及びその内容

説明義務に違反した場合の違法性と法的不利益

生じうる問題の概要

 仮にフランチャイザー(本部)が、加盟店募集に当たり、重要な事項について十分な開示を行わなかったり、又は虚偽若しくは誇大な開示を行った場合、具体的には以下のような問題が生じる可能性があります。

  • 加盟店に対する損害賠償責任の発生
  • 独占禁止法違反(不公正な取引方法の一般指定の第八項(ぎまん的顧客誘引)に該当)
  • 加盟店に対する詐欺の成立
損害賠償責任の発生

 フランチャイザーによる説明義務違反によって、加盟店(フランチャイジー)に損害が生じた場合、フランチャイザー(本部)が損害賠償責任を負うことがあります。

 もっとも、多くの裁判例では、加盟店側の過失相殺を認め、損害額の一部を減額するという判断をしています。

 これは、加盟店(フランチャイジー)も「独立した事業者」であって事業リスクを負担するという考え方と、加盟店側も単に本部の説明を鵜呑みにするのではなく、自ら調査や検討を行うべきという考え方によるものと考えられます。

独占禁止法違反

 フランチャイザーによる説明義務違反によって、独占禁止法違反(不公正な取引方法の一般指定の第八項(ぎまん的顧客誘引)等)に問われる場合、公正取引委員会によって警告又は排除措置命令を受けることがあります。

 また公正取引委員会の排除措置命令を受けると、ウェブサイトなどで広く公開されますので、企業の信用の低下にもつながります。

実務上説明義務が問題となることが多い事項1~損益予想・売上予想

 以下、実務上問題となることの多い事項に関する説明義務に関して解説します。ここでは損益予想・売上予想を取り上げます。

損益予想に関する説明義務の概要

 フランチャイザー(本部)が加盟店希望者に対し、売上や損益予想を開示することは実務上よくあることですし、加盟希望者としても最も知りたい情報の一つであるといえます。

 もっとも、損益や売上の予想に関する情報は、本来その性質上不確定なものです。また、加盟希望者も、独立の事業者として自身で事業リスクを負う必要があります。そのため、フランチャイザーから示された損益予想と実際の損益との間に差異があったからというだけで、直ちにフランチャイザーの説明義務違反が生じるわけではありません。

 とはいえ、フランチャイザーとしては、予測の根拠が不明確である場合、予測の手法自体が明らかに不合理なものであった場合、予測の基礎となった数値が根拠を欠いたものだった場合、市場調査の方法や調査に基づく情報の分析方法が合理性を欠く場合には説明義務違反を問われることになります。

損益予想に関する説明義務を取り上げた裁判例

 売上予測等に関する情報提供義務・説明義務違反が問われた裁判例としては、以下のようなものがあります。

責任肯定例:京都地裁平成3年10月1日判決

 パンの製造販売に関するフランチャイズ・チェーンの事例です。加盟店はパンの売上げが少なくて経営に行き詰まり、閉店に追い込まれました。

 裁判所は、本部が、加入を勧誘するに当たり、客観性、正確性に問題のある市場調査の結果の信頼性を過度に強調し、フランチャイズ契約への加入の可否についての適切な判断を困難にするおそれの強い情報を提供した殿部、損害賠償責任を認めました。

 他方、裁判所は、加盟店に対しても、資金繰りの状況について十分な説明をしなかったとして7割の過失相殺を認めました。

責任肯定例:浦和地裁川越支部平成7年7月20日判決

 乳酸飲料のチェーン店に関するフランチャイズ契約の一種としての「販社契約」を締結していた販社(加盟店)に対して、メーカー(本部)が到底実現することが不可能な予想売上高、予想収益額を示して営業活動を強いた、と判断して責任を認めました。

責任否定例:東京地裁平成元年11月6日判決

 イタリア料理店の営業に関するフランチャイズ契約にかかる争いです。加盟店は営業不振のゆえに閉店しました。

 裁判所は、フランチャイザーが、店舗の立地調査及びこれに基づく売上の予想に関し、信義則上要求される相当の注意義務を尽くしており、契約締結の最終判断は加盟店の責任においてされたから、本部が多少楽観的な説明をしたとしても取引社会の駆け引きとして許容される範囲内のもので保護義務はない、と判断しました。

責任否定例:東京地裁平成3年4月23日判決

 アイスクリーム・チェーンの営業に関するフランチャイズ契約にかかる争いです。加盟店は営業不振のゆえに閉店しました。本部が提示した現地調査報告書には1か月の売上として「4~500万円は狙えると思う」と記載されていましたが、実際の売上は1か月100万円程度でした。

