2015-07-21 商標の類否~称呼の同一性と非類似の可能性

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1 今回の判例  商標の類否~称呼の同一性と非類似の可能性

知財高裁平成27年6月11日判決

 A社は、指定商品を、タオル、ハンカチ、被服、靴類、おもちゃ等とする「RUNE」という商標の登録商標権を保有しています。

 これに対し、B社が、前記商標権(指定商品のうちタオル、ハンカチ、被服、靴等について)に対して無効審判を請求しました。その理由は、前記商標が、B社が持つ「Rene」(指定商品 布製身の回り品、被服、靴等)という商標と類似している、ということでした。

 なお、本稿で紹介したB社の商標は、最後の「e」は正確ではありません(上にフランス語のアクサン記号がある)。正確な商標は、以下のとおりです。

 
rene商標

 そして、特許庁は当該無効審判請求が成り立たないと判断したため、B社は、当該審決取消を求め訴訟を提起しました。

2 裁判所の判断

 裁判所は、以下のとおり判断し、審決を維持しました。

● 商標法4条1項11号に係る商標の類否は、外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、具体的な取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきである。

● 「RUNE」と「Rene」とは、いずれも「ルネ」の称呼を生じる場合がある点では共通であるが、観念において類似するとは認められない。

● 外観については、「RUNE」の末尾3文字が全て大文字で表記されているのに対し、「Rene」の末尾3文字は 全て小文字で表記され、かつ、末尾の「e」の上にはアクセント記号が付されている点で相違しており、これらは外観上明確に相違する。

● 「RUNE」と「Rene」とで共通する指定商品である「布製身の回り品」「被服」「履物」の取引においては、需要者は、商品の外観を見て購入するのが通常であり、商品、値札、カタログ、商品情報等に付された商標の外観や製造販売元を見て購入することが多いと考えられ、商標の称呼のみをもって商品の出所を識別して商品を購入するとは考えにくい。このような取引の実情を踏まえると、需要者が商品の出所を誤認混同するおそれがあるとはいえない。

● したがって、「RUNE」と「Rene」と類似する商標であるとは認められない。

3 解説

(1) 商標登録拒絶事由の一つ~他の登録商標と類似の商標

 商標はどんなものでも登録されるわけではありません。この点、商標法3条と4条では、登録を受けることができない商標について述べられていますが、そのうち実務上問題になることが多いものに、商標法4条1項11号があります。

 同号では、ある商標を登録しようとして出願しても、同一又は類似の商品やサービスに関して、同じ又は類似の商標が先に出願され登録されていると、自分の商標は登録されない、と定められています。

 では、どんな基準で、ある商標と別の商標が類似であると判断されるのでしょうか。

(2) 商標の類似の3大判断要素

 一般に商標の類否の判断は、以下の三要素の比較を基本としつつ、その具体的な取引状況に照らし、取引者及び需要者に与える印象、記憶、連想等から、両者の商標の間に混同のおそれがあるかどうかで決せられます。

(a)外観(商標の見た目)
(b)称呼(商標から導かれる発音)
(c)観念(商標から想起される観念)

 この点例えば、判例に現れた例の一部を挙げますと、以下のようなものがあります。括
弧内は、判断の結論です。

(類似)『PRO-LEX』=『ROLEX』
(類似)『大森林』=『木林森』
(類似)『リスコートエイ』=『ビスコート』
(非類似)『ココ』×『CoCo(図形)』 これは、外観が著しく相違していたため、非類似と判断されました。
(非類似) 『DANDYL』×『dunhill』

 今回の件については、裁判所は、「RUNE」と「Rene」の両商標は、称呼は同一であるが、観念と外観は類似しないとし、さらに、需要者(ここでは消費者)が、商品の外観を見て購入するのが通常であって称呼だけで商品の出所を識別して商品を購入するとは考えにくいなどといった、取引の実情を考慮して、非類似と判断しました。

(3) ビジネス上の留意点

 自社で商標を選択する場合、当然ながら、前に申し上げた商標の類否の三要素に沿って、先行商標との間で、外観・称呼・観念のいずれもが類似しない商標を選択することがベストです。というのは、これらのいずれか(特に称呼)が類似する商標は、出願時に拒絶されるおそれが一定程度否定できないからです。

 もっとも、様々な事情から、外観や称呼において他社の登録商標に類似している商標を使わざるを得ない、というケースもあるかと思います。

 この場合に、これらの商標の登録可能性や侵害可能性を見極めるのは必ずしも容易ではなく、リスクは否定できません。それでこの場合、弁理士や弁護士等の専門家に相談することは必要なことと思います。

 そうすると、まずは登録可能性や侵害の可能性についてリスクを測ることができますし、さらに可能なら、希望する商標のコアを残しつつも登録可能性や侵害可能性を低減させる方策についてのアイディアも得られるかもしれません。

 また、本件のように、実際の争訟の場面では、取引の実情ができる限り考慮されますから、いかに取引の実情をうまく主張立証できるか、という点も重要なポイントとなってきます。この点で、社内での日頃の情報管理・蓄積の努力や、必要に応じた資料収集・情報収集が首尾よく行えるような体制の整備が重要となってくるといえるかもしれません。



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