2012-11-20 インターネットモール運営者と商標権侵害

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

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1 今回の判例 インターネットモール運営者と商標権侵害

知財高裁 平成24年2月14日判決

インターネットショッピングモール「楽天市場」を運営するY社のモール内の出店者A社は、X社に無断で「Chupa Ch
ups」(チュッパチャップス)の商標を付した商品を展示・販売していました。

 X社は、モール運営者であるY社に対し、上記行為は、商標権の侵害又は周知・著名なX社の商品表示を利用した不正競争行為に該当すると主張し、上記行為の差止めと、損害賠償の支払いを求めました。

 ここで、商標権等の侵害があった場合、出店者であるA社が法的責任を負うことは当然ですが、本件では、運営者であるY社も法的責任を負うかどうかが問題となりました。

 

2  裁判所の判断

裁判所は、Y社が商標権侵害の事実を知ってから合理的期間内に適切に対処したことを理由にX社の請求を認めませんでしたが、以下の場合には出店者だけでなく運営者も法的責任を負うと判示しました。

  • 運営者が運営システムの管理・支配(出店許可、出店停止等)を行っている
  • 運営者が利益(基本出店料等)を受けている
  • 出店者による侵害の事実を知っている、または知ることができると認めることができる
  • 侵害の事実を知ったときから合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除等をしない
  •  

    3 解説

    (1)インターネットで「場」を提供する事業者に関する問題点

    今回の判決は、ネット通販での商標権侵害に関し、出店者のみならず、直接の侵害の主体ではないモールの運営者も、一定期間に適切に対応しない場合には責任を負う場合があることを明確に認めたものです。

     なお同様の法理は、インターネットの掲示板を提供する事業者が、掲示板中の違法な書込を一定期間放置した場合に生じる責任と共通のものといえます。

     つまり、ネットショップにせよ、掲示板にせよ、インターネットにおいて、他者に「場」を提供する運営者には、その「場」において他者の権利侵害行為がされるような場合、適時・適切に対応・管理する責任があるという点を認識する必要があるといえます。

    (2)第三者から侵害の警告・指摘を受けた場合の実務上の対応

     そこで、第三者から権利侵害の指摘や警告を受けた場合に備え、運営者がいかに対応すべきかについて簡単に検討したいと思います。

     ア)事前の規約等の整備

     まずは、自社のリスク軽減及び迅速な対応を取ることができる根拠付けを整備するため、利用規約や契約書等において、以下の事項を含めた規約等をあらかじめ整備し、利用者から同意を得ておくことができます。

     以下はショッピングモールの例です。

    • 運営者から請求を受けた場合、出店者には自社商品・自社サイトの商標権侵害調査を行う義務があること
    • 運営者自ら出店者の商標権侵害調査を行う権限を有すること
    • 運営者が、自己の裁量と判断で、出店者のページや商品の削除を請求し、又は自ら削除し、表示を一時停止する権限を有すること
    • 運営者がやむなく賠償した場合、運営者は出店者に対して求償権を有すること

     イ)実際の警告・指摘があった場合の対応

     例えば今回の判例のように、商標権侵害の指摘を受けた場合、モールや掲示板等の運営者は、「合理的期間内」に、つまり迅速に対応することが必要となります。

      対応方法としては、出店者に対し速やかに侵害の有無について調査・意見を要請し、必要に応じ自ら調査することも必要となる場合があります。そして、侵害の事実が明らかな場合には自ら削除したり、あるいは疑いが濃い場合には、疑義が解消されるまで表示を一時停止するといった措置も必要となるかもしれません。

      以上の侵害の判断においては、法的に難しい判断が求められる場合があります。この場合、自社から迅速に弁護士や弁理士の法的な意見を求め、法的根拠のある対応ができる体制を作っておくことも有益な策といえます。

     

    参考ページ:商標法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/


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