 裁判所は、「この程度を狙えると思う」という調査報告の表現は保証ではなくセールストークに過ぎないと判断しました。

 また裁判では、当該予想が被告による歩行者量の推定と被告独自の係数の組合せによるところ、その正確性、妥当性も争点となりましたが、裁判所は、これは一般的な予測値で個別の場合に適合しないこともあり得るものの、誤りであるとも断定できないこと、また、加盟店側にも売上が伸びない原因があったことから、加盟店の請求を認めませんでした。

法律上考慮すべき点2~指導援助義務

指導援助義務の趣旨

 多くのフランチャイズ契約は、加盟店(フランチャイジー)が、そのフランチャイズ事業に関して、又は事業経営自体についても経験が乏しい場合が少なくありません。

 それで、本部(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)対し、フランチャイズ事業についての運営手法や運営ノウハウを提供することが、契約の重要な要素となることが多いといえます。

 具体的には、マニュアル等を提供して運営手法や運営ノウハウを開示するほか、SV(スーパーバイザー)が都度個別に行う指導や援助、開業時やその後実施する研修によって、運営手法や運営ノウハウが提供されることが実務上多いといえます。

指導援助義務の内容

 経営指導義務の内容を定めるのは、まず第一義的にはフランチャイズ契約(加盟契約)の内容によります。

 もっとも、フランチャイズ契約に指導援助義務の内容が抽象的な定めしかない場合には、フランチャイザーがどの程度の義務を負うのか、またどんな場合に指導援助義務違反が問われるのかは難しい問題です。

指導援助義務に関する裁判例

 援助指導義務に関する情報提供義務・説明義務違反が問われた裁判例としては、以下のようなものがあります。

責任否定例:大阪地裁平成8年2月19日判決

 コンビニエンスストアのフランチャイズに関する訴訟であり、指導援助義務以外に多くの争点がありました。加盟店は、店舗「が長期にわたって損失を重ねたのであるから、本部は、その原因を究明して有効な具体的対応策を提示し、対応策を見い出し難いときは、加盟店に対し早期に閉店を勧告すべきであった。」旨しました。

 裁判所は、指導援助義務違反につき、本部の行った以下のような指導援助を認定しました。

  • 店舗の建設、改造及び改装に関する指導援助
  • 売場構成、商品提供、商品配置、商品陳列、商品管理及び設備機器類に関する指導援助
  • 開店に関する指導援助(広告やオープンセール商品の供給)
  • オープン前研修訓練課程と称する研修を実施
  • 販売促進活動に関する指導援助(テレビ・ラジオなどの広告、店頭幕、ポスターの配布)
  • 経理会計業務に関する指導援助(仕入商品の代金支払代行、毎月の損益計算書や貸借対照表等の作成)
  • SVによる月4回程度の店舗巡回と、商品陳列方法、販売方法及び売上金管理等の改善を要する点を記載したレポートを作成
  • 店舗の販売用商品及び営業用消耗品の仕入先推薦に関する指導援助

 その上で、裁判所は、これらは本部の経済力及びコンビニエンスストア経営に関する専門的知識を背景として可能となるものであるといえる上、特に商品供給については、コンビニエンスストアで販売される多種類の商品を少量ずつ個人で仕入れることは極めて困難であるから、本部の援助なしにはコンビニエンスストアで必要とされる商品の仕入れすらままならないといえるのであって、これらの事実を考慮すれば、本部は本件各契約に基づく指導援助義務を一応履行した、と判断しました。

責任否定例:大阪地裁平成2年11月28日判決

 焼き鳥居酒屋チェーンの加入者が、店舗の業績が上らず廃業したのは、組織の経営ノウハウの欠如等が原因であると主張しました。

 裁判所は、「契約に際し、原・被告間で経営指導の内容についての具体的な話合い及び合意がなされたと認められないから、結局、被告としては、一応の合理的な経営指導をなせば、義務違反の責めを負わない」と述べました。

 その上で、裁判所は、本部担当者がが加盟店の店舗を数回訪れたこと、その際、帳簿に基づいた経営分析までは行っていないものの、加盟店から口頭で経営内容を聞いて、店内の装飾やメニューについての他店の例を紹介し、イベントの行い方や宣伝方法、客の対応の仕方を教え、店の雰囲気が暗いので声を出すようになどと指導した、と認定した上で、「一応の合理的な指導をなしたものと認めて差し支えない」と判断しました。

