2012-08-07 日本・中国間の紛争と仲裁判断

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1 今回の判例 日本・中国間の紛争と仲裁判断

大阪地裁 平成23年3月25日決定

日本の株式会社Y社と中国の企業法人X社は、単結晶シリコン棒の売買契約(以下、「本件契約」といいます)を締結しました。

X社とY社は、契約時に、本件契約から生じる紛争について、中国国際経済貿易仲裁委員会の仲裁によって解決する旨を合意していました。

その後、本件契約の履行について紛争が生じたため、X社は、中国国際経済貿易仲裁委員会に仲裁を申し立てました。仲裁委員会は、Yが代金・金利・為替損金・弁護士費用を支払うべきこととする仲裁判断(以下、「本件仲裁判断」といいます)をしました。

そこで、X社は、本件仲裁判断を執行するため、本件仲裁判断の執行決定を求めて日本の大阪地裁に裁判を提起しました。

本件では主に、中国における仲裁判断に基づいて日本国内での民事執行が可能であるかどうかが争われました。

 

2  裁判所の判断

裁判所は、以下のように判断し、中国の企業法人X社の請求を認めました。

  • 日本と中国は、多国間条約である「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(いわゆるニューヨーク条約)の締約国になっており、かつ二国間条約である「日中貿易協定」を締結している。
  • ニューヨーク条約の締約国が他の条約を締結している場合には、ニューヨーク条約よりも当該他の条約が適用され、本件仲裁判断の執行については日中貿易協定が適用される。
  • 同協定の規定により、本件仲裁判断の執行決定の要件は日本の仲裁法の規定に基づいて判断すベきところ、Y社は、仲裁法に定める申立を却下すべき事由を立証していないから、本件仲裁判断に基づく強制執行を許可する。

 

3 解説

(1)仲裁及び管轄合意とは

国際取引契約では、紛争が生じた場合の解決方法として、管轄裁判所を合意するケースや、本件のように、仲裁合意をしておくケースもよく見られます。

この点、裁判管轄の合意か仲裁合意のいずれかを選択するかにあたっての最も重要な要素の一つは、その判決・判断が、相手方の国内において強制執行が可能か否か、です。

例えば、自社が、A国に本社を置く取引相手の会社B社に対し、日本で訴訟を起こして勝訴したとします。しかし、B社が任意に支払をせず、かつ、B社がA国内にしか執行できる財産を有していない場合には、自社がB社から回収するためには、A国内で当該勝訴判決に基づく強制執行をする必要があります。ところが、日本国内の判決が当然に外国において強制執行できるとは限らず、しかもこの点は、相手国がどこの国かによって異なるのです。

(2)実務上の留意点

しかし、実際には、二次的著作物の利用方法に関して両者(二次的著作物の著作権者と原著作物の著作権者)の意見の食い違いが生じ、紛争に発展することがあります。

本件でも、原著作権者の意思を考慮せずに映画化がなされてしまったという経緯に加え、著作物利用契約にあった「一般的な社会慣行ならびに商慣習等に反する許諾拒否は行わない」といった曖昧な文言が一因となりました。

以上を考えると、自社において二次的著作物を利用する場合、紛争が生じるリスクを最小限にするためには、あらかじめ、十分な協議を行い、必要な事項に関し、契約で規定することが考えられます。本件において「一般的な社会的慣行」や「商慣習」といった曖昧な規定が置かれたのにはそれなりの経緯や理由があったものと思われますが、大きなリスクを残すこのような方法が好ましいといえないのは事実です。

(2)日本の裁判所の判決を中国の裁判所で執行できるか

では、日本企業にとっての最大の取引相手国である中国についてはいかがでしょうか。まず、中国における人民法院の判断を日本で執行することができるのかを簡単に見てみます。

この点、中国の民事訴訟法は、外国裁判所の判決を中国の裁判所が承認及び執行できる要件を定めているところ(中国民事訴訟法268条)、大連市中級人民法院は、1994年11月5日、日本と中国が相当の互恵関係を築いていないとし、中国の人民法院は日本の裁判所の判決を承認・執行できないと判断しました。また、1995年6月26日、中国最高人民法院も、「人民法院は、日本の裁判所の判決を承認、執行しない」との見解を明らかにしています。

したがって、日本の判決に基づき中国国内で強制執行することは、現状では難しいと考えられます。

(3)中国の裁判所の判決を日本で執行できるか

次に、日本の裁判所の判決を中国で執行することが可能かについて見ることにします。

この点大阪高裁は、前述した中国最高人民法院の回答等を引用して民事訴訟法118条4号に定める「相互の保証があること」の要件を満たず、中国の人民法院の判決は日本において効力を有しないと判断しました(大阪高裁平成15年4月9日判決)。

(4)実務上の対応

以上のように、日本と中国が相互の承認がないため、日本で判決を得ても中国では執行できず、中国で判決を得ても日本では執行できないと考えられます。

他方今回の裁判例にも示されているとおり、日本・中国が加盟国となっているニューヨーク条約や日中間の日中貿易協定に基づき、中国の仲裁機関による仲裁判断は日本国内で執行することは可能であり、逆もできると考えられます。

このような点に鑑みれば、実務上、日中間の取引に関する契約については、相手方の中国企業が日本国内にめぼしい財産があるとか、日本国内に大きな取引があるといった事情がない限り、裁判管轄の合意ではなく仲裁合意を基本に考えることは、リスクを相対的に低減させるものとして有益ではないかと考えられます。

 

参考ページ:国際取引法務解説 http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kokusai/index/


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