法律上考慮すべき点3~フランチャイズ契約の終了と違約金

フランチャイズ契約と違約金

 フランチャイズ契約においては、継続的な法律関係が長期にわたり存続することになります。

 しかし、契約が予期せずに終了することがあるのもまた事実です。そのため、加盟店が自己の都合で解約したり、加盟店の契約違反によってやむを得ず契約を解除するという場合、加盟店側が違約金支払義務を負うことがフランチャイズ契約で定められることが実務上は多いといえます。

解約違約金

解約違約金の定めの有効性

 解約違約金とは、フランチャイズ契約の契約期間中に、本部の債務不履行を理由とせず、加盟店側から解約する場合に加盟店が支払義務を負う違約金です。

 裁判例は、解約違約金の定め自体は有効と判断しています。ただし、極端に高額の違約金を定める契約の場合、社会通念に照らして加盟店にあまりに過酷な義務を課すとして無効と判断されることもありえます。

解約違約金に関する裁判例

 解約違約金に関する裁判例の一部をご紹介します。なおこれらはいずれも事例の性質や裁判官の考え方が反映されたものであって、「●か月分以上は無効」「●ヶ月分未満は有効」といった一般的な線引ができるものではないことをご承知おきください。

東京地裁平成26年8月29日判決

 コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンにおいて、10年間を期間とする加盟契約があり、以下のような違約金の定めがありました。裁判所は、この定めを有効と判断し、本部が請求した違約金全額を認めました。

 ・開店後5年未満の解約:ロイヤリティの月額平均の8か月分
 ・開店後5年経過後の解約:ロイヤリティの月額平均の4か月分

東京地裁平成11年5月11日判決

 コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンにおいて、10年契約の中途解約時の損害賠償額の最低額として、ロイヤリティの月額平均の6か月分との定めがありました。

 裁判所は、諸事情に照らして「社会的に相当と認められる範囲を超えて著しく高額なものということはできない」と判断しました。。

大阪地裁昭和61年10月8日判決

 持帰り弁当のフランチャイズチェーンにおいて、加盟店による契約違反を理由に本部が契約解除しました。そして、損害賠償額の特約として60か月分のロイヤリティ支払の定めがありました。

 裁判所は、「高額の損害額の予定額を定めたものと解しうる余地がある」としながら、「被告らが原告に対し、経済的に劣後的な立場にあったとは認められないし、被告らとしても、本契約を締結して原告の連盟店の地位を取得することによって、自己の経済的利益を確保、増大させるとの利害得失を考慮して、損害額の予定についての前記規定の存在も承知したうえで、原告に強制されるというようなこともなく、任意、自主的な判断によって本契約の締結に至った」と述べ、60ヵ月分の違約金の定めを有効と判断しました。

契約違反時の違約金

契約違反時の違約金

 フランチャイズ契約においては、解約時の違約金のほか、加盟店が重大な契約違反をした場合に、一定の額の違約金が定められることが少なくありません。この違約金の定め自体は有効と考えられています。しかし、極端に高額の違約金を定める契約の場合、社会通念に照らして加盟店にあまりに過酷な義務を課すとして無効と判断されることもありえます。

契約違反に対する違約金に関する裁判例

 解約違約金に関する裁判例の一部をご紹介します。なおこれらはいずれも事例の性質や裁判官の考え方が反映されたものであって、「●か月分以上は無効」「●ヶ月分未満は有効」といった一般的な線引ができるものではないことをご承知おきください。

横浜地裁平成29年5月31日判決

 中古品買取についてのフランチャイズ契約において、契約終了後の競業が禁止されていました。フランチャイズ契約では、加盟店による契約終了後の競業行為に対する違約金は、ロイヤリティ等の36か月分でした。

 裁判所は、フランチャイズ契約終了後の競業禁止の規定自体は有効としました。他方、違約金については、36か月分の違約金は高額に過ぎ無効であり、6か月分の違約金の支払いの範囲で違約金を認めました。

浦和地裁平成6年4月28日判決

 クリーニング店のフランチャイズ契約において、フランチャイズ契約解約に伴うサービスマーク・看板等撤去義務違反に対する違約金条項として、一工場あたり800万円と定められていました。

 裁判所は、年間ロイヤリティ額が36万5000円程度になることと比較して、著しく均衡を失していると判断し、妥当な違約金を30万円(約10ヵ月分)としました。

東京地裁平成6年1月12日判決

 フランチャイズ契約において、コンビニエンスストアのフランチャイジーが競業他者の経営に関与することなどを禁止する旨の約定がありました。そしてその違反に対してロイヤリティの120ヵ月分の金額が損害賠償額として定められていました。

 裁判所は、一切の事情を総合して考慮すると、適正な賠償予定額は、30か月のロイヤリティ相当額とし、その余の部分は無効と判断しました。

神戸地裁平成4年7月20日判決

 持ち帰り弁当等のフランチャイズ契約において、フランチャイジーが実施料を滞納し、本部の指定する販売価格や原材料を遵守しなかったため、本部が契約を解除しました。その後も加盟店が競業禁止の約定に反し、解除後も従前の営業場所で持ち帰り弁当等の販売を継続していたため、本部は、契約に基づき60か月分の賠償を求めました。

 裁判所は、一切の事情を総合して考慮すると、適正な賠償予定額は、30か月分の範囲にとどまると判断しました。

法律上考慮すべき点4~競業避止義務等

 フランチャイズ契約においては、加盟店(フランチャイジー)に対し、契約期間中のほか、契約終了後、本部の事業と競業する事業を制限する規定は珍しくありません。

 契約終了後に競業を制限するような規定は果たして有効なのでしょうか。

契約期間後の競業制限の規定の有効性

 契約期間中のみならず、契約期間後であっても一定期間の競業制限については、一般に有効と解されています。

 フランチャイズ契約においては、本部(フランチャイザー)は、加盟店(フランチャイジー)に対し、種々の営業ノウハウや、加盟しないと得られない情報を提供します。そのため、加盟店(フランチャイジー)がこうしたノウハウを流用して競業することは、本部(フランチャイザー)に対してだけでなく、フランチャイズシステム全体の利益を損ねるものになりかねません。こうした趣旨を踏まえて裁判所は、競業制限の規定を一般に有効と考えています。

契約期間後の競業制限が有効となる条件

 とはいえ、どんな内容であっても、契約期間後の競業制限の規定が認められるわけではありません。それは、過度な制約が、フランチャイジーの職業選択の自由や営業の自由を不当に制約することになるからです。

 そのため、一般に、契約期間後の競業制限の規定を有効にする要素としては、(a)期間の限定、(b)場所的限定、(c)競業行為が特定されていること、(d)違約金がある場合その内容、が挙げられます。

期間の限定

 契約終了後無期限に競業を制限する規定は無効であると考えられています。

 それで、実務上は、契約終了後の競業禁止期間は、1~3年程度とすることが多いといえます。

場所的限定

 場所についての一定の限定が必要です。その範囲を一概に定めることは困難であり、フランチャイズの業態や商圏によって異なるものと考えられます。

契約終了後の競業制限に関する裁判例

 以下、契約終了後の競業制限について判断した裁判例をご紹介します。

肯定例:大阪地裁平成22年1月25日判決

 弁当宅配業のフランチャイズに関する紛争であり、フランチャイズ契約には、以下のような競業制限の規定がありました。

  • 契約終了後3年間
  • 対象地域を愛知県岡崎市内に限定
  • 対象となる営業を本部と同種のもの(弁当販売業,弁当製造業及び弁当宅配業)に限定

 以上の制限について、裁判所は、「本件の競業避止義務規定は,原告のフランチャイズシステムの顧客・商圏を保全するとともに,原告の高齢者向け弁当宅配業のノウハウ等の営業秘密を保持するという重要かつ合理的な趣旨目的を有す」と述べ、制限を有効と判断しました。

肯定例:東京地裁平成21年11月18日判決

 労働者派遣事業のフランチャイズに関する紛争であり、フランチャイズ契約には、以下のような競業制限の規定がありました。

  • 契約終了後2年間
  • 契約に基づく教室所在地と同一の都道府県内
  • 学習塾、その他本部と類似の業種の経営をすること
  • 経営主体は、加盟店、その親族、従業員、知人等

 以上の制限について、裁判所は、「競業禁止の経営主体,禁止期間及び対象地域について限定しているから,相応の合理性があり,営業の自由に対する過度の制限ということはできない」と述べました。

否定例:東京地裁平成21年3月9日判決

 学習塾のフランチャイズに関する紛争であり、フランチャイズ契約には、契約終了後2年間、以下のような競業制限の規定がありました。

  • 本部の事業と同種又は類似の事業を営むこと
  • 本部の同業他社の事業に参加、就業、又は契約を締結すること
  • 契約終了時に、加盟店は自己の営業を本部又は新しい加盟店に承継させる

 裁判所は、競業避止規定には地域的な限定が付されていないこと、禁止される行為は、ブランドイメージを侵害しない態様をも含めて、原告と同種又は類似の事業全部にわたるものであることなどから、営業引継ぎ規定とが相俟って、加盟店には廃業以外の選択肢がないこととなり、営業の自由及び職業選択の自由が全面的に制限されることなどを理由に、競業制限規定を無効と判断しました。

 


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